シニアマーケットの解像度を高める
前回の記事では、令和シニアが、いかにしてこの半世紀の激動の最前線に立ち続けてきたかを見てきました。幼少期の大量消費社会との出会い、若年期の「新人類」ブームと個性の追求、そして壮年期のバブル崩壊とデジタル革命。上の世代に乗り越え方を教わるのでもなく、また抵抗するのでもなく、時代の変化を柔軟に受け入れ、自らの糧としてきた彼らの姿が浮かび上がったのではないでしょうか。その結果、令和シニアは4つのスキル(新しいものを試す瞬発力/自分基準で選び抜く審美眼/環境変化を糧にするレジリエンス/人とのつながりをしなやかに編む力)を自然に身につけてきました。このスキルこそが、彼らが令和の社会においても適応し、消費を牽引しうる存在へと導いた重要な理由です。
しかし、これらのスキルは、あくまで外面的な行動や能力に過ぎません。私たちが本当に知るべきは、その内側に秘められた“価値観の現在地”です。個性を尊ぶ一方で、社会のルールに順応してきた彼らの内面には、どのような本音と建前のギャップが潜んでいるのでしょうか?
『THE FRONTLINE GENERATION 令和シニア なぜいまZ世代マーケターは60代に「未来」を見るのか?』博報堂ストラテジックプラニング局、Hakuhodo DY ONE著
本記事では、2014 年・2019 年・2024 年の3地点を比較した博報堂生活者データと令和シニアの特徴を深掘りするための独自定量調査の調査結果をもとに、その「人生観」に迫ります。
調査概要
調査① 博報堂「HABIT/ex調査」(一部「ACR/ex調査」ビデオリサーチ社調べ)
【調査時期】2014年・2019年・2024年
【調査方法】エリア・ランダムサンプリングで無作為抽出後、回答専用タブレットによるインターネ
ット調査を実施
【調査人数】約6600s(2地区計)/回
【調査エリア】東京圏50㎞圏・関西地区
【調査対象】12〜69歳男女個人
調査➁ 本書独自定量調査
【調査タイトル】「ご自身に関するアンケート」
【調査日】2025年9月19〜21日
【調査方法】インターネット調査
【調査人数】800人
【調査エリア】全国
【調査対象】20〜70歳男女(20〜50代は男女各50人、60〜70代は男女各100人)
【モニター提供元】マクロミル
再始動のステージにあり、やりたいことがまだまだたくさんある
「引退世代」という言葉から想像されるイメージとは大きく異なり、令和シニアの人生観はポジテ
ィブかつアクティブです。ここからは私たちの独自調査(調査②)からひも解いていきます。
まず、令和シニアは引退を考えるよりも、現在を再始動のステージと捉え、自身の未来に対して可
能性を見出しています。この未来志向の強さは、まず「これからの人生でやりたいことがたくさんある」という項目に表れています。このスコアは、70代が54.2%なのに対し、60代は59.5%と、約5ポイントの差があります。
(本書より)
この差の背景には、令和シニアが激動の時代のなかで自己実現を先送りにせざるを得なかったことに対する反動があります。彼らはバブル崩壊や不況、子育てや親の介護といった「社会から求められた役割」を全うするために、自分個人の夢を後回しにしてきたという自覚があるのです。だからこそ、体力と時間に恵まれた今、失われた時間を取り戻したいというエネルギーが高まっていると推測できます。これらの想いが、「挑戦と成長」をしようとする令和シニアの根源にあります。
この意欲は単なる願望では終わりません。令和シニアは、平日の自由な時間を「仕事や勉強を勉強をする」といった自己投資、スキルアップのために行動しています。「リタイア後に新しい趣味や習い事を始めたい」の項目でも70代の17.8% に対し、60代は26.5% と、約10ポイントの差をつけています。この高い行動力は、彼らが第1章で培った「新しい波をためらわず試す柔軟性」の賜物でしょう。新しい習い事を始めることは、彼らにとっていつでも遅くはなく、人生を豊かにするための合理的な選択なのです。

