「誰のために」を問い直し、実務とR&DでUXを磨く IDEALが広げるユーザー体験とは

組織・システム・ブランドの統合、そして投資対効果を最大化しながらの成長——多くの企業が同時に難題を抱えるいま、UX(ユーザー体験)は「使いやすさ」「アクセスしやすさ」のレベルを超え、組織を前に進める共通言語になりつつある。たきコーポレーション内のUXデザイン専門カンパニー「IDEAL(アイデアル)」は、クライアントワークだけでなく、教育・海外プロジェクト・新領域開拓といった活動を通じてUXの方法論を磨く。IDEALの内山堅氏、宮﨑俊太郎氏、小原佳氏に、統合と成長を加速するUXの捉え方と、その裏側にある取り組みを聞いた。

立ち上げのきっかけは、クライアントからの「声」

IDEALは、広告制作やブランディング支援を手掛けるたきコーポレーションが2023年に立ち上げたUXデザイン専門カンパニーだ。大手企業のサービス開発から社会貢献活動まで、幅広い領域で「人に寄り添うデザイン」を実践している。IDEALが誕生したのは、市場の需要に応える必然性があった。カンパニー代表の内山氏が振り返る。

「クライアント企業の事業部やサービス主体の部署から、『顧客体験をデザインしてほしい』というご相談をいただく機会が増えていました。UXという領域は、当社にとって大きな可能性を秘めていると確信したのです」

たきコーポレーション 執行役員 IDEAL カンパニー代表 内山堅 氏

たきコーポレーション 執行役員 IDEAL カンパニー代表 内山堅 氏

立ち上げに向けた準備期間は約1年半から2年。その過程で、社内に既に存在していた、デジタルやUXに関心の高いメンバーたちが集約されていった。現在のメンバー構成は、デザイナーとプロデューサーが主体。立ち上げ時から徐々に増え、現在は16人に拡大している。

「もともと社内には、Webデザインやアプリデザインに興味を持つメンバーがたくさんいました。最初は草の根的に、そうしたジャンルの仕事が自然と集まってきたのです」と宮﨑氏。また、新規サービスの立ち上げ時に完成形をイメージしたモックアップを作成し、経営層も巻き込んだ合意形成を進めたいなどの期待から声がかかることも増えていた。

IDEALが考える、今求められるUXのあり方

なぜ今、UXが急速に重要視されるようになったのか。宮﨑氏は、デジタル環境の多様化を指摘する。

「かつてはパソコンの前でサービスを利用する限定的な状況でした。今はスマートフォンでどこからでもアクセスでき、時間や場所を問わずサービスに接触するようになった。『どんな人が、どんな状況で利用するのか』を考えることが必然になってきたのです」

たきコーポレーション IDEAL 部長 director / UIUX designer 宮﨑俊太郎 氏

たきコーポレーション IDEAL 部長 director / UIUX designer 宮﨑俊太郎 氏

情報があふれ、選択肢が増えた時代。機能が同等であれば、ユーザーが選ぶのは、心に残る体験を提供するサービスだ。その中で、「ユーザーの体験」をしっかり軸にすることで、組織全体の方向性が統一されていく。UXデザインは、ビジネス課題と人の心をつなぐ接点になるのだ。

そして、IDEALが捉えるUXは、狭義のUI改善ではない。宮﨑氏は次のように話す。

「使い勝手に対応するだけでは選ばれるサービスにはなりません。これからは、『なぜそのサービスをビジネスとして提供するのか』という根本的な意味の提案が必要になる。ユーザーの声を聞き取ることと、それをクライアント企業に届けることで、課題解決の本質が見えてきます。ただUXを実装するだけではなく、なぜそれが必要なのか、何を届けたいのかという意味と一緒に考えていく。経営層向けのワークショップを提案して、戦略を練り直すところから入ることもあります」

「誰のために」を問い直す 三井不動産のリブランディング

そんな考えをベースとするIDEALが手掛けた代表的なプロジェクトが、三井不動産のシェアオフィス事業「ワークスタイリング」のリブランディングだ。

「当初定まりきっていなかった『誰のために』というコンセプトを、ワークショップやユーザーインタビューを通じて、新規顧客と既存利用者で求める体験が全く異なることが分かりました」(宮﨑氏)

ビジュアル作成からイベント企画まで幅広く支援した

ビジュアル作成からイベント企画まで幅広く支援した

IDEALが提供したのは、認知から契約、継続的な利用まで全体をデザインするソリューションだ。入り口となるビジュアルやプロモーション、ブランディングの概念から、実際のワークスペースでのイベント企画まで対応。宮﨑氏も「導入から継続まで、一貫して対応できる。これがIDEALの強みです」と力強く語る。

このプロセスを通じて生まれたのは、アウトプットの整合性だけではない。関係者が「体験」を共通言語として語れるようになり、不確実性の高い事業開発において、UXを軸にすることで判断の解像度が上がり、意思決定のスピードを加速させる。統合の難しさが増す時代において、UXは“組織を同じ方向へ向ける設計”になり得る。

クライアントワークの先へ R&Dと社会貢献活動

IDEALの取り組みの特徴は、クライアントワークだけに留まらないことにある。たきコーポレーションの社会貢献活動の一部を担当するなど、多様な取り組みを通じてUXの有用性を社会に発信している。

その一つが、UX市場自体の認知拡大と、次世代のユーザーや今後のUX領域を牽引する若手の醸成という考えからスタートした大学での教育活動だ。IDEALのメンバーは、自ら教育者としての経験を積み、その知見を実務や社会に還元すべく、一昨年から大学の正規講座の講師としてUXデザイン講座を担当。今年は3つの講座を予定している。

京都精華大学メディア表現学部でUIUXについての講義を担当

京都精華大学メディア表現学部でUIUXについての講義を担当

さらに注目すべきは、海外での社会変革プロジェクトだ。アフリカ・ケニアの貧困層のインターン生たちに、IDEALのメンバーがUXデザインのプロセスを教えている。彼らはMiroなどのツールを使ってプランニングを行い、現地で実際に課題解決に取り組んでいる。

「ケニアの貧困エリアの方々は、やる気があっても仕事の機会が限られています。このインターンシップに参加することが実績になり、その後のキャリアにつながっていくことも期待しています」(小原氏)

ケニアの貧困エリアで実施している、スポーツ大会をUXデザインのプロセスで企画運営するプロジェクト。地域活性化と人材育成に取り組む

ケニアの貧困エリアで実施している、スポーツ大会をUXデザインのプロセスで企画運営するプロジェクト。地域活性化と人材育成に取り組む

たきコーポレーション IDEAL 部長 producer 小原佳 氏

たきコーポレーション IDEAL 部長 producer 小原佳 氏

加えて、昨年には今後の宇宙、低重力環境、における体験設計を行い、社会に寄与する一般社団法人「EX Gravity」の立ち上げにも参画した。内山氏は次のように語る。

「今後、一般向けの宇宙旅行市場が拡大していくと予想されています。現在、理工学や医学といった専門色が強い領域ですが、文化や食、観光など、様々な産業と結びつく可能性があります。UXやデザインの視点から、そうした新しい市場を一緒に醸成していきたい」

こうした取り組みは、即座に売上に結びつくものではない。しかし、内山氏は、その意義を強調する。

「市場が縮小していく中では、去年と同じ動き方では評価されません。大学での講座実績、海外での社会変革プロジェクト、新しい産業領域への挑戦——こうした場があってこそ、クライアントからも信頼され、新しい案件につながっていくのです」

環境変化が激しい中で、デザインやクリエイティブの可能性を社会に問いかけていく。メーカーのR&D(研究開発)機能のような役割をIDEALが担っているともいえそうだ。

UXの射程を広げる、IDEALのビジョン

今後、IDEALはどのようなビジョンを描いているのだろうか。内山氏は次のように話す。

「たきコーポレーションは、コアの事業である広告制作から事業拡張を進めています。グループ会社との提携や、他社様との事業提携を増やしてく方向です。IDEALは、そうした新しい事業領域の中核を担うポジションにいると考えています。小さい組織だからこそ、動きやすい。大学との共同研究、海外でのプロジェクト、新しい産業領域への挑戦——こうした試験的な取り組みを、スピーディーに実行できるのです」

こうした考えをベースにIDEALは今後もあらゆる業種の企業から、サービス開発や改善、リリース後の支援に力を入れていきたいと考えている。

「UXは、あらゆる領域に関わってくるものです。声をかけられた場所で、自分たちに何ができるかを試行錯誤していきたいと考えています」(小原氏)

また、IDEALは三井不動産のほか、ソフトバンクなど大手企業との伴走実績も積み重ねている。扱うテーマが複雑化し、統合と成長が同時に求められる時代において、UXは“デザイン”を超えた経営の推進力になる。そのための方法論を、実務とR&Dの両輪で磨き続ける——IDEALが目指すのは、ビジネスと社会をつなぐユーザー体験の専門家集団だ。

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お問い合わせ

株式会社たきコーポレーション

https://ideal.taki.co.jp/


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