SNS炎上は企業のブランド価値を著しく損ない、売り上げや株価、採用活動にも長期的な悪影響を与える深刻なリスクである。炎上の原因は大きく2つに分けられる。
1つ目は企業発信型で、誤爆投稿や広告・キャンペーンでの不適切表現、生成AIの権利侵害、起用タレントや従業員の不適切行動などが含まれる。
2つ目は外部要因型で、顧客クレームや社会問題、デマ拡散など企業が意図せず巻き込まれるケースである。
近年は転職市場の拡大で社員の帰属意識が低下し、内部告発や不満がSNSで発信されやすくなっている。さらに、山口ひな子氏は「ネガティブ情報はポジティブ情報の11倍拡散されやすい」とのデータを示し、炎上が急速に広がる点も大きな脅威だとした。
広報が全社の炎上を管理する
ひとたび炎上すれば顧客からのイメージダウンだけではなく、売り上げ低下や株価への悪影響などダメージは大きい。加えて、特に外部要因の炎上は企業が完全に予防することは難しいだろう。
山口氏は押さえておくべきポイントとして、3つを提示。まずは「リスクのトレンドを知る」こと。ターゲット以外の視点からも発信内容を検証し、ネガティブな受け止め方がないかを確認することで、最新のリスク傾向を把握できる。次に「ノウハウを蓄積」すること。炎上発生時には初動対応が信頼回復の鍵となるため、他社事例も参考にしながらエスカレーションフローを整備。迅速に動ける体制を整える必要がある。そして発信後は「客観的に把握」することが不可欠で、SNS上で自社商品やブランドがどう評価されているかをモニタリングし、改善につなげることが求められる。
これらを実現するには、SNSデータを常時収集・分析できる体制を構築することが効果的だ。外部要因による炎上は完全に防ぐことが難しいからこそ、日々の投稿や反応をモニタリングすることで、炎上の兆しをいち早く検知でき、初動対応のスピードを高められる。「いかなる要因が関係するインシデントでも、エスカレーションフローの整備と情報収集体制の強化をしておくことが重要です。また、インシデント発生時の対応にかかるコストを共有しておくことで、社内での各部門のリスク防止への意識向上を啓発できます」と山口氏。SNSで入手した情報を活用して、広報部門は「炎上を起こさないようにする立場」から「全社の炎上を管理する立場」に変化することが求められていると強調した。
図 SNS空間のリスクとデータ活用
多数のデジタルリスクがある現代において、広報担当者は攻めと守りの両面を担う必要があり、平時からの準備が欠かせない。炎上は48時間以内に急拡大するといわれており、日常的なデータ活用と全社的な連携により、企業ブランドを守る強固な体制を構築することが求められる。データを駆使した“守りの広報”こそが、企業の信頼とブランド価値を未来へとつなぐ鍵となるだろう。

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