リオからミラノ五輪まで6大会で選手の支援拠点を運営 味の素のスポーツ栄養推進とは?

味の素は、日本オリンピック委員会(JOC)および日本パラリンピック委員会(JPC)の「TEAM JAPAN」ゴールドパートナーとして、アスリートのコンディショニングを「食」と「アミノ酸」で支えている。2003年から続くアスリート支援活動「ビクトリープロジェクト」を軸に、選手のコンディショニングサポートから得た知見を生活者のウェルビーイング向上にもつなげるこの取り組みは、単なる製品プロモーションからコーポレートブランド価値の向上へとその目的を進化させてきた。味の素グローバルコミュニケーション部に所属する高橋和也氏への取材に基づき、スポーツ支援活動の歴史と現在地を明らかにする。

味の素のオリンピック・パラリンピック特設サイトより

製品プロモーションから価値共創へ

味の素のアスリート支援の歴史は、2003年に始まる。当初は同社製品「アミノバイタル」のマーケティング活動の一環として、選手のコンディショニングをサポートする「ビクトリープロジェクト」がスタートした。同年からJOCとのパートナー契約を締結し、2004年のアテネ五輪から本格的な支援を開始。この時期は、日本の公共施設として初のネーミングライツ施設となる「味の素スタジアム」の契約とも重なり、同社がスポーツ領域への関与を深めていった黎明期であった。

活動の転換点となったのは2009年である。2008年の北京五輪後、JOCとの契約を「ゴールドパートナー」へと引き上げ、サポートの対象カテゴリーを「アミノバイタル」といった栄養補助食品だけでなく、調味料や乾燥スープ、冷凍食品などグループ全体の製品群へと拡大した。高橋氏によれば、これによりアミノ酸サプリメントに留まらない、「食」全体を通じた栄養サポートへと活動の幅が広がった。この方針転換は、個別の製品ブランドの販促から、味の素グループ全体の企業価値向上へと視座を高めていく第一歩となった。

現在、この活動を担うのはグローバルコミュニケーション部内の「スポーツ栄養推進グループ」である。同グループは、現場で選手に直接向き合う「ビクトリープロジェクトチーム」と、その活動を社会に発信し価値を広げる「価値共創チーム」の二つに分かれている。高橋氏がチーム長を務める「価値共創チーム」は、2025年4月に「PR権利活用チーム」から名称を変更した。PRや権利活用という機能に留まらず、社内外のステークホルダーと共に価値を創り上げていく『共創』という考え方をチーム名に反映させたかった」と高橋氏はその意図を語る。

味の素のスポーツ栄養推進活動は「アミノバイタル」のマーケティングから始まり、コーポレートブランド価値向上へと目的を移行させてきた

海外拠点でも選手のコンディショニングを支える

国際大会における同社の支援を象徴するのが、現地に設置される栄養サポート拠点「JOC G-Road Station」である。GつまりGold(金)メダルへの道を側で支える。これはJOCが設置し、味の素が運営を担う施設で、リオ2016オリンピックから始まり、今回のミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックで6回目の設置となった。五輪組織委員会が運営する選手村のダイニングで提供される食事は、日本人選手の口に合わなかったり、栄養バランスの調整が難しかったりするケースが少なくない。高橋氏は「ミラノの選手村ダイニングの食事は肉が硬かったり、野菜の味付けがオリーブオイルと塩だけで食べづらいという声を聞いた。栄養のバランスがとりにくく、コンディショニングにも影響する状況があった」と指摘する。

2024年のパリ五輪時には延べ3925人の選手たちがJOC G-Road Stationを利用した(同社Webサイトより)

「JOC G-Road Station」では、こうした課題に対応するため、日頃食べ慣れた「和軽食」を提供。特に、うま味成分(グルタミン酸ナトリウム)を豊富に含む「だし」をきかせた汁物は、重要な役割を担う。高橋氏は「うま味は、これから食事をするという『食欲のスイッチ』を入れる機能がある。緊張で食欲がない時でも、うま味によって胃が動き出し、消化を助ける」と、同社ならではの知見を説明する。この考えに基づき、同社の「鍋キューブ」を活用した具だくさんの「エネルギー豚汁」や「コンディショニングスープ」(日替わりの鍋)などを提供し、選手のからだを温めると同時に、食欲を増進させる工夫を凝らしている。

さらにパリ2024オリンピックからは、現地のミシュランシェフと共同でスペシャルメニューを開発する取り組みも始まった。パリでは手島竜司シェフと「うまみスープ」を、ミラノでは徳吉洋二シェフと「Power Gyoza DON」を開発。後者は、野菜の餡かけの上に同社がヨーロッパで販売している冷凍ギョーザを乗せたもの。エネルギーに必要な栄養素がおいしく摂取でき、かつ1日に必要な野菜の3分の1を摂取できる栄養バランスと、うま味をきかせた餡かけが特長だ。これらのメニューは、選手のパフォーマンス向上に貢献するだけでなく、現地でのPRイベントを通じて、味の素の海外ビジネス(主に冷凍ギョーザ)の拡大にも寄与する狙いがある。

手島竜司シェフと開発した「勝ち飯®」うま味スープ〈パリスペシャル〉

徳吉洋二シェフと開発した「勝ち飯」Power Gyoza DON

フィギュアスケート女子シングルで2大会連続銀メダルを獲得した坂本花織選手も餃子が好物とのことで、現地での活躍を味の素が全面バックアップした

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