30~40代のオンターゲット率で4倍以上の改善効果が発現
―保険はテレビCMの活用が多い業界だと思いますが、はなさく生命ではマーケティング活動においてテレビCMをどう位置づけていますか。また今回、新たにCTV広告にチャレンジしたとのことですが、その背景を教えてください。
松井:日本生命の100%子会社として2019年から営業を開始したはなさく生命は、乗合代理店チャネルや通信販売チャネルなどに注力。従来の生命保険会社にはない、機動力を持ったビジネスの展開を目指しています。その一環として、ダイレクト事業への参入を機にテレビCMの活用を開始しました。
当初は「はなさく生命」という名前自体を知っていただく必要がありましたが、テレビCMは認知獲得だけではなく、レスポンス獲得、クリエイティブテストといった複数の目的を一度に達成できるパワーがあると考えています。しかしその効果はGRPといった指標での推定にならざるを得ず、常々「本当にターゲットに見てもらえているのか」という課題を感じていました。
CTVに挑戦した背景には、若年層など、従来のテレビCMではリーチしづらくなった層へのアプローチという課題があります。CTVはテレビデバイスの「大きな画面」を活かしつつ、デジタルならではの「データが取れる」というハイブリッドである点が強みです。そこで、新商品「はなさく変額保険」のキャンペーンで、初めてCTV広告を出稿。30~40代をコアターゲットとしてアプローチしました。
―3社での協業についてお聞かせください。
小坂:ここ最近、「以前と同じ広告費を投下しても、従来通りの効果が出づらくなった」という声をよく聞くようになりました。全体的に視聴率が低下し、またデバイスが多様化して「ながら視聴」が増える中、GRPだけを見て出稿しても、想定ほど見られていないケースが増えているのです。
今回、まずREVISIOでは2025年2月から3月にかけて実施された初回のキャンペーンを分析。課題はテレビの前にいた確率「オンターゲット率」でした。YouTube広告において、配信セグメントとして設定した25歳から54歳の男女が世帯にいない、つまりターゲットが全く含まれていない家庭への配信が50%にものぼっていたのです。さらに、リーチしたい30~40代のオンターゲット率は10%にも到達しなかったのです。
松井:年齢も番組も絞り込んで配信したはずなのに、この結果には本当に驚きました。
小坂:そこで2回目のキャンペーンでは、テレビ前滞在率を示すヒートマップデータを活用し、ターゲットが見ていない時間帯の配信を回避するように設定しました。
図表1 REVISIOデータについて
利光:私たちフリークアウトでは、コンテクスチュアルターゲティングを行う自社開発プロダクト「GP」を用いて、配信面の最適化を行いました。オーディエンスデータに頼るのではなく、30~40代のターゲットが好み、注目して見ているであろうコンテンツをピックアップし、そこに集中的に広告を配信する、というアプローチです。ながら視聴になりやすいニュース番組やゲーム実況、子ども向けのコンテンツなどを除外し、配信面を整理しました。
小坂:この2つの施策を掛け合わせた結果、効果は劇的に改善【図表2】。ターゲットが全く含まれない世帯への配信率は40ポイント減少し、ターゲット含有世帯への配信率は90%に向上。そして最も重要視していた30~40代のオンターゲット率は4倍以上に改善したのです。
図表2 コネクテッドTVにおけるYouTubeオンターゲット率改善結果
―地上波とCTVを「同じスクリーン上の広告」として横断的に運用する重要性について、皆さんはどのようにお考えですか。
松井:今回の分析を通じて、地上波とCTVをうまく併用していくことの重要性を再認識しました。どちらか一方だけでは不十分で、目的やターゲットに応じて最適なバランス、いわば「黄金比率」を見つけていくことが今後の課題です。
小坂:地上波とCTVを横断的に評価するためには、統一された評価指標が不可欠です。私たちは「実際にどれだけの人が注目して見たか」を測る「A-UR(アテンションユニークリーチ)」という指標を提唱しています。この指標で各媒体を評価することで、松井さんのおっしゃる「黄金比率」を見つけるサポートができると考えています。
利光:今後は、3社の取り組みを通じて、CTV広告の評価における新しいスタンダードをつくっていきたいと考えています。テレビデバイスが持つパワーは絶大です。クリック単価などの指標だけでその価値を判断するのではなく「視聴者の気持ちがどう変わったか」という本質的な価値を正しく評価できる未来を、皆さんと一緒につくっていきたいです。
松井:当社は、「新たな商品・サービスを供給し続け、その実現に向けて従業員が働きがいを実感し続けることができる」、“ニュー・インシュアランス・クリエイター”を目指すという長期ビジョンを掲げています。
広告活動は単に売上を上げるためだけのものではなく、私たちの存在意義や、新しい保険の形を、必要としている方々に正しく届けるための重要なコミュニケーション手段です。今後も挑戦を続けながら、その役割を果たしていきたいです。

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