ABEMA Primeチーフプロデューサー・杉原啓太氏に聞く、新時代の「選挙報道と番組づくり」

近年、選挙の在り方が変わっている。有権者の接触するメディアが多様に広がり、インターネット、特にSNSの情報の影響力が大きく指摘されるようになってきた。フェイクニュースの拡散など、負の側面も指摘される一方で、より多くの人にとって政治を自分ごと化するきっかけにもなりうるという正の側面も見えてくる。

その環境下で、2016年から番組がスタートしたABEMA Primeはインターネット報道番組として、その活動に期待が集まっている。同番組で扱うのは政治だけでなく、社会課題やスポーツなど多岐にわたるが、先の参議院議員選挙期間中には、「東京選挙区討論会」などの討論企画や各党の代表に話を聞く「政党研究」も実施。ABEMAアプリやサイト上だけでなく、YouTubeでも視聴され、従来のテレビ局をはじめとするマスメディアとは一線を画した選挙報道が注目された。

ABEMA Primeはどのような考えのもと、制作されているのだろうか。選挙報道を入り口に、選挙以外の政治・経済・社会課題に対して、報道番組として向き合う姿勢について杉原啓太チーフプロデューサーに聞いた。

※本記事は情報、メディア、コミュニケーション、ジャーナリズムについて学びたい人たちのために、おもに学部レベルの教育を2年間にわたって行う教育組織である、東京大学大学院情報学環教育部の有志と『宣伝会議』編集部が連携して実施する「宣伝会議学生記者」企画によって制作されたものです。企画・取材・執筆をすべて教育部の学生が自ら行っています。
※本記事の取材は教育部修了生の野崎佳奈子、教育部所属の大槻育子、吉見泰輔が、企画・取材・執筆は教育部所属・石崎正文が担当しました。

テレビ朝日 報道局 クロスメディアセンター兼 AbemaNews ABEMA Prime チーフプロデューサーの杉原啓太氏。

「テレビだからできない」わけではない!? あくまで違うのは番組のコンセプト

━━ネット配信の番組と言えば、ドラマやバラエティなどのエンタメが中心と思います。そのなかで、ABEMAが報道番組をつくる理由について教えてください。またABEMA Primeの番組のコンセプトについてもお聞かせください。

ABEMA Primeは、ABEMAのニュースチャンネル内で無料配信されている番組のひとつで、21時から23時まで平日週5日生放送しています。番組のコンセプトは「みんなでしゃべるとニュースはおもしろい」で、1回の放送につき、大きく3つのトピックについてスタジオの出演者同士で語っていただく構成になっています。多様な考えを持つ方たちが集まり、あまり難しく考えすぎずに自分の視座から「どういう社会にしたいか」ということを、井戸端会議のようにおしゃべりしてもらっています。

例えば、政治に関する話題は、ニュースなどで触れることはあっても、日ごろ、友達同士で会話するかといったら、少し躊躇してしまったりもすると思います。だからこそ、「みんなでしゃべる場」をつくる、ことに意味があると考えています。

出演者は芸人やギャル、タレントなどから、大手企業の社長、政治家などと幅広く、出演者の多様さが番組の魅力です。こうした人たちが一緒の場でお話しするキャスティングは、確かに地上波のニュース番組とは毛色が違うと思います。

━━こうした番組は、地上波ではできないことなのでしょうか。ABEMA Primeだからできることなのでしょうか。

ABEMA NEWSは、テレビ朝日が委託を受けて制作しているので、基本的にテレビ朝日の報道番組と変わらない基準で制作しています。ネットだからといってそのルールを逸脱することはなく、テレビ朝日の放送基準でできることをしてきました。

ただ、石崎さんはABEMA Primeは地上波の報道番組と違うと感じていただいているのですよね。例えば、地上波のニュース番組だと5分ぐらいで終わってしまうニュースについても、ABEMA Primeは取り扱うトピックを3つに絞り、それぞれ30分ぐらいかけて取り上げています。それが視聴者の方にとっての地上波との違いに映っているのかもしれません。

番組のスタジオトークは、お互いの意見を交わすような議論だけでなく、ニュースに関わる当事者の方をスタジオに呼んで直接話を聞いて、考えるという形で展開する企画もあります。例えば犯罪被害に遭った方、過去に罪を犯した方などをお呼びし、疑問を投げかける。より“生の取材”に近い形を視聴者の皆さんと一緒に体験するような仕組みです。自分自身は、テレビ朝日に入社をし、ABEMA NEWSに異動する前までは、記者として報道に関わってきました。現場での取材をまとめてVTRや記事にする作業ですが、時間の関係で実際の放送からは落とさざるをえない部分、合間の雑談、会話の余白やちょっとした語感などから、よりその方の本音が見えてくるようなことは何度もありました。取材体験をそのまま、視聴者の方と共有することで、共により深く社会課題について考察できるのではないかと考えています。

当事者の人に直接話を聞いてみたり、意見が異なる人と議論してみたりすると、自分自身も、番組のコメンテーターも、放送後には「考えが変わった」となることもよくあります。これがこの番組の面白さでもあると思います。SNS分断の時代、語り合うのは時に億劫になりますが、意見が合わないと思っていた人の価値観も、ちゃんと冷静に耳を傾けてみれば、相手の気持ちも理解はできたりするんだ、と。「自分の隣にいても、あまり話したくないな」「気が合わなさそうだな」と思ってしまう人であっても、毛嫌いせずにその人と向き合って話していくことが大事だと思うので、それを番組として実現できたら良いなと思っています。

コンテンツ特性という点でも、地上波テレビとは違うところがあると思います。インターネットで配信する強みは、ストック型のコンテンツとして、長く視聴していただける点です。古いものだと5年も前の企画であっても、いまだに多くの方にご覧いただいているものもあります。ニュースは、どんどん内容が更新されていくような速報性はもちろん大事ですが、インターネット上では「あした見ても面白い」と長く見てもらえることも大事です。それが地上波のニュースコンテンツとの違いだとも言えます。ABEMAやYouTubeのなかでアーカイブしていき、ABEMA Primeをいつでも楽しんでもらえるような環境をつくっています。

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