大正製薬、電通、電通デジタルが語る、Amazon Ads活用によるフルファネル戦略とマーケティングROI向上施策

大正製薬は、電通、電通デジタルとの協業により、Amazon Adsをフルファネルで活用し、マーケティングROIの向上に取り組んだ。Prime Video広告の導入を軸に、ブランド想起から購買までの流れを一気通貫で可視化し、成果を最大化させたプロジェクトの全貌を、関係者の鼎談で明らかにする。組織間の連携課題、データ分析の重要性、そして未来のマーケティング像までを、大正製薬の荒巻寛厚氏、電通の世良英俊氏、電通デジタルの大熊彩理奈氏が振り返った。

マーケティングROI向上へ社内横断で取り組む

━━まず、大正製薬の今回の取り組みの位置づけについてお聞かせください。

荒巻:Prime Video広告を活用した今回の取り組みは、「データマーケティングプロジェクト」として位置づけており、社内では初めての試みです。目的はマーケティングROIの向上であり、特に購買データを活用したメディア出稿の購買貢献度の可視化に注力しています。今回は「リアップX5チャージ」「リボビタンDX」で広告出稿しました。

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大正製薬 マーケティング本部 メディア推進部 メディアグループ グループマネージャー 荒巻寛厚 氏

━━社内では初めての取り組みとのことですが、マーケティング体制や組織について、どのような状況でこのプロジェクトを進められたのでしょうか。

荒巻:当社内ではマーケティング本部以外にも通信販売事業推進部があり、またマーケティング本部内でもブランドコミュニケーション部とメディア推進部など、それぞれが異なる役割と予算を持つ部署が存在します。今回のプロジェクトでは、これらの部署間の連携が課題でした。生活者視点での一貫したコミュニケーションを実現するためには、組織の分断を乗り越え、全体最適を目指す必要がありました。

━━組織間の連携が課題となる中で、Prime Video広告の導入に至った背景や狙いについてお聞かせください。

世良:大正製薬様は、これまでもAmazon Adsで獲得領域を中心にスポンサー広告やAmazon DSPなどを活用されていました。そうした中で、2025年4月にPrime Video広告がローンチされたことを大きな機会と捉えました。我々としても、データマーケティングプロジェクトとして購買の最大化を目指していたため、Prime Video広告が持つ「リーチメディア」としての可能性に大きな期待を寄せました。

ブランド想起から購買までの流れを一気通貫で捉え、動画広告による認知獲得から購買行動までをデータで紐づけ、効果を検証できる点に魅力を感じていただけたのだと思います。

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電通 第11ビジネスプロデュース局 エクスペリエンスデザイン・プロデュース2部 シニア・エクスペリエンスデザインプロデューサー 世良英俊 氏

荒巻:そうですね。特にファネルごとのメニューの深化、Amazon Marketing Cloud(AMC)を活用した分析によって、認知・獲得施策の購買貢献、関連性の可視化に可能性を感じました。

図 Amazon購買最大化に向けたPrime Video Adsの活用

フルファネルで購買最大化を目指す

新規層へのリーチ拡大と購買貢献につながった

━━Prime Video広告の導入にあたり、どのような課題があり、電通および電通デジタルはどのように支援されたのでしょうか。

世良:大正製薬様がAmazon Adsを活用する上で、ファネルを越えた検証と、Amazonのストア内での購買最大化を実現できるかという点が重要な課題でした。電通としては、大正製薬様のマーケティング戦略全体を俯瞰し、Amazon Adsの活用方法を設計しました。特に、Amazonでの広告の場合はただ「(広告を)掲載して終わり」ではなく、それが購買にどれだけ貢献したかが分かりますので、それを分析し、PDCAサイクルを回す提案をしました。

大熊:私たち電通デジタルは、その実行部隊として、AMCを活用したデータクリーンルームの構築と、詳細な分析基盤の提供を担当しました。特に、単体の広告メニューに閉じずにAmazon Adsのソリューション全体を活用することで、主にAmazonでの売り上げといったビジネスにどう寄与できるかという検証まで含めたご提案をしています。

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電通デジタル プラットフォーム部門 プラットフォーム2部Amazonグループ 大熊彩理奈 氏

荒巻:電通、電通デジタルともにデータ分析に非常に強いという点で安心感があり、一連の取り組みを信頼してお願いすることができたと感じます。

━━その結果、どのような分析結果や成果が得られましたか。

世良:Prime Video広告はローンチしたばかりでしたが、リーチと購買への結びつきをしっかり検証しました。特に、ゴールデンパス分析においては認知策としてPrime Video広告に最初に接触することが、購買に最も結びつくことが判明したのは大きな成果でした。

荒巻:実際、Prime Video広告を最初に接触させた後、スポンサー広告やAmazon DSPへとつなげることで、Prime Video広告を挟まない場合と比較して、売上が135%~227%リフトするという定量的な成果を達成しました。これは、新規層へのリーチ拡大だけでなく、確かな購買貢献につながっていることを示すもので、顕著な成果だったと思います。その後7月にも違う商材で施策を実施しましたが、同じように分かりやすい成果が出ており、商材や期間が違っていても再現性があるものだと分かったのは大きな発見でした。

図 ゴールデンパス分析

広告接触の順番がコンバージョン(CVR)に大きく影響した

オンライン・オフラインの連携などROIのさらなる向上へ

━━広告接触の「順番」がポイントだったということですね。では改めて、今回の施策における成功のポイントはどこにあったと考えていますか。

荒巻:課題感としてお話しした部署間の連携については、マーケティング本部長の号令により、通販事業部、メディア推進部、ブランドコミュニケーション部の社内連携もスムーズに行えたと思います。本部と部署横断で、Amazonの購買最大化に向けたプランニング体制を構築することができました。

大熊:電通デジタルとしては、購買への貢献を最大化させるという点で、これまではラストタッチのみの売上しか可視化できないという課題をAMCで分析できたことが大きかったと思います。先ほどどの順番で広告を当てるかという話題が上がりましたが、その効果検証を行って広告の型化に取り組みました。

また、初期は当社でコードを書き、数字を出していたところを、国内電通グループの独自ツールであるTOBIRAS CONNECT(トビラスコネクト)を活用してノーコードでデータ取得を可能とし、タイムリーにデータを確認できるようになるというプロセスの変化もあったと思います。

クリエイティブ別、ファースト/ミドル/ラストタッチでの売上貢献、新規/既存を分類しての売上集計、分析が可能となった点もポイントだったのではないでしょうか。

━━最後に、今後の展望についてお聞かせください。

荒巻:今回のAmazon Adsの活用を通じて、Amazonのデータを軸にフルファネルでプロモーションを提案できる可能性を強く認識しました。今後も、電通および電通デジタルとは連携を深め、マーケティングROIのさらなる向上を目指したいと考えています。特に、オンライン(Prime Video広告)、オフライン(地上波テレビ)の広告出稿が、オンライン(Amazonのストア)、オフライン(ドラッグストア)の売上にどのように貢献したかを可視化することで、より高度な展開ができるのではと期待しています。

世良:これから、あらゆる、連携できる“生きた”データをどれだけ提案に結びつけられるか、そしてその分析をもって仮説をたて、実行まで落とし込めるかが肝になってくると思います。今後も大正製薬様とともに、データ活用における新たな価値創造を目指していきたいです。

大熊:今回の事例は、Amazonに出品しているクライアントへの支援ですが、今後はAmazonに出品していないクライアントに対しても、Amazonのソリューションを活用し、マスやオフラインデータとの統合も視野に入れた支援領域を広げていきたいと考えています。

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