多くの事業開発プロジェクトに携わる、鷹野翔平氏と髙津雄矢氏にその理由とプロジェクトの進め方、博報堂グループとしての独自性について聞いた。
いま「ブランド経営」が必要とされる理由
成熟産業に属する大企業をはじめ多くの企業で、新たなパーパスが策定されたり、新規事業開発部門の設置や既存事業の変革が試みられたりといった動きが活発化している。国内市場の成熟やコモディティ化の進展を受け、多くの分野で従来型の成長モデルが曲がり角に来ていることの裏返しともいえる。
その一方で、策定されたパーパスが実態を伴わず、単なるスローガンに留まってしまったり、あるいは「手段が目的化」してしまい、本来目指すべき変革につながらなかったりといった課題も散見される。マネジャー兼戦略クリエイティブディレクターの鷹野翔平氏は次のように指摘する。
博報堂コンサルティング マネジャー 兼 戦略クリエイティブディレクター 鷹野翔平 氏
「策定されたパーパスが具体的な事業活動に結びつかず、形骸化してしまうという点が現在多くの企業が抱える課題だと認識しています。存在意義の定義自体は重要ですが、それが目的化してしまうと、本質的な企業変革にはつながりません。今こそ企業は、『なぜ我々の会社が存在しているのか』という根本的な問いに向き合い、それを事業活動へと具体的に落とし込む必要があります。これこそが体験実装を通じた『ブランド経営』の実践なのです」
パーパスそのものを事業活動に体現することが求められる
「ブランド体験」の実装における課題とは
過去のプロジェクト経験から、博報堂コンサルティングが直面したクライアントの課題は、大きく二つに分類できるという。一つ目は、顧客体験の構築におけるセクションの分断だ。マネジャー兼クリエイティブディレクターの髙津雄矢氏が解説する。
「ブランドを体現する顧客体験の構築には一貫性が求められます。対外的に発信される広告やPR、実店舗やオンラインストア、SNSやメルマガに至るまで各タッチポイントにおける一貫したメッセージや世界感が独自のブランド構築につながります。しかし、実際の現場では組織内の担当部署が縦割りになっていたり、領域ごとに分断されているようなケースが非常に多く、一貫した顧客体験構築の障壁となっています」
主管部署だけでのプロジェクト進行が難しい状況に陥っていることが多く、利害の異なるステークホルダーを組織横断的に巻き込みながら合意形成を行う第三者の存在が必要であることが多いようだ。
二つ目は、市場ニーズへの過度な傾倒だ。
「ユーザーインタビューなどを用いながら、市場ニーズ探索は十分にされているものの、ローンチ後、対象の市場で戦っていけるのか、その視点が抜け落ちてしまっていることが多々見受けられます。事業構想の段階から、自社やブランドの強みと市場で価値が生まれる方向性の交点を見極める必要があります。市場での勝ち筋は何か、ブランドとしてどう位置づけるべきか、といった視点から事業をデザインしなくてはならないのです」
博報堂コンサルティング マネジャー 兼 クリエイティブディレクター 髙津雄矢 氏
ブランドらしさを反映した「体験デザイン」とは
こうした課題に対し、博報堂コンサルティングは、組織間の連携を促進し、共通の認識を醸成するための「コアとなるエクスペリエンスアイデンティティ」の定義や、ブランドの体験価値を明確に顕在化させるための戦略立案・実行支援を行っている。中でも重視しているのが「体験デザイン」の設計だ。「体験デザイン」は、単に顧客との接点(タッチポイント)における体験を最適化することにとどまらない。
顧客体験の一貫性を重視する
例えば、ある企業が「顧客体験の向上」を目的として店舗デザインの刷新を依頼した場合、博報堂コンサルティングは、まずブランド全体の「体験価値」や「コンセプト」を再定義することから着手する。「その上で、そのブランドコンセプトに基づき、店舗デザインのコンセプトを構築していく、というプロセスを踏むのです」(髙津氏)
このように、体験そのものだけでなく、その背後にあるブランドの本質的な価値を定義し、それをデザインコンセプトに反映させることで、クライアントとの間に高い整合性を持つ、より本質的なデザインコンセプトを生み出すことができる。
さらに鷹野氏は、「個別のブランド体験だけではなく、パーパスに基づき中長期的にブランド体験を生み出し続ける仕組みづくりを行う必要がある」と説く。
「我々は顧客の目に触れるブランド体験だけでなく、ブランド体験を生み出すためのインナー支援にも力を入れています。そもそもブランド体験を生み出していく主体は従業員(外部パートナー、サプライヤー含む)であり、中長期的にブランドパーパスを体験価値として実現し続けるには、経営者が価値創造のプロセスや組織、人材などを整える必要があります。これは顧客体験を創造する一部署だけでは実現できません。
昨今、『両利きの経営』と言われていますが、既存事業と新規事業でも必要となるリソースやプロセスは異なります。この点に気付かず、外側の顧客体験にばかり気を取られている企業様が多いのではないかと感じています。我々博報堂コンサルティングは『ブランド経営』のもと、顧客の目に触れるアウターとしてのブランド体験と、それを生み出すプロセスや組織、人材などのインナーを両輪で支援することで、パーパスに基づく体験価値を創造します」
アウターだけではないインナーへの着目
生活者発想のDNAをもとに実装にコミットする
クライアントが持つブランド資産を最大限に活用し、それを事業成長へとつなげるため、重視するのが徹底的な「実装」へのコミットだ。起業経験を持つ鷹野氏は次のように話す。
「私たちは、単に戦略を立案するだけでなく、それをいかに形にし、世の中に実装していくか、という点を強く意識しています。その実装された具体的な価値が、ブランドとして世の中に触れられるものとなるのです。
例えば、新規事業開発においては、単に有望な技術やアイデアを発掘するだけでなく、それが市場で勝ち筋となり得るか、ブランドとしてどう位置づけるべきか、といった視点から事業をデザインしていきます。クライアント企業が持つ研究開発部門(R&D)の『宝の山』とも言えるアセットを、経営やマーケティングの視点と掛け合わせながら、ユニークな事業へと昇華させるところは、私たちならではのアプローチです」
また、既存事業のテコ入れやリブランディングにおいては、短期的なプロモーションやPR施策で課題を乗り越えようとするのではなく、ブランドの価値そのものを時代に合わせて再定義し、顧客体験やサービス全体、ときには価値創造のプロセスや組織体制まで見直すといった、より本質的なアプローチを重視する。
そんな博報堂コンサルティングの独自性は、そのルーツに深く根差している。広告会社としての「博報堂」グループのDNA、すなわち「生活者発想」と「パートナーシップ」を核に据えながら、コンサルティングファームとしての専門性と実行力を掛け合わせている点にある。
「クリエイティブディレクター、アートディレクター、コピーライターなど、多様な専門性を持つ人材が『ワンチーム』として共存し、それぞれの専門性をコンサルティングスキルと融合させながら育成されています。これにより、職種を明確に分け、外部に発注するのではなく、組織内で専門性を統合し、ハイブリッドな人材がクライアントの課題解決にあたっています。広告会社として生活者と企業の両方に深く向き合ってきた歴史から得られる深いインサイトと解像度は、他社にはないユニークネスです」(髙津氏)
博報堂コンサルティングのアプローチは、クライアントが「出し切れていない」ブランド資産や事業可能性を、外部の視点と専門的な知見によって引き出し、具体的な実行へとつなげていくプロセスそのものだ。このような、戦略立案から実行、そして成果の創出までを一貫して支援する姿勢こそが、博報堂コンサルティングの提供する価値であり、多くのクライアントから信頼を得ている理由と言えるだろう。

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