クライアントとの共創で突破する
こうしたとがった企画を実現するためには、クライアントの理解と合意が不可欠である。その「通し方」について、近藤氏は企画提案の前に「勉強会」を実施する手法を紹介した。
納期を調整してでも、まずはクライアントとともに様々な広告事例を見て、「面白い広告とは何か」という目線を合わせる期間を設けることで、共犯関係を築くという。北川氏は、クライアントの「クリエイティブ・リテラシー」を信じることの重要性を説いた。森下氏は「どうせ通らないだろう」と作り手が自粛(忖度)して無難な案を出すのではなく、自分が本当に良いと思うものを提案し、粘り強く説明する姿勢こそが、結果としてクライアントに利益をもたらすと語った。
最後に、AIが台頭するこれからの時代におけるクリエイターの価値について議論が展開された。松尾氏は、効率化や合理性が進むからこそ、かえって非合理的なユーモアや人間味のある表現が際立ち、モノを売る力を持つと信じていると述べた。
近藤氏は、広告が生活者だけでなく、その企業で働く「中の人(インナー)」の誇りやモチベーションにつながる重要性を指摘し、インナーブランディングの視点も持つべきだと強調した。データやAIが「それっぽい正解」を瞬時に生成できる時代において、あえて非合理な「異常値」を投げ込み、予定調和を壊すこと。それが、ブランドに人格を与え、生活者との間に強い絆を生む唯一の方法であるとの結論に至った。

