メイン講師を務める電通の阿部広太郎さんと、ゲストにNASUの前田高志さんを迎え、自身の経験に基づいたリアルな話が展開されました。
「今もまだ伸び悩んでいる」トップクリエイターの告白
前田: 本日のテーマは「伸び悩み」。正直に言うと、僕自身も今まさにめちゃくちゃ伸び悩んでいます。それは目標が一つ一つ変わっていくからなんですよね。年末の忘年会で、1年間の仕事をみんながプレゼンする機会があったんですけど、周りの実績がすごすぎて…。ADCでグランプリを受賞したような人もいて、ついつい自分と比べてしまって落ち込みました。
ただ、そんな気持ちを抱えていること自体が大事だと思っていて、今日は生々しい話をしていきたいです 。
阿部: その感覚、すごく分かります。私自身「もっとできるようになりたい」という自分への期待が常にあります。少しできたかなと思っても、一方で「まだしゃがんでいる状態だな」と感じることもある。それは今でも感じることなので、前田さんのお話にはとても共感します。
クオリティのムラ、不足感、敗北感。打開策は?
前田: 今回、自身のデザイナー人生を振り返ってみて、「伸び悩み」の課題を3つに分けてみました。
まず、20代の頃にずっと課題だったのは、「仕事におけるクオリティのムラ」です。うまくいく時といかない時の差が激しい時期でした。2つ目は「不足感」。何を作ってもほかのデザイナーにセンスで負けている感覚がありました。3つ目が、自己紹介で語れる実績を生み出せていない「敗北感」です。
阿部:それらをどうやって打破していったんですか?
前田:当時は書籍を読んだりイベントに参加したりと、インプットに注力しましたが、結局は身近な人からの影響が最も大きかったと感じています。
僕の上司はコピーライター、プロダクトデザイナーだったので、彼らから様々な影響を受けたと思います。中でも特に印象的だったのが、とある印刷会社の方との出会いです。その方の仕事へのこだわりや熱量に、とても大きな影響を受けました。
阿部:私も同じで、やはり人からの影響が一番大きいですね。過去に自分が変わることができた瞬間や、モヤモヤを突破できた時を思い出すと、そこにはいつも人がいました。
前田:つまり、伸び悩みを打破する答えは「人と交わること」。それに尽きると思います。
阿部: 「人と交わる」ことは、「刺激にダイブする」と言い換えられると思います。変化を待っていても何も始まらないので、自ら刺激的な環境に飛び込んで、自分を変えていく。私の場合は「講座に通う」ことでした。宣伝会議の講座や会社の研修に積極的に参加し、さらに「賞レースやコンペに挑む」ことにも取り組みました。そして、それらの活動を「SNSで発信する」。この3つの行動を実践していました。
2010年にコピーライター養成講座に通っていたとき、講座の同期から「電通なのに大したことないね」と打ち上げの席で発破をかけられたことがありました。悔しさをバネに取り組んだ宣伝会議賞でも結果が出なくて、さらに悔しくて、その翌年に2223本のコピーを書いて協賛企業賞を受賞しました。「本数をたくさん書こう!」と言いたいわけでは決してなく、それだけ「この状況をなんとかしたい!」という気持ちが強かったですね。
前田: 2223本!数字で語れるっていいですよね。ちょっと先の自分を見せてくれるような人と出会う。それが重要なんだろうな。
活躍する人は「応援される人」
阿部: 活躍している人の共通点って、「周りから応援されている人」だと思うんです。なぜそうなるかというと、主体的に動いているときに、きちんと「報告・連絡・相談」ができているから。それを見た周囲が「頑張っているな、力になりたいな」と思う。オンラインが増えた今だからこそ、おもいきって「ぶっちゃけこんな風に思っているんです」と本音を伝えることで、心の距離が近くなるんじゃないかなとも思います。この「見つかりにいく努力」が大切だと思います。
前田: デザイナーで言えば、「素直さ」は最強ですね。教えられたことを次の日にはもうやってくるような子。それから、若いデザイナーを見ていて良いなと思うのは「作り方を固定観念で考えないこと」です。どうやって作るの? とワクワクさせるような、予定調和を崩す感覚ですね。
私がもらった中で、一番心に残っている言葉に「自分を知らないと良いものは作れない」というものがあります。自分の強みや弱み、何に価値を感じるかを知ることが大切です。私自身、10年かけて考え続けて、ようやく今の自分があると思っています。
今、伸び悩んでいるあなたへ
阿部: 毎日の小さな選択の積み重ねが今の私たちを作っています。今日この瞬間から何を選んでいくか、それでこの先が変わっていきます。伸び悩んでいる状態は「自分に光が当たっていない状態」とも言えますが、斜に構えるんじゃなく、「あそこにチャンスがあるなら行ってみよう」と素直に光を浴びに行く姿勢を持てるといいと思うんですよね。
前田:伸び悩んでいる人へのアドバイスとして伝えたいのは「考えること」。ただし、1人で考えるのではなく、多様な視点を持つ人と意見を交わしたり、一緒に何かを作ったりしながら考え続けることが重要です。
僕は、「イノベーションが起こる状態にすること」がクリエイティブだと定義しています。僕自身、心地よいコンフォートゾーンを抜け出し、あえて厳しい環境に身を置いたり、すごいと思う人と接するようにしたりしています。
阿部: そのために有効なのが「コンビを組む」ことです。私自身、状況を打破できたのは誰かと組んでからでした。「アートとコピー」の講座では、毎回事務局が指定をするコンビで、企画をしていきます。
前田: クリエイターって、どこかシャイなところがあるじゃないですか。でも、僕も阿部さんも、今この瞬間だってレベルアップしたいと思って、あえてへこむような場所に足を運んだりしている。現状の自分に満足せず、もがいている。そんな人が一歩踏み出して、心地いい場所を抜けてチャレンジすること。その行動自体が、もう「伸び悩み」を打破し始めているんだと思います。
阿部: 本当にそうですね。ボコボコになりながらも進む。諦めない。そうすることでつかめるバトンがある。私はこの広告業界で、諸先輩方にたくさんのことを教わってきました。だからこそ、今度は自分がこの「アートとコピー」という場を通じて、皆さんにそのバトンを渡せたらと思っているんです。
前田: 何者でもない状態からでも、まずは参加してみる。それ自体が素晴らしいことだし、その勇気があれば、あとは勝手に転がっていくはずですから。
阿部: 「アートとコピー」は、まさに「人が化ける瞬間」を目撃できる場です。そのきっかけとなる舞台は全力で用意しました 。あとは、皆さんのなかに少しでも「くすぶっている思い」があるなら、ぜひそれを信じて飛び込んできてください。皆さんにお会いできるのを楽しみにしていますね。
コピーライター養成講座×アートディレクター養成講座
「アートとコピー」 阿部広太郎クラスとは
第6期「アートとコピー」が2026年3月7日(土)から開講します。この講座は、コピーライターとデザイナーが毎回別のコンビを組み、課題に取り組む全8回のクラスです。ときには、制作したクリエイティブを全員で審査し、コンビ同士で競い合うこともあります。より成長したいと考えているデザイナー、アートディレクター、コピーライター、プランナーの方々におすすめです。

開講日:2026年3月7日(土)19:00~21:00
講義回数:全8回。月1回の土曜開催
開催形式:教室とオンラインを各回自由選択できるハイブリッド開催
定員:40名(コピーライター枠20名、デザイナー・アートディレクター枠20名)
※お申し込みにはポートフォリオの提出が必要です。
※人数次第で事前選考があります。
エントリー締め切りは2026年2月16日(月)18:00までです。詳細・お申込はこちらから



