「バー文化浸透」「鉄リサイクルの教育啓発」企業発のボードゲーム 3万人超来場のゲムマで若年層と接点

国内最大規模のアナログゲームイベント「ゲームマーケット」(以下、ゲムマ)が、いま大きなうねりを生んでいる。従来はインディークリエイターが主役となり、同人ゲームと商業ゲームが入り混じる独特の文化を育んできた。しかし近年、そこに企業が急速に参入しはじめ、「ボードゲームを通じた体験設計」という新しい市場が動き出している。

11月22日、23日開催の「ゲムマ2025秋」の会場を歩くと、これまでボードゲームとは無縁だった一般企業のロゴが並び、来場者が興味深そうに列をつくる姿が目についた。体験を通じて自社の世界観や文化を伝える。その“媒体”としてボードゲームは、企業にとってこれまでにない接点を開きつつある。そんな市場変化の最前線を、人気メーカーや初出展企業、制作を担うクリエイター、主催者の視点から描き出す。

人気メーカーが捉えた「来場者の質と量の変化」

シリーズ累計販売数は25万部を突破した人気ボードゲーム『たった今考えたプロポーズの言葉を君に捧ぐよ。』などで知られるClaGla社は、毎回長蛇の列ができる人気ボードゲームメーカーだ。同社代表のゲームデザイナーこだまじゅんじろう氏は、今年の会場の熱気を強く感じたという。

「例年は2日目の午後を過ぎると、来場者が一段落する時間帯があるのですが、今年は最後までずっと人が絶えませんでした。10月23日に発売したばかりの『ヒューマナイレーサーズ』の巨大版も休む暇なく回り続け、スタッフが交代しながら必死で運営するほどでした」

来場者の“多さ”だけでなく、“幅”の変化も印象的だったという。TRPG(テーブルトークRPG)ファン、謎解きゲームの愛好家、パズルゲームのユーザーまで、隣接ジャンルからの流入が顕著だった。さらには若年層の女性グループ、親子連れの来場者も増えている。

「ボードゲームが、いま“知的な体験の場”として広がっているのを感じます。もともとのボドゲが好きな方だけでなく、“何か新しい体験を求めている人”が来ている。市場が質的にも多様化していますね」

一方で、企業からの相談も増加している。特に『YESかNOか当てるゲームどっちーな』のようなコミュニケーションゲームに対して、「社内のアイスブレイクに使いたい」「社員研修の最初の30分に組み込みたい」「自社やサービスを知ってもらうツールにしたい」といった問い合わせが寄せられているという。

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