創業200年を超えるシャンパーニュ メゾンの「ペリエ ジュエ」を展開するペルノ・リカール・ジャパンは、新規顧客の獲得と既存顧客との関係強化に向けた取り組みで効果を上げている。11月26日に開催された「宣伝会議サミット」で、ペルノ・リカール・ジャパンの森川美結氏と、マーケティングパートナーを務めた電通の工藤亮氏、松林哲也氏が登壇。データとCRM戦略で顧客体験の提供とブランド価値の向上につなげた施策、それを支えた電通の事業成長支援「Marketing For Growth」の取り組みについて紹介した。
高品質な飲用体験へのこだわりと「一過性」という課題
プレステージ シャンパーニュ メゾンの「ペリエ ジュエ」は、約200年の歴史を持ち、その高い品質と味わいで世界中の愛好家を魅了している。同ブランドでは、「ブランドの世界観を体現し、上質な飲用体験をお届けする」ことにこだわり、年間40〜50回もの高品質なペアリングイベントを実施してきた。
しかし、その体験価値の高さとは裏腹に、大きな課題を抱えていた。ペルノ・リカールの森川美結氏は、「イベントの一つひとつが一過性になっており、せっかくイベントに来ていただいたお客様とつながり続けることができていませんでした」と語る。上質な体験を提供してもその場限りで終わってしまい、持続的な関係へと昇華させられていなかったのだ。
ペルノ・リカール・ジャパン マーケティング本部 デジタル部 デジタルCXアクセラレーションマネージャー 森川美結 氏
「つながり続ける」ためのO2O CRM戦略
この課題に対し、電通はブランド体験者と「つながり続ける」ためのO2O(Online to Offline)CRM戦略を提案。オフラインのイベント参加者をオンラインで継続的にフォローし、逆にオンラインでブランドに触れた新規顧客をオフラインの体験へと誘導する。この双方向の循環を生み出すことで、顧客との関係を深化させることを目指した。
この戦略の根幹をなすのが、電通が提供する事業成長支援モデル「Marketing For Growth」である。電通の工藤亮氏は、成功の要件として「データインフラストラクチャーの構築」と「持続的な伴走(マーケティングコンサルティング)」の2点を挙げる。「上質な体験の先で、きちんと顧客とつながり続ける基盤を作ることが不可欠でした。データ基盤を構築するだけでなく、そこからCRMや顧客体験の提供へとつなげるため、3年間にわたりマーケティングコンサルタントとして伴走させていただきました」と工藤氏は語る。
電通 第6マーケティング局 マーケティングコンサルタント 工藤亮 氏
プラットフォームとして選ばれたのは、アクティブ率の高さと顧客層の広さからLINEだった。そして、O2O CRMを実現するツールとして、電通と電通デジタルが提供するLINEのAPIサービスが採用された。これにより、あらゆる顧客接点でデータを蓄積し、活用する基盤が整えられた。
顧客データ取得率が急増、高額イベントも即完売に
電通とのパートナーシップによるO2O CRM戦略は、目覚ましい成果を上げた。イベントでつながった顧客のデータ取得率は従来比で2ケタ増と飛躍的に向上。さらに、LINEを通じてロイヤル顧客に優先案内を行ったポップアップイベントでは、高価格帯のチケットが即完売。森川氏が「売り切れると思っていなかったので、急きょチケットを追加で販売した」と語るほどの成功を収め、事業成長に大きく貢献した。
なぜこれほどの成果が出たのか。森川氏は、成功の鍵は「データ基盤構築」「顧客理解」「顧客体験」「効果検証」を分断せず、すべてを同時に、そして循環させることにあったと強調する。これはまさに、電通がデータインフラを構築し、伴走支援を行うことで実現した好循環だった。
まず「顧客理解」のために、電通は量(LINE友だち数など)と質(イベント参加回数や金額など)の両面を可視化するダッシュボードを構築。さらに「顧客を8つのセグメントに分類し、データに基づいた深い顧客理解を可能にした」と工藤氏は振り返った。
次に、そのデータに基づいて「顧客体験」をパーソナライズ。ロイヤルユーザーには特別なイベントへの優先案内を、新規顧客には参加しやすい間口の広いイベントを案内するなど、セグメントに応じた最適な体験を提供。予約から決済までLINE内で完結するフリクションレスな設計も、ラグジュアリーな体験価値を損なわないための重要な要素だった。
電通 第6マーケティング局 CXコンサルティング1部 部長 松林哲也 氏
「場所と時間」の統合が顧客体験をアップデート
プロジェクトを推進した工藤氏は、ブランド体験をアップデートする上で「『場所の統合』と『時間の統合』を意識した」と語る。「場所の統合」とは、イベントや広告といったオンライン・オフラインのあらゆる接点でデータをつなぎ、蓄積すること。「時間の統合」とは、イベントの前後や、複数年にわたる顧客の体験を点ではなく線で捉え、関係性を深めていくアプローチだ。これにより、顧客一人ひとりの体験が分断されることなく、連続性のある豊かなものへと進化した。
3カ年で段階的に拡大したCRM戦略
この取り組みは、電通の伴走のもと、3カ年計画で段階的に拡大された。初年度(2023年)はデータ取得の基盤となるインフラ整備に注力。よりデータを取得するタッチポイントを増やし、データのバリエーションをリッチ化。3年目には会員基盤そのものの拡大を目指し、量と質の両面で顧客との関係を強化した。この長期的な視点での改善こそ、電通の伴走支援の価値である。
3年間の結果、新規顧客は大幅に増加し、LINEのブロック率も改善。量と質を両立した成長を達成した。森川氏は今後の展望として、「CRMを通じてリアル体験への誘導やオンラインでのつながりを継続しながら、ECサイトや百貨店などで購入いただくなど、飲用機会をさらに広げていきたい」と語る。
プロジェクトを推進する上で不可欠な「強い意志」と「強いチーム」
このような大規模な変革を成功に導いた要因について、森川氏は「強い意志」と「強いチーム」の2つを挙げる。特に、オフライン施策の効果をデータで示し、社内を説得し続ける「強い意志」。そして、それを支え、長期間のプロジェクトを共に推進する「強いチーム」の存在が不可欠だった。「今回は電通に特に強いチームを作っていただき、しっかりサポートしてもらいながらプロジェクトを続けることができました」と、パートナーシップの重要性を強調した。
ペリエ ジュエの事例は、高品質な体験がデータと結びつくことで、いかにして持続的なブランド価値向上と事業成長につながるかを示している。しかし、その裏には組織や意識の壁により分断されがちなプロセスを、的確なデータ基盤と、顧客を深く理解し戦略を推進する「人」の力でつなぎ合わせた、電通の存在があった。
電通が推進する事業成長支援「Marketing For Growth」は、データインフラの構築から、長期的なコンサルティングによる伴走まで、クライアントの課題に深く寄り添うことが特徴である。こうしたブレークスルー事例がここから数多く生まれている。
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