ブランドの事業成長に求められるインサイトの再定義とパブリックインサイトの見極めとは

大広は1月23日、「事業成長を実現する顧客との向き合い方 インサイトの再定義とパブリックインサイト」と題したセミナーを宣伝会議本社で開催した。ユニリーバ・ジャパンのピーターズ花蓮氏、大広の飯田瞬氏、デジノベーションの伊藤友博氏が登壇。社会が目まぐるしい変化を遂げる今、ブランドの事業成長に必要な動きとは何か、3部構成で新たなアプローチを探った。

行動が伴ってこそ、ブランドメッセージは伝わる

世界最大級の消費財メーカー・ユニリーバの「ダヴ」は60年以上、「あなたらしさが美しさ」のブランド理念を一貫し、美しさが女性一人ひとりの自信につながる概念となることを目指し、製品販売以外の活動にも尽力している。ピーターズ氏は、ユニリーバ・ジャパンでダヴのセルフエスティームプロジェクトを担当。若者に自信を与え、可能性を最大限発揮できる環境を作ることを使命とした自己肯定感教育を行っている。

ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング マーケティング パーソナルケアビジネスパフォーマンス ブランドアシスタント ピーターズ花蓮 氏

ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング マーケティング パーソナルケアビジネスパフォーマンス ブランドアシスタント ピーターズ花蓮 氏

ダヴは、ブランドDO・SAYという2つの枠組に分けて活動を実施している。DOはダヴが社会に届ける体験で、自己肯定教育の現場での授業など実践的な活動を指す。一方、SAYはブランドのメッセージ発信を指すという。両方を重要視する理由としてピーターズ氏は、消費者は言葉だけでなく行動を通してブランドに信頼を持つと考えているからだと話した。DOの実際の活動として最も大きいプログラムが、ガールスカウト日本連盟と共同開発した「Free Being Me」で、社員が出向いて自己肯定感を高める授業を行っている。

SAYに関しては、全年代の女性に向け、美の基準に対するブランドメッセージをキャンペーンで発信しているそうだ。2000年代は、写真の加工技術の普及に伴って美の基準が固定化され、広告でも見た目が似たモデルの起用や加工で見た目を近づける動きが強い時代。当時、ダヴは独自の調査で「自分は美しさの基準を満たしている」と感じる女性がわずかということを認識し、その現状を変えるべく一歩踏み出したのがリアルビューティキャンペーンだとピーターズ氏は話す。

「あなたらしさが美しさ」というメッセージで広告を打ち出し、固定的な見た目にとらわれない、多様な女性像をモデルに起用することで、メッセージのインパクトを残した。さらには、「美しさとは何か」という議論を社会に問いかけるキャンペーンも展開。キャンペーンは現在も続き、消費者を代弁できる女性の起用を心がけている。

ピーターズ氏は、ダヴの事業成長につながった主な要因を3つ挙げた。1つ目は、ブランドのあり方として揺るがない軸を持っていること。2つ目は、一貫性のあるコミュニケーションを行い、社会の変容に合わせてアプローチを進化させること。そして3つ目は、顧客の視点だけでなく社会の動きが見えるデータからパブリックインサイトを見出すこと。これらがリアルビューティキャンペーンを20年以上持続させ、ダヴの事業成長を促していると述べた。

未来のカギを握るパブリックインサイト

大広でブランド戦略、マーケティング戦略を担当する飯田氏は、ダイレクトビジネスに携わる中で、大広は「顧客こそ最大の資産である」というフィロソフィーのもと、事業成果にコミットする伴走スタイルを大切にしていると話す。また、マーケティングアプローチの立案にあたっては、「お客様とつながれるならば、それはすべてダイレクトビジネスになる」と捉えている。

ダイレクトビジネスという強みを生かし、「ダイレクト・ドリブンマーケティング」という新たなマーケティングメソッドを開発。ダイレクトビジネス発想で広告活動の先にある購買やロイヤル化にこだわり、新規顧客と推し顧客を想像し続け、目標達成までコミットするのが特徴だ。

大広 ストラテジックプランニング局 兼 ダイレクトドリブンマーケティングユニット 飯田瞬 氏

大広 ストラテジックプランニング局 兼 ダイレクトドリブンマーケティングユニット 飯田瞬 氏

プランニングは3つのステップに分かれる。1つ目が「ダイレクト発想で圧倒的な顧客理解を元にプランニングゴールを設定する」、2つ目が「ファネルを前に進める感動体験を設計」、そして3つ目が「伴走としてPDCAを回してブランドにコミットし、あらゆる企業の事業成果にコミットする」と飯田氏は話す。

目標決定後は「心を強く揺さぶり、ブランドへの愛着が高まるリアルな場での体験:感動体験」を設定する。嬉しい・驚いただけでなく、ほっとした・安心したなど、「静かな感動」を持ってもらうことも含め、顧客との関係が高まる瞬間を感動体験と捉えている。

飯田氏は、そういう場を作ることこそが消費者との距離を縮め、買い続けたりブランドを推奨してくれたりする顧客を作ることにつながると話した。

今成長しているブランドを見ると、顧客だけでなく多様なステークホルダーを巻き込むストーリーを描くブランドが多い。これからの時代、顧客を理解しブランドを成長させるためには「個のインサイト」ではなく「個人、顧客と社会との関係の中で生まれる公のインサイト」を捉えることが必要と考え、パブリックインサイトを捉えるべきという結論に至ったという。

顧客インサイトとパブリックインサイトの違いとは

大広とともにパブリックインサイトの企画・推進を手がけるデジノベーション代表の伊藤氏は、顧客インサイトとパブリックインサイトの違いについて説明した。

顧客インサイトは商品・サービスへの期待と現状とのギャップから生まれるもので、「こうしたい」「こういうものが欲しい」が着眼点となっている。一方、パブリックインサイトは変化する社会、価値観が多様化、つながりが複雑化する中で、消費者の持つ不安や悩みのようなもの。そうした不安に対し、企業が在り方や向き合い方をメッセージで投げかけるのが、パブリックインサイトへのアプローチだと述べた。

デジノベーション 代表取締役社長 CEO 伊藤友博氏

デジノベーション 代表取締役社長 CEO 伊藤友博氏

顧客インサイトは商品サービス、ブランド起点の感動で、「そう、これが欲しかったんだ」といった共感を生み、瞬間的な効果が期待できることから、キャンペーンも含めた売上やロイヤリティ、口コミにもつながっていく。一方、パブリックインサイトは顧客自身や企業、社会全体が共有するモヤモヤを言語化し、「私のことを分かってくれている」「迷いが晴れた気がする」と感じてもらう「私起点」の感動だ。これは瞬間的な効果に加え、持続的な効果もあり、強い共感から末永く太い関係を築ける推し顧客が生まれやすいのだという。

飯田氏は、パブリックインサイトの事例として、アパレル通販のケースを紹介した。「モデル(の体型)が細すぎてイメージの参考にならない」というN1の声からパブリックインサイトを探求する。この事例の背景には、ルッキズムに近い、画一的な美から多様の美へ価値観の変化が読み取れる。「スリム前提デザイン社会」ともいえるパブリックインサイトが読み取れる。

こうした背景から、ブランドのアクションテーマに「誰もが自分らしい着こなしを見つけられる社会作り」が導き出された。このテーマは中長期な活動指針にもなり得る。パブリックインサイトは中長期的な太い柱を作ったり、パーパスに近い活動テーマを設定するためにも使えるアプローチになると飯田氏は話した。

世間の内なる声を代弁し、顧客と共に成長する

最後に、これまで登壇したピーターズ氏、飯田氏と伊藤氏によるパネルディスカッションが行われた。1つ目のテーマは「メガトレンドと生活者の変用」。飯田氏は、情報が氾濫する今、ブランドの声は届きにくくなっていると語る。一方で「消費者の声を代弁してほしい」とブランドや企業に期待するムードは高まっており、消費者自身が言語化できていない思いを届けられる深い関係性が必要だと感じているという。

ピーターズ氏は、思いを代弁してくれる「自分たちのためのブランド」は、世界的にも支持が集まっていると話す。ルッキズムの話でいうと、憧れではなく消費者に近いモデルを広告で使用するといった企業は増えており、そういった先駆者的なポジションに立つことは社会的にもインパクトが大きいと指摘した。

2つ目は「パブリックインサイトと感動体験」。内なる声を言語化し、どうアプローチするかについて議論した。飯田氏は、パブリックインサイトは社会や慣習、固定概念に対する問いかけのため、本人が言語化できてないことに対する問いを通じて気づきや共感を生み出すアプローチになるといい、それが感動体験になると話した。ピーターズ氏は、リアルビューティキャンペーンで「それぞれに美しさがある」と社会に問いかけたことで、「実は、美の基準が固定化されてる環境に対して嬉しいと思っていなかった」と、消費者の共感を呼んだり、内なる思いを具限化できたことこそがロイヤル顧客化であったり、感動体験につながったと話した。

また、リアルな場でのコミュニケーションが必要かどうかについて飯田氏は、画面越しで何かを見るよりも、現場で触れ、実体験した人の声を聞き、手触りを感じられるリアルな場での体験は非常に大事だと語った。

3つ目のセッションテーマは「パブリックインサイトがもたらす効果」。飯田氏は、パブリックインサイトを捉えたことで2つの効果があったという。1つ目は、効果の範囲が広くなるということ。2つ目は、中長期的な活動につながるということ。一過性ではなく本質的で顧客と共に中長期的に育っていく末永い活動ができる。そのため、「同じ志の仲間や賛同者をどう作るか」が大事だと話した。

ピーターズ氏はこれらの話を受け、同社のパーパスのキャンペーンがブランド自体の価値向上につながっていると述べた。効果を生み出すためには「一貫性」を持つことが重要で、ビジネス面でも一貫性を持つことが消費者の信頼構築につながるという。

一方、築きあげたものに変化を加える場合は、一貫性を重視しているからこそ慎重になるという。「ブランドとして何を変えられるか、何を変えないか」という線引きが必要だとも話した。

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株式会社 大広

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