日本製紙は8月5日、熊本地震により八代工場(熊本県八代市)の煙突が倒壊し、社員や協力会社関係者ら9人が死亡した事故を受け、八代市役所で記者会見を開いた。7月28日の地震発生から8日後で、事故後初の会見となった。
登壇者の受け答えは比較的堅実で、会見は当初、穏やかに進んだ。しかし、広報担当者が予定時間を理由に質疑を打ち切ろうとすると、記者から「まだ質問がある」と反発が相次いだ。本社広報のこれまでの対応にも不満が噴き出し、会社側が担当者を会場に残して追加対応する展開となった。
この会見の内容と運営を、危機管理広報の観点からどう見るべきか。アステリア執行役員コミュニケーション本部長で、「広報勉強会@イフラボ」を主宰する長沼史宏氏に聞いた。
紛糾した会見のイメージ(ChatGPTにより作成)
登壇者の受け答えは「比較的堅実」
長沼氏は、会見全体について「社長や工場長など登壇者の受け答えは比較的堅実だった」と評価する。
瀬邊明社長が事故への受け止めや会社としての方針を示し、山邉義貞工場長らが事故当日の勤務人数、煙突の位置や高さ、点検履歴などを説明した。トップが全体像を語り、現場責任者が技術的な詳細を補足する役割分担は、ネガティブ会見の基本に沿ったものだったという。
工場の図面を画面に映し、煙突の位置や高さを示した点も分かりやすかった。山邉工場長が設備に関する細かな質問に速やかに答え、登壇者が記者の質問をメモしていた姿勢も評価できるとした。
質疑では、幹事社から基本的な質問を受けた後、各社へ移る形式を採用した。1人2問というルールを超えて質問しようとした記者を司会者が制止した点についても、「他の記者にも質問の機会を設け、公平に進行するうえで適切だった」と見る。
問題点1 冒頭の「1時間程度」が混乱の原因に
長沼氏が進行上の最大の問題として挙げたのが、司会役の広報担当者が冒頭で「1時間程度を予定しています」と会見時間を区切ったことだ。
開始から約48分後、広報担当者は予定時間が迫っているとして、質問を「最後の2人まで」と告知した。2人への回答を終えると、「まだ時間がある」として、さらに1人の質問を認めたが、約56分後には終了予定時刻になったとして会見を締めようとした。
