15周年を迎えたradikoの現在地
radiko は2025年12月でサービス開始から15周年を迎えた。現在の月間利用者数は約850万人で、1日あたりの利用時間が130分以上と非常に長いことが特徴。有料会員も約110万人に達し、全国のラジオ局の番組が聞ける「エリアフリー」や聞き逃した番組が聞ける「タイムフリー」といったサービスが活用されていると語った。
ライブ配信、タイムフリー、エリアフリーといった既存サービスに加え、好調なポッドキャスト、さらに2025年7月にはApple CarPlayとAndroid Autoに対応したアプリをリリースした。このカーアプリは「Google Play ベスト オブ 2025」でカーアプリ部門の大賞を受賞するなど、ラジオ聴取体験の拡張を進めている。
メディア接触の隙間時間“ホワイトスペース”とは何か
嶋氏は、現代の生活者がスマートフォンを持ち歩き、日常がコンテンツやメディアと常時接続している状態にあると指摘。その上で、生活者がどのようなシーンでどのメディアを選んでいるのかを調査したと述べた。
「リラックス中」に接触するメディアを調べたところ、テレビ・TVer、YouTubeが上位を占めた。これらは平日では、主に20~23時といった時間帯が該当する。続けて嶋氏は、仕事・勉強中や移動中、家事中など、ディスプレイを見られない時間に利用されているメディアについて問いを投げかけた。
その結果、仕事・勉強中ではYouTubeに次いでラジオ・radikoが2位、移動中では1位を獲得。家事中でも3位にランクインした。嶋氏は、こうした「画面を見ない時間」が広告体験の“ホワイトスペース”となっており、その時間帯でラジオ・radikoが上位に位置している点を指摘した。
特に移動中は平日の朝夕、休日は朝から夕方までと幅広い時間帯を占める。日中の大部分を占めるこのホワイトスペースにおいて、音声メディアが大きな存在感を示している。この結果から嶋氏は、テレビやデジタル広告といったアプローチに加え、ホワイトスペースの時間に音声メディアを意識したプランニングの重要性を提唱した。
最もストレスを感じにくい音声広告
さらに嶋氏は、調査から得られたもう一つの重要な発見として、「ラジオの音声広告は、最もストレスを感じにくい広告である」という結果を報告した。
動画メディアの広告などと比較して、ラジオ・radikoの広告は「ストレス」と感じる割合が最も低く、「非ストレス」の割合が最も高かった。これは、番組の中に自然な形で挿入される音声CMが、リスナーに受け入れられやすいことを示唆している。
嶋氏はその理由の一つとして、番組と広告の親和性を挙げる。例えば『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FM)のように、「番組のファンが、スポンサーである日産自動車のファンにもなっていただいている」ケースでは、コンテンツの力がCMの届けやすさにつながっていると分析した。
radiko取締役の嶋裕司氏。TOKYO FM在籍時に『安部礼司』の初代営業担当だった
さらに、週1回以上radikoを利用するユーザーは、一般層よりもさらに広告に対するストレスが低く、受容性が高いことも判明した。リーチ面では、テレビやYouTubeには及ばないものの、月1回以上の接触者は全体の3分の1以上を占め、TVerや音楽ストリーミングサービスと同程度の規模を持つメディアであると明かした。
枠から人へ。進化するradikoオーディオアド
radikoは、ターゲティング可能な音声広告商品「radiko audio Ad」を提供している。これは、ラジオ局から提供された広告枠(番宣スポットなど)を、radikoの保有するデータに基づき、ユーザーごとに最適な広告に差し替えて配信する仕組みだ。
この広告商品の課金体系は「完全に広告が聴取された方のみに課金する、完全聴取完了課金」であると嶋氏は説明する。「“枠から人へ”という発想の商品で、2025年上期の売り上げは前年同期比で225%と倍以上の推移をしており、非常に好調です」と、その成長性をアピールした。
この好調の背景には、いくつかの特徴がある。民放99局が制作する良質なコンテンツが流れ、放送局の考査を経たCMのみが配信される“ブランドセーフティ”。番組と一体化した広告体験。そして、有料のプレミアム会員にも広告が配信されるなど、プラットフォームとして広告を邪魔者と位置づけていない点も大きい。
最大の特徴は、精緻なターゲティングだ。その精緻なターゲティングの核となるのが位置情報。嶋氏は「radikoは番組を配信する上で、放送エリアを判別するために全ユーザーの位置情報を取得しなくてはならない。これをマーケティングに活用できます」と、その仕組みを解説した。
これにより、特定のチェーン店への来訪者(例:あるコンビニによく行く人)や、特定の路線利用者(例:〇〇線利用者)、さらには特定の大学にいる学生といったセグメントへの広告配信が可能となる。リアルタイムでのジオターゲティングも提供しており、「今、表参道にいるradikoユーザー」といった配信も実現している。
態度変容から購買まで。音声広告の成功事例
講演では、radikoオーディオアドを活用した3つの成功事例が紹介された。
1. サッポロビール「パーフェクト黒ラベルワゴン」
六本木ヒルズでのイベント来場促進のため、六本木周辺の来訪者や勤務者などに位置情報ターゲティングで広告を配信。結果、広告非接触者と比較してイベントへの参加意向が159.9%にリフトアップした。
2. アイスタイル「@cosme STORE」
店舗の最寄り駅半径500メートル以内にいる女性、または過去に訪れたことのある女性にジオターゲティングで広告を配信。結果、リアルタイム配信に接触したユーザーの来店率は、非接触者と比較して約8倍(767%)という驚異的な数値を記録した。
3. 大正製薬「リポビタンD」
高速道路のSA・PAを頻繁に利用するドライバー層にターゲティング配信。広告非接触者と比較して興味関心が132.5%、購買意向が134.6%と向上した。 また、購買データと連携して効果を検証したところ、広告接触者の購入率は配信前後で140%のリフトアップを確認した。
これらの事例を踏まえ、嶋氏は「radikoオーディオアドはターゲティングができる」にとどまらず、「位置情報やパートナー企業の購買パネルデータと連携することで、音声広告接触後の“来店”や“購買”といった実行動を可視化できる点が強みだ」と改めて強調した。

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