製品提供から講習まで一貫支援
今年はクマによる被害が相次ぎ、大きな社会問題となっている。環境省によれば、2023年度のクマによる人身被害は198件(219人負傷、うち6人死亡)で過去最多となった。2024年度は85人(3人死亡)とやや減少したものの、2025年度は9月末時点で108人(9人死亡)に達し、高水準で推移している。住宅地での襲撃も増加しており、住民の不安は一段と高まっている。
一方で、ハンターの高齢化や人員不足、自衛隊・警察の業務負荷などを背景に、従来の体制だけでは現場の安全確保に限界が見られる。こうした課題をドローンで解決しようとしたのがTerra Drone(テラドローン)社 だ。同社はクマよけスプレーを搭載したドローンの販売を11月7日に開始した。自治体向けに展開しており、すでに多くの問い合わせや相談が寄せられている。
クマよけスプレー搭載ドローン。飛行時間は約10分、サイズは390×390×390(ミリ)
クマ対策において課題となっているのは、夜間や藪地での視認性低下と現場要員の安全確保だ。ドローンで上空から状況を把握し、操縦者が安全な距離を保ったまま「クマよけスプレー」を背後・側面から全方位に噴射できる。
クマよけスプレーには、トウガラシ由来の辛味成分「カプサイシン」を使用した非致死的な防護手段を採用。一般的な噴射距離は5〜10メートルで、カプサイシンが粘膜を刺激することで、嗅覚の鋭いクマを一時的に退避させる効果がある。北米では高い抑止効果が報告されており、銃器よりも習熟度に依存しにくい点も評価されている。日本でも環境省や自治体が、遭遇時の最終防護手段として位置づけている。
