機能や価格以外の価値で差別化できなければ、価格競争のパワーゲームに巻き込まれかねません。だからこそ、他社商品との差別化要素を軸に「選ばれる理由」をつくることが、長期的に市場で優位性を保つブランド力の根幹となります。生活者インサイトからヘアケアカテゴリーに新しい価値軸を提示するクラシエと、既存資産を再解釈し購買体験を再設計する日清食品。成熟市場でブランド価値をどう拡張するか、両社の実践からその方法論を探ります。
※本記事は、9月19日に宣伝会議セミナールームで開催した「ブランドマネージャー・カンファレンス」のレポートです。
競合激しいヘアケア市場 トップブランドでもシェア7%
━━ヘアケアや食品は、非常にコモディティ化が進んでいるカテゴリーです。この厳しい環境下でのブランド戦略においては、どんな点が課題となっているのでしょうか。
井上
:ヘアケア市場は参入障壁が非常に低く、新商品が次々と棚に並ぶ世界です。そのため、売上1位の商品でもシェアは7%ほど、5%もあればトップクラスのブランドと呼べる状況です。
とはいえ、「シェア5%を獲ることができれば、トップと言えるのだから、うちの商品も100人中、5人のお客さまに支持されればいい」とは、なかなか言いづらいですよね。どこの会社も同じだと思いますが、どうしても95%も狙いにいってしまう。一方で、まずはこの5%をしっかり獲れないと市場で勝つことはできない。常にそんなジレンマを感じています。
中村
:「どん兵衛」をはじめとするカップ麺市場の場合は逆に、トップブランド勢が9割以上のシェアを占める寡占市場になっています。
では、どうやって売上を高める余地を見つけ出すのか。その着想のヒントを得るために使っていたのが「OBPPC」のフレームワークです。「Occasion(機会)」、「Brand(ブランド)」、「Package(パッケージ)」、「Price(価格)」、「Channel(販売チャネル)」の5つの要素を切り口にして、商品の本質は変えずに提供の仕方で価値を生み出すという方法です。