楽天インサイトが再設計する「インサイト産業」の役割

マーケティングリサーチの結果が、必ずしも意思決定やマーケティングアクションに直結しない─そんな課題意識が聞かれるようになってきている。調査を、意思決定とアクションに“使い切る”ために、何が足りないのか。楽天インサイトは、調査を単なる情報収集で終わらせず、判断と実行に並走する存在へと進化させるべく、インサイト産業の役割そのものを見直す必要性を強く感じている。その背景にある考え方と、具体的な取り組みを楽天インサイト AIソリューションズ部の伊藤暖氏に話を聞いた。

なぜリサーチは、意思決定に使いづらくなったのか

現在のマーケター、プランナーはかつてないほど多くのデータに囲まれている一方で、「判断に使える実感が持てない」という声も少なくない。

その背景にあるのは、分析負荷の問題のみではない。扱っているデータそのものが、生活者の実態や文脈にどこまで迫れているのか。その点が、意思決定の質を左右する要因として、改めて浮かび上がってきている。さらにマーケティングアクションのスピードが高速化するなかで求められるリードタイムの短縮化もある。

調査を実施した後、集計、分析、資料化といった工程が続く。これらは欠かせない一方で、どうしても作業負荷が先行しがちだ。その結果、本来時間をかけるべき仮説検討や選択肢の比較、次の打ち手を考えるフェーズが後回しになってしまう。楽天インサイト AIソリューションズ部 部長の伊藤暖氏は、「マーケターが大量のデータとその分析作業に追われ、意思決定に向き合う十分な時間は取りづらくなっている。こうした構造を変えなければ、リサーチは企業の意思決定に活用されなくなっていくと感じていました」と語る。

そこで同社が課題として捉えたのは、「リサーチ活用プロセス全体の効率化」と、情報があふれる今の時代だからこそ改めて集計結果の背後にある思考や行動の文脈に迫る「『現地現物』で生活者を理解することの重要性」だ。同社は、楽天市場、楽天モバイル、楽天カードなど70超の事業を展開する楽天グループの一員として、約220万人のアンケートモニターをはじめ、生活者の行動・意識に関する多様なデータを基盤にマーケティングリサーチを提供してきた。さらに近年、楽天の持つAI開発・活用を中心とした技術知見を積極的に取り入れ、そこにシニアリサーチャーのノウハウ・知見も合わせ、先述の課題解消に向けたサービス開発を進めている。

「楽楽リサーチャー™」

この課題に対する取り組みの中核となっているのが、「楽楽リサーチャー™」だ。調査結果の整理、要点抽出、論点の可視化といった工程をAIによってアウトプットすることができる。これにより、分析・解釈にかかる負担を大幅に軽減する。

さらには、調査全体を振り返りながら、「次に検討すべきアクションは何か」といった内容を、AIアシスタントへ投げかけることでブラッシュアップすることが可能だ。調査を意思決定や施策検討に接続するための“相談相手”として活用されている。

利用した広告会社からは、「操作が直感的で、ボリュームの多い調査でも全体像を素早く把握でき、考察や次に取るべきアクションの検討に時間を割くことができた」といった評価を得ているという。現在は調査後工程の支援に特化しているが、今後は調査プロセス全体を見据えた支援へと広げていく考えだ。

「楽楽プロファイル」

「楽楽プロファイル」は、都度実施した調査結果と大規模な価値観データ(アスキングビッグデータ)をもとに手軽な操作でターゲットプロファイルを作成できるサービスだ。

「当社サイトでもご紹介していますが、大手食品メーカーさまからは『カテゴリに対して新たな提案をする新商品の商品設計やコミュニケーション検討において、作成したプロファイルが有効だった。結果として、シーズンの売れ筋商品につながり、今では戦略検討に欠かせない存在だと感じている』といった評価もいただいています」(伊藤氏)。

さらに準備を進めているのが、「楽楽プロファイル」で作成したターゲットをAIで擬人化し、インタビューができる機能だ【図表】。

図表 楽楽プロファイル図表 「インタビュー機能」(26年2月リリース予定)

図表 楽楽プロファイル図表 「インタビュー機能」(26年2月リリース予定)
「アンケート結果」と「大規模価値観データ」をAIが融合し、ターゲットを「擬人化AI」として具現化。このAIとの対話から、顧客の深層ニーズをダイレクトに引き出し、これまでにない革新的なアイデアを創出する。

擬人化したAIへのインタビューを提供するサービスは世の中に増えつつある。楽天インサイトでは、「どのようなデータをもとに擬人化AIが構築されているか」が、意思決定への使いやすさを大きく左右すると考えているという。「マーケティング課題に沿って取得した都度の調査結果」と「アスキングビッグデータという多面的な価値観データ」を用いて、カスタマイズした擬人化AIを構築できる点が同社の強み。これにより、アイデア創出や施策検討に耐えうる、実践的な対話を可能にしている。

「AIチャットインタビュー」

意思決定につながるリサーチを実現するには、調査結果をどう使うか以前に、いかに生活者の実態に近付けているかが問われる。現場に足を運び、実際の声や行動に触れる「現地現物」は、本来インサイト発見の出発点だった。しかし、意思決定のスピードが求められる一方で、時間・人手・コストといった制約が増すなか、その実践は難しくなっている。

「AIチャットインタビュー」は、こうした制約下でも「現地現物」の価値を再現するための調査手法だ。AIがモデレーターとなり、短期間で数百人規模の生活者と対話することで、個々の文脈に根ざした深い声と、全体の傾向を同時に捉えることができる。選択肢設計に依存しがちなアンケートでは把握しづらいカテゴリーエントリーポイントや利用実態も、恣意性を抑えた形で浮かび上がらせることができる。さらに、対面では引き出しにくい感情や葛藤、言語化されていない本音に触れやすい点も特長だ。現地に行かずとも、生活者の思考や行動の「現場」に近付く「AIチャットインタビュー」は、スピードと制約の時代における、現地現物を補完・拡張する実践的なアプローチとして位置付けられている。

調査は実施すること自体が目的ではないと伊藤氏は語る。「得られた情報が判断に使われ、アクションにつながって初めて、ビジネスを前に進める力になる。当社は、AIと人の知見を掛け合わせながら、マーケティングリサーチを意思決定、マーケティングアクションの推進力へと進化させる取り組みを続けています。『インサイト産業』の役割は今、調査結果のその先までを見据えるフェーズに入っていると感じます」。

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伊藤 暖氏

楽天インサイト
AIソリューションズ部 部長

お問い合わせ

楽天インサイト株式会社

E-mail:research-sales@mail.rakuten.com
URL:https://insight.rakuten.co.jp/


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