世の中の出来事は、思わぬところでつながっている。「風が吹けば桶屋が儲かる」という昔話のように、一見関係なさそうなできごとも、たどっていくと意外な未来につながることがある。「風桶妄想会議」では、そんな“未来のつながり”を、有識者の皆さんと一緒にゆるく、でもちょっと本気で考えてみます。
第2回は「マンガ業界の風桶妄想会議」。MANGA総研の菊池健氏に、調査データと個人のキャリアを紐解きマンガ業界のガチ未来予測と勝手気ままな妄想をしてもらいました。菊池氏はマンガに魅了され、「マンガは人の世の救い」になると語ります。奇しくも2026年3月に『ONE PIECE』の全世界累計発行部数が6億部を突破し、『聖書』(50~60億部)、『毛主席語録』(9億部)、『コーラン』(8億部)に次ぐ勢いとなりました。マンガは多くの悩める人を慰め・励まし・寄り添ってきました。その魅力と未来を妄想します。
いま、マンガIP市場に吹いている風
風が吹けば、桶屋が儲かる。いま、日本のマンガIP市場に吹いている風は、かなり強い。私が代表をしているMANGA総合研究所が発表した「第2回マンガIP市場調査報告書2025」では、2023年時点で日本のマンガIPのグローバル市場規模は約4兆円。前年比9.7%成長という堅調な伸びを見せています。海外市場はすでに全体の44%(約1.8兆円)。特に配信・映画を中心とした海外映像市場は前年比20%増と高成長を記録しました。
業界の現場から、構造を考える立場へ
マンガ業界に入って、気がつけば15年が経っていました。MANGA総合研究所(MANGA総研)を立ち上げ、マンガ業界のカンファレンスを企画し、調査やリサーチを仕事にしています。当初は想像もつかなかった場所に立っています。
そもそも、業界に入ったきっかけは大げさなものではありませんでした。知人に「ちょっと事業を手伝ってほしい」と声をかけられたこと。それが、トキワ荘プロジェクトでした。新人漫画家がデビューしていく過程に伴走する中で、若い才能がもがきながら前に進む姿を間近で見る日々が始まりました。最初は、とにかく楽しかった。才能が芽を出し、努力が形になり、名前が世に出ていく。その瞬間に立ち会える仕事は、純粋な喜びでした。
やがて私は、作家個人だけでなく、業界そのものの構造に関心を持つようになります。なぜヒットは生まれるのか。新人はどう育つのか。紙からデジタルへ移行する中で、マンガ産業はどこへ向かうのか。漫画ビジネスに関わり、企画者として書籍制作にも携わる中で、私は現場の伴走者から、少し引いた位置で全体を眺める立場へと変わっていきました。そして、ひとつの問いに行き着きます。なぜ、マンガの発展に寄与することが重要なのか。
複雑な社会の中で、マンガが果たす役割
デジタル化とグローバル化が進み、社会は急速に複雑になりました。個人が判断し、責任を持ち、学び続けなければならないことは増える一方です。情報が溢れる時代に、人は自分が経験していない出来事を、他者の物語から学び、想像力を働かせながら成熟していく必要があります。そのとき、マンガは驚くほど自然に人の生きざまや価値観を提示してくれる。読むたびに「あなたならどうするか」と問いかけてくる。
