ラジオ番組「安部礼司」はなぜ20年続いたのか―日産自動車の“ブランデッド物語”の真髄

日曜日17時。翌日・月曜からの仕事を思うと気持ちが沈みがちな時間帯に、そっと心を軽くしてくれるラジオ番組がある。TOKYO FMを中心に全国ネットで放送される、日産自動車提供のラジオドラマ「NISSAN あ、安部礼司~beyond the average」だ。

番組の主人公・安部礼司は“日本一平均的なサラリーマン=アベレージ”という設定。彼と家族、そして癖の強い同僚たちの日常を通して、憂鬱な週末の終わりにさりげなく背中を押してくれる物語が紡がれる。

日産自動車 ブランド&コミュニケーション戦略部 シニアマネージャーの松村眞依子氏は、番組の魅力をこう語る。「励ますのではなく“そっと背中を押す”。この絶妙な距離感が、長年リスナーの共感を集めてきたのだと思います」。

番組は2025年に20周年を迎えた。なぜこれほど長く愛され、さらに日産のブランド価値にまで結びついたのか。日産とTOKYO FM、そしてradikoがともに積み上げてきた“二十年の方程式”を紐解いていく。

「主人公のモデルが会場に来ている」―ファンがどよめいた瞬間

今回のイベントのハイライトの一つは、パネルディスカッションに登壇したradikoビジネス推進室 取締役 嶋裕司氏についての“事実”が明かされた瞬間だった。

嶋氏は、番組開始当時の営業担当(TOKYO FM所属)。そしてなんと 安部礼司のモデル本人 でもある。会場には番組ファンも多く、「実在のモデルがいたとは…!」と驚きの声が上がった。

嶋氏は「プロフィールや出身地、好きな音楽まで、当時伝えた情報がほとんどそのまま番組設定に使われました」と笑いながら語る。制作陣が“等身大のサラリーマン”を描くために、実在する人物のリアルな感覚を丁寧に取り入れていたことがうかがえる。

左から、日産自動車の松村氏、radikoの嶋氏

長寿番組の背後には、こうした“人の温度”がある。フィクションでありながら、本物の生活者の息づかいが宿っていること。それこそがファンを惹きつけ、ブランドまで自然に引き込む要因になっている。

スポンサーを超えた“共創”が生んだ20年

番組を語る上で欠かせないのが、日産と制作陣の関係性だ。松村氏は「私たちは“1社提供のスポンサー”という立場ではなく、安部礼司の世界観を尊重し、その中に自然に日産のメッセージを織り込む」と説明する。

番組の最中に日産車が象徴的に登場することはあっても、過度な広告色は排除されている。松村氏が「日産の言いたいことを押し込むのではなく、世界観に寄り添う」と強調するように、番組の魅力を守りながらブランド要素を溶け込ませる“共創型のブランデッドコンテンツ”が20年間ファンに愛され続けてきた大きな理由だ。

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