連載の最終回となる今回は、少し「未来」の話をします。これまで、AI導入の壁や組織体制、合意形成の泥臭い話をしてきましたが、そもそも私たちはどこに向かっているのでしょうか?
私は、目の前の業務効率化の先に、よりAI中心な仕事や組織の再定義があるのだろうと考えながら日々仕事をしています。つまり「Human-centric(人間中心)」から「AI-centric(AI中心)」へのパラダイムシフトです。
「人間が主役」の時代が終わる?
誤解を恐れずに言えば、今の企業の仕組みはすべて「人間が働くこと」を前提に作られています。人間が読みやすいドキュメント、人間が使いやすいUI、人間同士の会議……。これらはすべて、人間というボトルネックに合わせた「Human-centric」な設計です。
しかし、AIが同僚として入ってくると、この前提が崩れます。
例えば、議事録。これまでは「人間が後で読み返すため」に、要点をまとめてきれいな日本語で書く必要がありました。でも、読むのがAIなら? 音声データのままでいい。なんならログデータそのままでもいいかもしれない。人間と違って、AIは大量のデータを一瞬で読み込み、必要な情報を抽出できるからです。
「AI-centric」な組織では、情報の流通形式が変わります。人間にとっての「わかりやすさ」よりも、AIにとっての「読み取りやすさ(AI Readable)」が重視されるようになる。これは、これまでの仕事の作法を根本から覆す変化です。最近、私はこれを「組織のOSの書き換え」だと感じています。
「AIが働きやすい会社」を作る
第3回で「社内のデータがゴミだとAIはゴミしか返さない」という話をしました。これを未来の視点で言い換えると、「自社独自のコンテキスト(文脈)が整理されていない会社では、AIは活躍できない」ということです。
人間であれば、社内のドキュメント、Slackの会話ログ、社内Wikiの履歴、同僚から教えてもらったことなど、様々な情報を元に働いています。一方で、AIに対してそれらの情報が与えられていなかったり、そのデータが散らかり放題で最新版がどれかわからず、暗黙知だけで仕事が回っている組織は、AIにとって「働きづらい企業」です。
逆に、業務プロセスが言語化され、データが構造化されている組織。これはAIにとって「働きやすい企業」であり、AIは水を得た魚のようにパフォーマンスを発揮します。


