静岡パルコで発売、学生チームが生んだ治一郎新作「ベリー・グレイ」開発の裏側

常葉大学(静岡市)経営学部のマーケティング・マネジメントゼミは、バウムクーヘン「治一郎」で知られるヤタロー(浜松市)との産学連携プロジェクトを通じて、新製品パン「ベリー・グレイ 〜もっちり食感と紅茶の上品な香り〜」を開発した。Z世代の学生19人が主体となり、2025年4月から商品コンセプト開発、試作品づくり、ネーミングまでを考案し、2026年2月9日より治一郎静岡パルコ店での発売を実現させた。

産学連携によるマーケティング実践の場

本プロジェクトでは、常葉大学経営学部マーケティング・マネジメントゼミ(担当教員:野田昌太郎准教授)の教育理念がある。野田ゼミでは、マーケティング活動において最も重要とされる新製品開発を通したマーケティング・マネジメントを研究の是としており、その実現には企業との連携が必須であると考えている。

この理念に基づき、ゼミでは2年生の後期に学生が4〜5のチームに分かれ、産学連携を希望する企業を自らリストアップし、担当教員が協力依頼を行うというプロセスを踏む。今年度は治一郎を学生がリストアップして野田准教授が打診。ヤタロー治一郎事業部も、学生からの提案内容に「社内のリスキリングにもつながる」という価値を見出したことにより、共同研究の実現に至った。

治一郎はバウムクーヘンで知られるが、一部店舗ではベーカリーも展開しており、その製造基盤がプロジェクトの素地となった。この連携は、大学が掲げる教育理念「地域貢献」を体現するものであり、学生が地域経済の活性化を目的として、研究費の拠出を伴う形で県内企業に働きかけ、企業がその希望に応える形で成立したものである。

「約束されていない環境」から生まれる学びの本質

野田准教授は、30年以上にわたり企業の製品開発を支援してきた実務家教員としての経験から、ゼミ運営において厳しい環境設定を重視している。それは、「千三つ」とも言われる新製品開発の困難さを学生に体感させるため、あえて「製品化されることを約束されていない環境」を提供することである。連携先企業との契約時には、チーム制で1チームのみが選抜されるか、あるいは全チームが不採用となる可能性もあるという、シビアな状況を設定する。

ゼミの具体的な活動にもこの考えが反映されている。経営学部という文系学部にありながら、考案したコンセプトに基づき、学外のキッチンを借りて実際にプロトタイプを製造することを必須としている。この試作過程で、学生は想定内の小さな成功と多種多様な失敗を経験する。野田准教授は、「この失敗体験こそが、提案内容の昇話と学生たちの成長につながる」と学生の成長を見守っている。

商品化にあたり学生が特に苦労したのは、設定したペルソナの理想を、製造・販売可能な形に落とし込むことだった。SNSでの見栄えを重視する一方、材料や工程といった現実的な制約との間で葛藤があったという。試作を重ねながら、見た目・味・作りやすさの最適なバランスをチーム内で何度も議論し、「どこまでこだわり、どこで妥協するか」を一つひとつ見極めていくプロセスは、まさに実践的な学びの場となった。

学生たちが学外のキッチンでパンのプロトタイプを制作している様子

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