体験クリエイティブの最前線! 制作者とインフルエンサーが語る「人を動かす」仕掛けの裏側

広告手法が多様化する中でも、近年ますます存在感を増している体験型コミュニケーション。あの話題のイベントは、一体どのように企画されたのか。大人気のイベントを数多く企画してきたクリエイターたちと、数々のイベントを話題にしてきた人気インフルエンサーが集結。「話題になったイベントや展示の手の内、大公開! 本当は教えたくない“体験”の作り方」が虎ノ門広告祭の3日目の10月19日に開催された。
 
CHOCOLATEの体験作家小板橋瑛斗氏、博報堂のアクティベーションディレクター杉山芽衣氏、電通のPRプランナー辰野アンナ氏、イベント紹介インフルエンサーのひや氏が登壇し、電通のコピーライター/CMプランナーの真子千絵美氏の司会のもと、体験づくりのこだわりを語り尽くした。本記事では、各登壇者が明かした「本当は教えたくない体験づくりのこだわり3選」を中心に、セッションの模様をレポートする。
※取材・執筆は、虎ノ門広告祭 学生記者の上野祥太が担当しました。
左から真子氏、ひや氏、小板橋氏、杉山氏、辰野氏

左から真子氏、ひや氏、小板橋氏、杉山氏、辰野氏

PR視点の“見出しになる”体験づくり

トップバッターの辰野氏は、PRプランナーとしての視点を交えた3つのこだわりを紹介した。

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1. 縦型で拡散する!“5秒の動画になる”体験づくり

「昨今の体験は、TikTokやInstagramなどの媒体で、動画として拡散されないと広がらない」と指摘。特に、人々が日常的に利用するストーリーズ(5秒程度)や、短尺動画の「冒頭5秒」で面白さが伝わることが重要だと語った。その5秒に「本当に面白いと思えるものを1つ象徴的につくる」ことを意識している。その例として「イマーシブミュージアム東京」の絵画に没入する体験や、「HI-CHEW MUSEUM」というイベントで、海外のハイチュウを英語で注文する体験を挙げ、動画の表紙になる体験づくりの重要性を強調した。

2. 日常ではできない!“背徳感”のある体験づくり

企業が発信したいことだけを詰め込むのではなく、「せっかく足を運ぶ意味」として「いつかやってみたいけど、自分ではできない」背徳感を重視していると語った。4℃の「匿名宝飾店」では、ショーケースのないディスプレイから、ジュエリーをビュッフェのようにピックアップできる体験を用意したり、「鼻セレブは甘い」というあるあるをヒントに「鼻セレブ味のドリンク」を開発したりと、イベントだからこそできるチャレンジを大切にしていると明かした。

3. SNSやメディアの“見出し”になる言葉づくり

PRプランナーとして最もこだわるポイントとして、「一言で体験を表して、かつ話したくなる」言葉づくりを挙げた。来場者が「〇〇行ってきたよ」と伝えたくなる言葉を意識し、「イマーシブミュージアム」では、AIがゴッホ風の似顔絵を描く体験を「AIゴッホ」という言葉で拡散させた事例などを紹介した。

ファンの“愛”に応え、“タブー”を避ける体験づくり

続いて杉山氏は、自身をオタクと称し、ファン心理を深く分析した体験づくりへのこだわりを語った。

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1. 界隈理解と“愛”のあるこだわり

杉山氏は「中途半端な展示をやられた時、怒りの方が楽しかったより大きい」と、オタクとしての自身の原体験を共有。ファンに「わかってる人がつくってるね」と思われることを重視し、「タブーとかやっちゃいけないことをめっちゃ考える」と語る。シナモロールのイベントでは、シナモンがコンプレックスに思っている「字が下手」という設定を活かし、あえてシナモロールフォントで印字したドリンクを提供。ファンが「コンプレックスなのに、自分のために書いてくれた!」と喜ぶポイントを突いたという。また、JO1の企画では、CDを「推しのために何枚も買う」ファンの心理に寄り添い、CDをトイレットペーパーや歯ブラシといった「日用品」に転換し、ファンが罪悪感なく購入できる設計にしたと言う。

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