五輪・W杯級モーメント“大学駅伝”のブランディング戦略 アディダスの意味ある壁探し

アディダスジャパンは、正月恒例として100年以上の歴史を持つ東京─箱根間で開催される大学駅伝の開催に合わせて、コース沿いのビル壁面を活用した大規模な屋外広告プロモーションを実施した。これは、アディダスが2024年から推進する「意味のある場所(メディア)を活用したブランディング」を進化させたものである。規制や施工の困難を乗り越えて掲出に至った本施策は、どのようにして実現したのか、関係者に取材した。

左からアディダス ブランドシニアマネージャー 加藤美侑氏、アディダス メディアアクティベーションシニアマネージャー 山野邊普人氏、三井不動産 イノベーション推進本部プロジェクトリーダー 高橋正和氏、アディダス ブランド/メディアディレクター 福田新氏

五輪・W杯に匹敵するスポーツモーメントの新春大学駅伝

アディダスにとって大学駅伝は、単なるスポーツイベントではない。オリンピック、ワールドカップやワールド・ベースボール・クラシックに匹敵する視聴率を誇る国民的行事であり、ブランドの認知度を保ち、ファンとのエンゲージメントを深めるための重要なモーメントと位置づけられている。

同社は長年、ランニングシューズの製品開発や大学陸上部とのパートナーシップを通じて大学駅伝関わってきた。特に、ブランドコミュニケーションズ部門が主導する現在の取り組みは2024年から本格化した。この戦略転換はすぐに成果につながった。2025年の箱根駅伝では、出場選手のシューズ着用率でアディダスが1位を獲得した。

2025年大会に向け、タワーレコード渋谷店やMIYASHITA PARKフラグシップアディダスストアに掲出されたグラフィック。青山学院大学の黒田朝日選手と塩出翔太選手のチームメイトとしての連携を訴求する

こうした活動の根底には、「YOU GOT THIS(大丈夫、いける。)」という一貫したブランドメッセージがある。アスリートの背中を押し、応援する人々の気持ちを可視化することで、ブランドへの共感を醸成することを目指している。

ストーリーのある壁を探す

アディダスのブランドキャンペーンの特徴は、そのメディア戦略にある。特に2024年のパリ夏季五輪以降、アディダスのコミュニケーションチームは既存の広告メニューに依存しない、「意味のある場所(メディア)」を自ら探し出すアプローチを強化してきた。

アディダスのブランドコミュニケーションを統括する福田氏は、「強い映像やビジュアルのクリエイティブを通して、幅広いターゲットの方に見てもらい、アディダスのメッセージを知ってもらう活動」と「驚きやインパクトと共に、アディダスを好きになってもらうための活動」の二軸が重要だと語る。

この思想から生まれたのが、チームが「壁部」と自称するほどのマーケティング活動である。広告を掲出する場所を、人通りが多いという基準のみで選ぶのではなく、選手の母校や地元の商店街といった、ストーリーが宿る「意味のある場所」を探し出す。その手法はGoogleマップなどのツールを駆使したり、自らの足を使って候補地をリストアップし、現実に掲出するための交渉ルートを一から切り開くという、極めて地道なものだ。

このアプローチは、2025年の新年に行われる大学駅伝のプロモーションでも採用された。アディダスのパートナー大学である青山学院大学と國學院大學のキャンパスがある渋谷で適した壁を探していたチームは、偶然にも解体工事中で視界が開けたビル壁面を発見。メディアプランニングを担当する山野邊氏は「地権者を調査し、交渉の末に巨大広告の掲出を実現させた。メニュー化されていない場所だからこそ、それは街ゆく人々に強烈な印象を残しました」と振り返る。

2025年大会での國學院大學をフィーチャーした広告。タワーレコード渋谷店近くのビル壁面を活用した

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