競合分析・ペルソナ設計をAIで内製化 日立システムズが実践した「AI駆動型BtoBマーケティング」

日立システムズはAI活用ソリューションを提供するガラパゴスと協働し、マーケティング戦略の再構築に取り組んでいる。従来のプロダクトアウト型アプローチの限界を乗り越え、マーケットインサイトを基盤とする「AI駆動型プロセス」へ変革することで、BtoBマーケティングにおけるPDCAの高速化と持続的成長の実現を目指す。
 
2月4日に開催した「ビジネスプロセスから紐解くデジタル/AI戦略カンファレンス」(宣伝会議主催)では、日立システムズの山本瑛安氏とガラパゴスの大黒田健人氏が取り組みの詳細を紹介した。

従来型BtoBマーケティングの構造的課題

プロダクトアウト型に起因する課題

プロダクトアウト型に起因する課題

日立システムズは、好調な業績を維持する一方で、人手不足や高齢化による労働力減少といった環境変化の中、成長を継続するには「戦略サイクルの再定義」が必要だと捉えた。山本氏は、同社の営業が「お客様一人ひとりの課題を聞き、オーダーメイドのように解決策を提案する」点を強みとして挙げる。ただしこの強みは、既存プロダクトを起点とするプロダクトアウト型を前提にしやすい。

一方、デジタルチャネルを活用したマスマーケティングでは、まだ対話したことのない不特定多数の顧客層にも届ける必要があり、個別最適の提案だけでは成立しにくい。そこで山本氏は、市場ニーズを先に捉えるマーケットイン型への挑戦を開始した。

日立システムズ 営業統括本部 企画統括本部 デジタルマーケティング推進本部 主任 山本瑛安 氏

日立システムズ 営業統括本部 企画統括本部 デジタルマーケティング推進本部 主任 山本瑛安 氏

山本氏は、プロダクトアウト型に起因する課題として「市場ニーズの不一致」「施策の場当たり化」「ターゲットの曖昧さ」を挙げる。企業側の構想や技術が前面に出ることで「選ばれない」施策になるリスクがあるほか、市場理解が浅いまま単発施策が増えて持続成長につながりにくい。実際に「メルマガを打ちたいと言ってから考え始める」ような状況が起きやすく、一定の筋は通っても次のサイクルにつながりにくいという。また顧客起点のセグメントやペルソナの精度が上がらず、結果として「刺さらない」コミュニケーションを生むという課題もあった。

日本市場特有の構造を踏まえたAI戦略

ガラパゴスはAI活用にあたり、日本市場を「ローカル」として捉える視点の重要性を強調する。終身雇用・年功序列の文化が根強く解雇規制も厳しい日本では、欧米のように「成果が出ないから切る」という判断を取りにくく、人件費調整もしづらい。そのため、AI導入のROIを単純な人員削減ベースで評価しにくい構造になっている。

大黒田氏は、欧米ではAI導入=コスト削減(人員削減)が導入動機になりやすい一方、日本では「人を切れない」ため、人手不足の補完や品質向上、働き方改革が導入理由になりやすいと分析する。こうした特性を踏まえ、両社は省人化よりも人材の付加価値向上を重視し、「人を活かすAI」を軸に据えた。

マーケットインサイト基盤の構築

マーケットインサイト基盤を中核に据えた戦略サイクル

マーケットインサイト基盤を中核に据えた戦略サイクル

両社が構築したAI駆動型プロセスは、マーケットインサイト基盤を中核に据えた戦略サイクルで構成される。基盤ではAIを活用し、競合分析、ペルソナ分析、課題分析を実施。競合の強みや訴求を整理してポジションを明確化し、市場調査をもとにターゲットを抽出し、解像度の高いペルソナを設計する。加えて現状の戦略・施策の課題を分析し、次の戦略設計の土台をつくる。

ガラパゴス AIR Design for Marketing事業部 執行役員 CMO 大黒田健人 氏

ガラパゴス AIR Design for Marketing事業部 執行役員 CMO 大黒田健人 氏

戦略設計では、ターゲティング、訴求開発、ポジショニングを実施。誰に届けるかを明確にし、ペルソナに刺さる訴求を開発して再現性の高いマーケティングを目指す。施策実行/分析では、設計した戦略にもとづいてマーケティングオペレーションを実行し、結果を分析してマーケットインサイト基盤へフィードバックする。

企業の強みの言語化と市場セグメント分析

具体的な実装の第一歩は、日立システムズの「強みの言語化」だった。情報の信頼性を重視し、インプットは同社公式ホームページのみに限定。外部ソース混在による精度低下を避け、根拠はインプット範囲にとどめるよう指定した。分析の結果、強みとして「IT基盤の中核業務代行力」「現場密着の業務改善」が導出され、各強みに客観的ファクトと関連事例が紐付いた。

続いて市場分析により顧客企業群を複数のセグメントに切り分け、セグメント別に自社の強みを整理。意思決定者のペルソナ分析やカスタマージャーニー設計も行った。AIによる詳細な競合比較表も作成し、例えば「DX遅れの家族経営中小卸売業」をターゲットとした場合、操作の簡単さ、導入支援度、段階導入、業務効率化、失敗リスク、規制対応など10以上の項目で比較。各項目に5段階評価と根拠を示し、ターゲット特性に応じた競争優位性を可視化した。別ターゲットではポジショニングマップを作成し、競合各社の位置づけを明確にした。

オペレーティブAIの実装モデル

ガラパゴスが提唱する「オペレーティブAI」は、チャット型AIやAIエージェントと異なり、「設計通りに動くAI」として複数業務を事前設計した手順通りに実行する。設計外の動作をしないため、セキュリティやガバナンス要件を満たしやすく、企業固有のオペレーションにも最適化しやすいという。実装ではスプレッドシートの裏側に複数のAIプロンプトチェーンを構築し、ユーザーはシート上で作業するだけで、裏側で複数AIが同時に動作し大量情報を処理する仕組みとした。

山本氏はAI活用を「二つのギア」で捉える。ひとつは販売戦略を練るために、カスタマージャーニーや訴求を設計する“大きいギア”。もうひとつは、メルマガ原稿やWebページ構成、イベントタイトルなどを生み出す“施策のギア”だ。重要なのは、施策の結果を大きいギアへ戻し、PDCAを回せる仕掛けにすることだという。

AI導入で変わる、人の役割

「表側」と「裏側」のAI活用

「表側」と「裏側」のAI活用

山本氏は、AIとの協働を通じて「パワーをかける場所が変わった」と振り返る。当初はAIに適切なインプットを渡せるか不安だったが、「ふわふわしたインプット」でも、アウトプットに対して修正を重ねれば1週間後には前進した成果が得られた経験が転機になった。マーケティングは仮説で進める領域が多く、市場と合っているかは試さなければ分からない。ならば可能性はAIに出させ、人が調整してスクラッチとリテイクを早く回した方が良いという。

大黒田氏は、広告運用やSNSといった“表側”でAI活用が進む一方、競合調査、広告表現チェック、需要予測など“裏側”こそ答えを導きやすく、AIに任せるべき領域だと指摘する。その分、スピーディーな意思決定やクリエイティビティが求められる領域には、人がこれまで以上にエネルギーを割くべきだという考えを示した。

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