「Fan Fan Fan」で深まる顧客体験 サンリオの取り組むエンゲージメント強化

キャラクタービジネスを核としながら、多様な顧客接点を通じてファンとの関係を築いてきたサンリオが、近年注力しているのがファンエンゲージメントの強化だ。単なる顧客管理に留まらず、ファンの思いを理解し、熱量を高め、長期的な関係を育むための仕組みとして、2020年7月にサンリオグループ共通の会員サービス「Sanrio+(サンリオプラス)」を立ち上げた。さらに、ブランドとファンの繋がりを支援するAIインターフェース「Fan Fan Fan」を活用し、ファンとの深いコミュニケーションを試みている。
 
9月25日、26日に開かれた「アドタイ・フォーラム2025」では、「Fan Fan Fan」を提供するナインアウトの香川亜友氏を聞き手に、サンリオの田口歩氏がファンエンゲージメントを高める同社の取り組みについて語った。

ファンとより深くつながるためのプラットフォーム

従来のCRMの枠を超えた「カスタマーエンゲージメントプラットフォーム」である「Sanrio+」は、サンリオキャラクターブランドのファンたちの熱量を高めて長期的な関係を築くことを目的に設計されたものだ。

その具体的な提供価値は大きく3つに整理される。ひとつは、ポイントサービスを軸に限定グッズや特別イベントなど良質な顧客体験を届ける役割。二つ目は、店舗やオンラインEC、SNS、さらにピューロランドやハーモニーランドといったテーマパークまで、あらゆる顧客接点を統合すること。そして三つ目は、顧客データを一元管理し、パーソナライズされた体験を届けることだ。

写真 人物 サンリオ デジタル事業本部 デジタル事業開発部CX推進課 顧客体験プラットフォーム戦略推進担当 田口歩 氏

サンリオ デジタル事業本部 デジタル事業開発部CX推進課 顧客体験プラットフォーム戦略推進担当 田口歩 氏

サンリオがこうした取り組みを本格化させたきっかけには、2つの大きな危機感があった。

「世の中には膨大な数のサンリオ商品が流通していますが、驚くべきことにそれに関するデータが社内にほとんど存在していませんでした。これではファンを理解できないと強い危機感を持ち、グループ横断的なCRMの導入を考えるようになりました。さらに、サードCookieの規制という外部環境の変化も重なり、いよいよCRM構築に踏み切ることとなりました」(田口氏)

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しかし、その道のりは容易ではなかった。田口氏は課題として、顧客理解の難しさ、収集データとIDの紐づけ、魅力的なコンテンツ制作の負担の3つを挙げた。

「顧客を理解するには調査やアンケートを重ねる必要がありますが、ただのアンケートでは本当の気持ちは分かりません。それを知るためには、顧客が楽しみながら、そして進んでデータを提供したくなるような仕掛けが必要です。そして得られたデータをCRMのIDと結びつける仕組みもつくらなくてはならない。そもそもサンリオらしい可愛いコンテンツをつくるには、どうしても時間とコストがかかるという問題もありました」(田口氏)

「Fan Fan Fan」で広がる新しい接点

こうした課題を解決するためにサンリオが選んだのが、ナインアウトが提供する「Fan Fan Fan」だった。どうしても無味乾燥なものになりがちな顧客アンケートを、サンリオらしいクリエイティブで素早く制作できる仕組みを備えている点が決め手となった。

また、システム連携にも柔軟に対応しており顧客一人ひとりに合わせたコミュニケーションを取りやすいこと、多くの人的リソースを必要とせずともスピーディに施策を回せると感じたことも大きかったという。実際に、700人を超える社員が在籍するサンリオ社内だが、「Fan Fan Fan」を運用するのはほぼ1人のみとのこと。それでも運用開始からわずか10カ月で13件の施策を実現している。

写真 人物 ナインアウト マーケティング部 マネジャー 香川亜友 氏

ナインアウト マーケティング部 マネジャー 香川亜友 氏

具体的な成果として紹介されたのが「 I♡Hellokitty診断キャンペーン」だ。これは、毎年春に開催される「サンリオキャラクター大賞」にあわせて展開されるミニコンテンツで、ユーザーが質問に答えていくと、自分にぴったりのグッズを診断してくれるというもの。

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多くのハローキティファンに好評となり、参加者は約9万7000人を記録。さらにそのうち6割以上は、直近アプリをあまり使っていない休眠ユーザーだった。顧客との接触回数を増やすことが重要となるエンゲージメント強化において、これは大きな成果といえるだろう。

また、こうしたコンテンツは「Sanrio+」への定期的なログインを促す役割も担っている。ファンがキャラクターと接触する機会を増やすことで、ブランドへの愛着を深める狙いだ。

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一人ひとりの顧客と向き合うことから

「Fan Fan Fan」はサンリオだけでなく、プロ野球チームの「千葉ロッテマリーンズ」やアパレル大手「アダストリア」など幅広い業種で活用されている。オンライン・オフライン問わず多様な顧客接点に対応し、クイズや人気投票といったインタラクティブなコンテンツを柔軟に制作できるのが特徴だ。

サンリオの場合は、「可愛さ」や「遊び心」といったブランドアイデンティティと深く結びついていたコンテンツを数多く制作。田口氏は「アンケートですらキャラクターと一緒に楽しめる体験に変えることができたのは大きい」と改めて導入の意義を強調した。

サンリオでは今後、収集したデータをリアルタイムで体験に反映させる体制づくりを加速させる方針だ。さらに、休眠ユーザーの活性化だけでなく、熱量の高いファン層をより深く理解し、継続的にエンゲージメントを高めていく取り組みも強化するという。

田口氏は「ファンの思いは我々が気づいていない形で常に存在しています。一人ひとりのファンと丁寧に向き合い、その声を真摯に取り入れることがエンゲージメントの核心だと思っています。そうすることで、ブランドとファンの関係は一層深まるはずです」と結んだ。

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マーケティング部:mk@ninout.ai
Fan Fan Fanについて:https://mk.ninout.ai/ng/answers/document_FanFanFan/

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