生成AIを使った短歌コンテストで社内活用を促進 ライフネット生命の取り組み

様々な領域で活用が進む「生成AI」を、広報ではどのように活用できるのか。また、AI時代の広報に必要なスキルセットとは。社内での生成AIの活用について、導入に携わった担当者や広報パーソンに考えを聞く。

ライフネット生命保険は、2023年に全社の生成AI活用を推進するプロジェクトチームを発足。2024年7月には社内用生成AI(社内用LLM)を自社で開発した。

同社の調査によると、社内用生成AIは導入から2カ月で利用者の業務時間を計152時間削減。導入半年後の2025年1月末までに正社員の87%が利用している。

社内用生成AIの開発に携わり、現在も社内での活用推進を担っているデータサイエンス推進室の橋詰青弥氏は、導入当時の考えについて次のように話す。

「当社は社員数が多くはないので、生成AIを活用して一人ひとりの生産性を上げていかなければ、企業として停滞してしまうのではないかという危機感がありました。加えて、保険は専門用語が多く一般の方に伝わりにくいという課題や、表現においても多くの社内規定があり、確認などに時間がかかる課題がありました。お客さまに正しくご理解いただき、かつ社員の業務効率化を図る上で、生成AIは保険業界と相性がよいと考えていました」(橋詰氏)。

新しいシステムや新技術の導入時には、デジタルへの苦手意識などから「どう使えばよいのか分からない」といった声が上がることも多い。橋詰氏は、全社での活用促進にはまず社員が生成AIに慣れることが重要と考えた。そこで2024年11月のオフィス移転にあわせ、「旧オフィスの思い出」をテーマに生成AIを用いて短歌をつくる「AI歌人チャレンジ」企画を実施した。

「最初から仕事で使うとなると、『上手く使わなくては』『業務に役立てなくては』という意識が生まれ、使用のハードルが上がると思いました。なので、まずは “遊び” のような感覚で生成AIに触れてもらうことにしました」と橋詰氏。その後は、業務で使用する際のポイントを部門ごとに説明するなど、段階的にサポートしている。

写真 「AI歌人チャレンジ」のSNS投稿

写真 表彰

「AI歌人チャレンジ」では、社内SNSで作品を募り、いいね数の多かった作品(画像下)を表彰した。

社外からの問い合わせ対応にも生成AIは有効

同社で広報業務を担うブランドマネジメント部の園田皓太氏は、①記者のリサーチ、②企画案の洗い出し、③文書の要約、④想定Q&Aの洗い出しなど、様々な業務で生成AIを活用していると話す。

「例えば③④では、当社のリリース内容や外部パートナーなどが発表した情報について、問い合わせを受けるのは広報です。発表文書には数十ページにわたる長文のものや、専門的な内容が多いものもあるため、生成AIに要約してもらうことで内容を理解し、問い合わせがありそうな内容についてQ&Aを洗い出してもらうことなどでも、時間の短縮につながっています」(園田氏)。

今後も生成AIを用いて業務効率化を進めていくと話す園田氏だが、生成された回答の正否チェックはもちろん、現在の課題に対して適切かを判断する力はこれまで以上に重要になる。従来時間がかかっていた情報収集などの作業を生成AIに任せつつ、判断力を磨いていきたいと語った。

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