ミツエーリンクスが説く、サイトリニューアルに不可欠な現代版「アクセシビリティ」とは

デバイス環境の多様化とユーザー行動の複雑化が進み、企業サイトには「誰もが使える」体験設計が強く求められている昨今。アクセシビリティはもはや法令遵守に留まらず、成果と競争力を左右する基盤として再注目されている。

11月5日に宣伝会議本社で開催された「サイトリニューアル・カンファレンス」で、ミツエーリンクスの木達一仁氏が「サイトリニューアルに不可欠なアクセシビリティの視点」をテーマに講演。誰もが利用しやすいWebサイト構築の重要性について解説した。

誰もが使えて誰にも使いやすいことが重要

木達氏はまず、アクセシビリティは単なる「障害者対応」や「高齢者向け」という認識にとどまらないと強調した。現代では、デスクトップPC、スマートフォン、タブレットに加え、スマートスピーカーのような音声デバイスまで、多様なデバイスでWebサイトが利用されている。また、ユーザー側も、障害を持つ人々が支援技術(スクリーンリーダーなど)を活用してWebを利用するなど、多様化が進んでいる。

ミツエーリンクス エグゼクティブ・フェロー 木達一仁 氏

このような「デバイスの多様化」と「ユーザーの多様化」の掛け合わせにより、様々な利用状況が生まれている。木達氏は、「アクセシビリティの良し悪しは、Webサイトの成果、すなわちコンバージョンを大きく左右しうる」と指摘。パーチェスファネルの概念を引き合いに出し、アクセシビリティの高いサイトは入り口の間口を広げ、結果としてより多くの成果につながりやすいと説明した。

さらに、近年のAI技術の発展に触れ、アクセシビリティの向上は、AIがコンテンツを正しく理解し、処理する能力(機械可読性)を高めることにもつながると述べた。これは、SEO(検索エンジン最適化)や、LLMO(大規模言語モデル最適化)といった、機械的な処理に対する最適化にも貢献する。

木達氏はこのタームの締めくくりとして、アクセシビリティに取り組む理由を以下の4点に改めて整理した。

1.利用状況の多様化への対応とコンバージョンの最大化
2.検索エンジン最適化(SEO)や大規模言語モデル最適化(LLMO)
3.国内外のアクセシビリティ法制化動向への対応(訴訟の回避含む)
4.ブランディングへの貢献

障害者差別解消法とWebアクセシビリティ

続いて障害者差別解消法について、法律の専門家ではないことを断りつつも、Webアクセシビリティの観点から解説した。Web担当者の視点からすると、この法律の3つの要点は、それぞれ以下のように解釈できる。

1.差別の禁止:正当な理由なく、Webサイトにおいて障害を理由とした差別をしてはならない
2.合理的配慮の提供:障害者からWebサイトの使いにくさに関し何らかの対応を求められた場合、過度な負担にならない範囲で対応すること
3.環境の整備:障害者からの求めに都度応える必要がないよう、Webサイト自体を誰もが使えるように改善すること

特に改正法により、これまで努力義務であった「合理的配慮の提供」が、一般企業においても法的義務となった点を強調した。Webサイトが利用できない場合、電話やメールなど、Web以外の手段によるサポートが合理的配慮に該当しうるとした。

一方で、「環境の整備」は引き続き努力義務であるものの、問い合わせそのものを減らすためにも、日頃からのアクセシビリティへの取り組みが重要だと述べた。また、合理的配慮の提供には「建設的対話」が求められることから、問い合わせフォームのアクセシビリティ確保や、連絡先情報の明示など、障害者と対話が開始できることの重要性を説いた。

現実的な目標設定と組織への浸透が鍵

木達氏は3点目として、現実的な品質目標を設定し、それを組織の上位概念と紐付けることの重要性を説いた。「目標が高すぎると、組織文化として根付くより前に、取り組みが形骸化してしまうリスクがある」と木達氏は警鐘を鳴らす。

「画像の代替テキスト」のような、ごく初歩的な対応から始めることを推奨し、徐々に範囲を広げていくアプローチを提唱した。そして、アクセシビリティは一部の担当者だけが取り組むものではなく、コンテンツの企画・制作・公開に携わる全員が、それぞれの立場で取り組むべき課題であると強調した。

また、アクセシビリティは、セキュリティと同様に、Webサイトを運用し続ける限り不可欠な品質であると述べ、経営理念やパーパス、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)といった組織の上位概念と紐付けることで、継続的な取り組みと予算・体制の確保が可能になると指摘した。

リニューアル後の継続的な体制構築が不可欠

最後にリニューアル後の体制構築の重要性について言及した。アクセシビリティの取り組みにおいては、PDCAサイクルを継続して回すことが不可欠であり、リニューアル直後だけ品質が高くても意味がないと断言する。

体制構築には、「プロセス」の定義と並行して、現場の担当者が主体的に取り組む「カルチャー」の醸成も重要だと説く。また、部門間や社内/社外の垣根を越え、制作パートナーとも連携し、組織全体で協力し合える体制を築くこと、そして経営学者のチェスター・バーナード氏がかつて提唱した組織の3要素(共通の目的、コミュニケーション、貢献意欲)を意識した取り組みが、アクセシビリティの浸透につながると述べた。

木達氏は、「Accessibility is a journey, not a destination.(アクセシビリティはジャーニー〔旅〕であり、目的地ではない)」という言葉を引用し、Webサイトを運用し続ける限り、アクセシビリティへの取り組みは終わることがないと強調した。サイトリニューアルは、これまでの取り組みを仕切り直し、持続可能性を念頭に、目標設定や体制、予算を検討する絶好の機会であると締めくくった。

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