キユーピー マヨネーズ発売100周年を記念し、2025年夏に東京・渋谷で「マヨ渋」と題した施策を展開した。「若者のマヨネーズ離れ」の傾向を受け、若者に「マヨネーズを実際に食べてもらう体験」を中心に設計したもの。渋谷の人気飲食店と考案したオリジナルメニューを軸に、屋外広告やイベントを連動させた取り組みで、施策を伴走した大広が提唱する「ダイレクトドリブン・マーケティング」を実践した事例だ。
11月26日に開催された「宣伝会議サミット2025」では、大広クリエイティブディレクターの望月良氏とビジネスデザイナーの香月彩那氏が「マヨ渋」を事例に、広告を超えた「感動体験」を通じて顧客とつながり、ブランド競争力を高めるための考え方と具体的手法を紹介した。
「感動体験」の設計がポイント
大広は1970年代から通販領域をはじめとする「ダイレクトビジネス」に注力してきた。通販に限らず、顧客と直接つながるすべての接点をダイレクトビジネスと捉えている。
SNSの台頭により顧客接点が多様化する現代において、大広はダイレクトビジネスの知見を活かし、独自のマーケティングメソッド「ダイレクトドリブン・マーケティング」を開発した。これは広告の先にある購買やロイヤル化までを見据え、新規顧客と「推し顧客」を創造し続けるためのプランニング手法だ。
マヨ渋の企画も、このフレームワークに沿って立案され、多くの顧客との接点づくりを実現した。
ダイレクトドリブン・マーケティングは、戦略策定・体験づくり・PDCAという3つのステップからなる。マヨ渋は、このうち2つ目の「感動体験の設計」に該当する。
ダイレクトドリブン・マーケティングの3つのステップ
「感動体験」とは、心を強く揺さぶり、ブランドへの愛着が高まるリアルな場での体験を指す。
香月彩那氏は「日々膨大な情報に触れる生活者との関係性を高めるには、心を強く揺さぶるリアル体験が不可欠」と述べる。顧客関係の構築には時間がかかるイメージがあるが、感動体験においては「一気に惚れさせる」設計が重要だとしている。
大広 ダイレクトドリブンマーケティングユニット 兼 第3営業局 ビジネスデザイナー 香月彩那 氏
ここで言う「感動」は、「ドキドキ」といった動的感情だけでなく、「ホッとした」「安心した」といった静的感情も含む。顧客との関係が深まるあらゆる瞬間を感動体験と捉えている。
人の感動をどう生み出すか、顧客との関係性を強化する場をどう設計するかについては3つのポイントがある。1つ目は「いつ・どこで体験するか」、2つ目は「体験が想像を超えているか」、3つ目は「体験が開かれ、人から人へ伝播するか」だ。マヨ渋ではこれらのポイントを綿密に検討し、企画を組み立てたという。
若者のマヨネーズ離れに挑んだ「マヨ渋」
このダイレクトドリブン・マーケティングを実践したのが、キユーピー マヨネーズ発売100周年企画「マヨ渋」だ。約1カ月にわたり渋谷エリアで開催され、感動体験を生み出す機会として、屋外広告、イベント、飲食店でのオリジナルメニュー提供を組み合わせて実施した。
ターゲットは20代の若者だ。近年、一人暮らしの若者を中心にマヨネーズを常備しない家庭が増えており、接点づくりが課題となっていた。そこで、若者が集まる渋谷の飲食店での喫食体験を感動体験の核に据えた。
大広 ダイレクトドリブンマーケティングユニット 兼 クリエイティブ局 局長 / クリエイティブディレクター 望月良 氏
キユーピー マヨネーズの魅力を再認識してもらうには、広告での認知拡大だけでなく、実際に「食べてもらう」ことが不可欠と考えた。そのため、人気店28店舗で86種のオリジナルメニューを提供し、喫食機会を創出した。
喫食という感動体験に向けて、巨大広告やイベントなどの施策を連動させ、「フルファネル・ジャーニー設計」モデルを活用した。認知から推奨までのファネルの中でコア体験をどこに置くかを見極め、行動設計を行うアプローチだ。
望月氏は「ファネルを埋めるだけでは人の心は動かない。伝えたい顧客価値や、それを体現するビッグアイデアが必要」と語る。マヨ渋では初期段階から感動体験を「喫食」と定め、そこへ至る道筋を施策と連動させた。
象徴的な施策がSHIBUYA109渋谷店のシリンダー広告だ。「マヨ渋」という言葉と巨大なマヨネーズのみという大胆な構成がインパクトを生み、山手線からの景観そのものが体験となった。
「マヨ渋」で掲出したSHIBUYA109渋谷店のシリンダー広告
渋谷中に掲出したフラッグ広告では、歩くたびにマヨ渋に触れる環境をつくり、メニュー写真を多数展開することで「食べてみたい」という欲求を喚起した。
さらに3連休のイベントでは、キユーピー マヨネーズに関するクイズや巨大なマヨ渋ガチャを通じ商品の理解を深め、自宅での喫食体験へつなげる流れを設計。冊子「MAYOZINE(マヨジン)」も配布し、片面ではマヨ渋メニュー、もう片面ではキユーピー マヨネーズの知識を紹介した。クイズとも連動し、来店動機づくりに寄与する情報誌として活用された。
メイン体験であるメニュー提供では、人気店28店舗と連携し86種類のオリジナルメニューを開発した。店舗からは期間終了後も通常メニューとして提供したいとの声が上がるほど好評だった。
来店者にはキユーピー マヨネーズを配布し、店舗での喫食体験から自宅での再喫食へつなげる導線も整備した。
渋谷ジャックから自宅まで。連鎖する体験がもたらした1万3700食超の成果
これらの施策はすべて「喫食」というコア体験を中心に連動している。屋外広告、イベント、グッズ配布といった複数のタッチポイントが感動体験に収束するよう設計され、それぞれのアウトプットの質を高めたことでポジティブな評価が積み重なり、強い感動体験につながった。
その結果、マヨ渋のオリジナルメニューは1カ月で1万3748食を提供した。これは単なるプロモーションではなく、感動体験創出を軸に企画を設計した成果であり、ダイレクトドリブン・マーケティングの有効性を示すものだという。
香月氏は「ダイレクトドリブンのメソッドに沿って、今回の感動体験をどうつくるかにこだわり、チーム一同で企画から実施まで走り抜けた。仕掛ける側でありながら、感動体験をしているお客様の姿を見てこちらまで感動してしまうような場面も多かった」と振り返る。また、「メソッドはあくまで考える上での指針だが、決して机上の空論ではなく、うまく機能した時には会議室で想定していた以上の成果を生み出せるものだと実感した」
望月氏は「ダイレクトドリブン・マーケティングは緻密な計算に基づく手法であり、そこにクリエイティブの力を掛け合わせることで成果が生まれる。AIの時代だからこそ人間にしかできない価値を大切にし、これからも顧客の心を動かす体験を創出したい」と語った。
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