「水と広告。それから人間。」サントリー天然水から見るブランディングの本質

「広告を考えること。それは人間のこと、生きることを考えることである」。セッション後半で語られたこの一言に、全てが収束され、広告の真髄だと気付かされた。

この記事では、「サントリー天然水」や「そうだ京都、行こう。」のCMを手がける太田恵美氏と東畑幸多氏によるセッション「もし『ブランディング』を口にするのなら。」(虎ノ門広告祭6日目開催)をもとに、その言葉にたどり着くまでの道のりを紐解いていく。
※取材・執筆は、虎ノ門広告祭 学生記者の中澤武建が担当しました。

「『ブランディング』を口にする」前に

セッション冒頭、東畑氏はこれから話したいこととして、「ブランディングはよく口にされる一方で、ブランディング以前に、もっと考えるべき大切なことを伝えたい」と切り出した。

その重要性を感じたきっかけが、2013年から携わる「サントリー天然水」の仕事だ。東畑氏は「水」を「面白くて、不思議なもの」、太田氏は「究極の嗜好品」と表現する。なぜなら、水はペットボトルからコップに移し替えれば、それがどこのブランドであるかわからなくなるからだ。つまり、他の飲料CMで見られるような、タレントが登場して「おいしい」と言うだけでは、消費者に天然水の真の価値は伝わらない。

そこで二人は「命と大自然を繋ぐ」というテーマにたどり着く。キャッチコピーやパッケージデザインもさることながら、商品そのものがもつ世界観や、もっと根源的で人間的な部分に焦点を合わせたのだ。

左から東畑氏、太田氏

ブランド作りは足元から

天然水に携わり始めた2013年、天然水は大きな試練に直面した。競合から、たたんで捨てやすいペットボトルが発売され、シェアを奪われたのだ。水源ではなくエコ容器という新しい価値が注目され、消費者の購買行動が変化したためである。

天然水もサステナブルな価値を押し出したキャンペーンを展開したが、思うような成果は出なかった。東畑氏はこの状況を「競合を意識しすぎた結果」だと振り返る。この経験を機に、まずは天然水ブランドの足元の価値を知ることから始めた。具体的には「そもそも天然水はなぜ選ばれているのか」「ファンが描く天然水の原風景はどんなものか」を調査し、言語化した。その結果、ブランドのコアバリューは「命と大自然を繋ぐ」ことだと初めて気付いたのだ。

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