AIは創造性を奪うのか、加速させるのか。マヂラブ野田クリスタルが語った「人間に残る想像力」

生成AIの急速な普及により、企画や制作の現場では「人間の創造性はどこまで必要とされるのか」という問いがあらためて浮上している。
 
こうした問題意識を背景に開催されたトークイベントに登壇したのが、芸人でありながらゲーム開発にも取り組むお笑いコンビ・マヂカルラブリーの野田クリスタルと、博報堂が運営するUNIVERSITY of CREATIVITY主宰で、映像・広告・研究領域を横断して活動するクリエイティブディレクター市耒健太郎だ。
 
本イベントでは、「AIと創造性」を大きな軸に据えながら、二人がそれぞれの実体験をもとに、AI時代における人間の役割について語り合った。
12月20日に東京大学駒場キャンパスで実施された、博報堂と東京大学(教養学部)が共同で実施するブランドデザインコンテストBranCo!の決勝プレゼンテーションの間にトークイベントは開催された

12月20日に東京大学駒場キャンパスで実施された、博報堂と東京大学(教養学部)が共同で実施するブランドデザインコンテストBranCo!の決勝プレゼンテーションの間にトークイベントは開催された

AIが進化するほど重要になる「感動の起点」

市耒氏は、AIによって制作工程の効率化が進む一方で、「何を表現として選ぶか」という判断の重要性はむしろ高まっていると語る。映像や広告の仕事において、市耒氏が一貫して大切にしているのが、「自分が感動していないものでは、人を感動させられない」という考え方。

AIは無数の選択肢を提示できるが、その中から何を選び、どう組み立てるかは人間の役割である。そこでは、「自分自身が何に心を動かされるのか」という感覚が、判断の起点になるという。

また、これまで取り組んできたテレビ番組と企業広告の違いにも触れ、テレビは感動を視聴者に届けることが目的であるのに対し、広告は売上やブランド価値の向上という明確なゴールがあると説明。目的が異なればAIの使い方も変わるが、いずれにおいても人の感情を想像し、心を震わせたり、笑わせたりする動力源は代替できないと強調した。

UNIVERSITY of CREATIVITY(UoC)主宰 クリエイティブディレクター・フィルムディレクターの市耒健太郎氏(左)とお笑い芸人の野田クリスタル氏(右)。

UNIVERSITY of CREATIVITY(UoC)主宰 クリエイティブディレクター・フィルムディレクターの市耒健太郎氏(左)とお笑い芸人の野田クリスタル氏(右)。UoCは博報堂が設立した未来創造の技術としてのクリエイティビティを研究・開発・社会実装する専門機関

「できない」からこそ生まれた発想

一方、野田氏はAIやプログラミングとの関わりを、創造性を刺激する実践の場として捉えている。

プログラミングを学び始めた当初、思い通りにコードが書けず、既存のブロック崩しゲームの構造を十分に改変できなかったという。しかし、その制約があったからこそ、「既存の動きをそのまま使い、別の遊び方を成立させる」という発想に至り、スーパーブロックくずして(デッカチャン)の開発につながった。

写真 講演の様子

写真 講演の様子

技術的な限界が、「何ができないか」を明確にし、その結果として「では、何ならできるのか」を考える思考が生まれたという。野田氏はこの経験を通じて、AIやツールの制約もまた、創造性を奪うものではなく、むしろ発想の起点になり得ると語った。

AI大喜利ツールが可視化した「人間の役割」

イベント後半では、野田氏が開発したAI大喜利ツールの実演が行われた。このツールでは、AIがお題の生成や調整を担い、人間はそのお題に対する回答や評価に集中する仕組みが採用されている。

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野田氏によれば、AIにお題作りを任せることで、「どんな問いが面白いのか」「どの条件が発想を引き出すのか」といった設計そのものを考えるようになったという。AIは単なる代替ではなく、「考えるための環境」を整える存在として機能している。

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