ライバルとの切磋琢磨が宣伝会議賞・中高生部門のレベルを押し上げた

宣伝会議が主催する公募広告賞「第63回宣伝会議賞」の贈賞式が2月18日に開催された。63回目を迎える今回は、一般部門に56万4909点、中高生部門に3万3314点の応募があった。本稿では、数多くの作品の中から、未来の広告界を担う若き才能が輝いた「中高生部門」「学生賞」「学生チーム対抗企画」の結果と、受賞者および審査員のコメントをレポートする。

全国の中学生・高校生から3万3314点の応募があった中高生部門。審査は、広告界の第一線で活躍するコピーライターおよび特別審査員13人によって行われ、グランプリ1点、準グランプリ1点などが選出された。

グランプリに輝いたのは、溝部雄己さんの作品「プロポーズに使いたいお店じゃなくて、プロポーズしたあとに通いたいお店。」(課題:コロワイド)。準グランプリは、中山野々花さんの「諦めるな、諦めないから。」(課題:日本製薬工業協会)が受賞した。

宣伝会議賞 中高生部門の審査員長の阿部広太郎氏とグランプリ受賞の溝部雄己さん

宣伝会議賞 中高生部門の審査員長の阿部広太郎氏とグランプリ受賞の溝部雄己さん

中高生部門の審査員長を務めるコピーライターの阿部広太郎氏は、総評で近年のレベルの高さを指摘。世間一般の考えに流されず、「自分は素直な心の声としてこう思うんだ」という思いが溢れ出ているコピーは非常に強いと語った。また、課題と向き合い、ブランドに着地する力が年々洗練されていると述べ、審査員自身の価値観も揺さぶられるハイレベルな審査であったと振り返った。

短い言葉を鍛えれば、長尺の脚本にも生きる

グランプリを受賞した溝部さん(高校2年生)は、今回が3度目の挑戦。過去2回はブロンズ賞を受賞しており、「来年は受験生なので、今年が最後だと思っていたタイミングで受賞できて本当にうれしいです」と喜びを語った。

溝部さんが応募のきっかけとしたのは、X(旧Twitter)で知ったコピーライターたちの投稿だった。もともと「54字の物語」など短い言葉で世界観を創作することに興味があり、その延長線上で挑戦を始めたという。今回のグランプリ作品は、これまでの頭の中だけで考えるスタイルから、メモを取りながら思考を整理する手法に切り替えて生まれた。飲食店に行くタイミングを「友達」「デート」「家族」と書き出す中で、「デートした人たちが家族になってからも行く」という時間の連続性に着目し、コピーを完成させたと制作の裏側を明かした。

授賞式では宣伝会議賞イメージキャラクターを務めたダウ90000の蓮見翔氏への憧憬を語った。宣伝会議賞の授賞式の前々日に蓮見氏が脚本・演出を担当したダウ90000の舞台が演劇界の芥川賞と呼ばれる「第70回岸田國士戯曲賞」に選ばれたことにも触れ、溝部さんは将来小説家・劇作家など物書きになりたいという夢も語った。「コピーの短い言葉で世界観を伝えたり、人の心を動かしたりする点は小説にも生きると思っている。宣伝会議賞への挑戦で培った、言葉を突き詰めて考える力を、必ず将来の夢につなげていきたい」と、今後の創作活動への意欲を見せた。

宣伝会議賞 中高生部門の受賞者と審査員たち

宣伝会議賞 中高生部門の受賞者と審査員たち

少年ジャンプのようなライバル関係があったからここまでこれた

溝部さんの3年間の挑戦を支えたのは、ライバルの存在だった。過去2回のグランプリを受賞したファイナリストの山本詩絵さん(今回は協賛企業賞を4つ受賞)を強く意識していたという。「山本さんがいなかったら、1年目のブロンズで満足して終わっていたと思う。山本さんの短いながら強いコピーへの尊敬と、こんな書き方があったのかという悔しさがあったからこそ続けられた」と語り、ライバルの存在が原動力であったことをうかがわせた。

この関係性について、審査員長の阿部氏は「すごく週刊少年ジャンプっぽい」と言及。1年目にブロンズで満足せず、ライバルのすごさに驚き、そこに到達したいという思いが結果につながったと分析し、コピーライティング技術だけでなく「思いの強さ」が重要であることを改めて感じたと述べた。

そのライバルである山本さんは、今回グランプリを逃した悔しさを隠さなかった。「取られたからには取り返してやる」と力強く語り、次回の雪辱を誓った。自身の作風を「ダジャレに頼ってばっかり」と分析する一方、溝部さんのグランプリ作品は「ダジャレじゃないのに、おーってなる」うまさがあり、負けを認めたという。来年は新しい側面を見せたいと意気込みを見せた。

一方、準グランプリを受賞した中山野々花さんは、高校3年生。学校のマーケティングの授業で、課題として提出した3作品のうちの1つが受賞につながった。まさか受賞するとは思っておらず、驚いたが嬉しいと率直な気持ちを述べた。

制作にあたっては、日本製薬工業協会の課題にあった「新薬が承認される確率は3万分の1」という事実に衝撃を受け、その驚きを起点にコピーを考えたという。身近なテーマよりも、かえって予備知識のない方が既存のキャッチコピーに縛られず書きやすかったと話す。長い情報を一つの言葉に凝縮するプロセスに、難しさと共に楽しさを感じたと語った。大学は文学部へ進学予定で、コピーライターという職業への興味を覗かせた。

宣伝会議賞 中高生部門 グランプリの溝部さんと準グランプリの中山さん

宣伝会議賞 中高生部門 グランプリの溝部さんと準グランプリの中山さん

ダウ90000の蓮見氏(写真左)よる特別審査員賞には、片岡優さん(写真右)の作品「かっぱ寿司と牛角って仲間だったの!?」(課題:コロワイド)が選ばれた。蓮見氏は受賞理由について、「たくさん上手な作品があった中で、一番むき出しの言葉だった。みんなが前提として考えることを、その手前でちゃんと受け止めて言葉にしている」と、その着眼点を称賛した

ダウ90000の蓮見氏(写真左)よる特別審査員賞には、片岡優さん(写真右)の作品「かっぱ寿司と牛角って仲間だったの!?」(課題:コロワイド)が選ばれた。蓮見氏は受賞理由について、「たくさん上手な作品があった中で、一番むき出しの言葉だった。みんなが前提として考えることを、その手前でちゃんと受け止めて言葉にしている」と、その着眼点を称賛した

審査員を驚かせた「ユーモア」、ふたを開けたら学生応募だった

一般部門の中から、学生の応募作品で最も優れたものに贈られる「学生賞」。受賞したのは、烏山岳さんの作品「【もみあげ】篇」(課題:JT)だった。もみあげとあごひげのあいだに悩む男の心の声をユーモラスに取り上げた動画・音声広告だ。

審査員の一人である三島邦彦氏は、この作品を高く評価。一般部門の審査では、応募者が学生であることは伏せられているため、純粋に作品の面白さで選んだと明かした。後から学生の作品だと知り、その完成度に驚いたという。

三島氏が特に評価したのは、「くだらなさのちょうど良さ」だった。「くだらないことをまじめに考えるのは意外と難しい」と前置きした上で、この作品はJTグループのパーパス「心の豊かさを、もっと。」とも見事にリンクしていると称賛。「この若さでこういうものを考えられるのはすごくいいこと。これからも、こういうことを考えられる大人になっていってほしい」と、烏山さんの未来に期待を寄せた。

夏合宿での「1000本ノック」が結実 ─学生チーム対抗賞の栄冠は

大学、専門学生、大学院生で構成されるチームで一次審査の通過本数を競う「学生チーム対抗賞」。総合部門(6人以上)と少人数部門(5人以下)で、それぞれ最も多くの一次通過作品を生み出したチームが表彰された。

総合部門の1位は、応募本数8458本、一次通過45本という成績を収めた「Student Professors」チーム。少人数部門の1位は、応募本数1559本、一次通過13本の「次はアウトプット」チームであった。

総合部門で優勝した「Student Professors」チームは、日本ネーミング協会理事も務める飯田朝子教授のゼミに所属する中央大学・国際経営学部の3年生10人で構成されている。ゼミ生の飯野桜太さんによると、この取り組みは授業の一環ではなく、有志による夏休みのチャレンジ企画だったという。

勝利の最大の要因として挙げたのが、夏休みに実施した「1000本ノック合宿」だ。「書き切るまでは寝れない・帰れない」というスパルタなルールのもと、チーム全員で缶詰状態になり、夜通しコピーを書き続けた。同じくゼミ生の大川内詩英奈さんは、「一人だったらここまで書けなかった。チームだからこそ達成できた」と、チームでの挑戦の意義を強調した。また、ゼミの飯田先生がコピーを添削してくれるなど、日頃の学びが基礎体力として生きたことも大きかったと振り返った。

この受賞は後輩たちにも大きな刺激を与えているようで、飯野さんは「ゼミの2年生の後輩たちが私たちに対抗して燃えていると聞いた。来年4年生になっても挑戦して、彼には負けません」と、次世代との競争にも意欲を見せた。

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