広がる8K映像の可能性
サンゴ、イルカ、美しい色の魚や生物…会場に設置された8Kプロジェクターによる大型スクリーンには、これまで見たことがない美しさで水中の様子が映し出されていた。
撮影を手がけたのは、赤木正和さんだ。水中撮影のプロフェッショナルとして、これまで数多くのテレビ番組や映画などで撮影を行い、4Kの時代から継続して8Kカメラの運用実験に携わってきた。
今回の展示は8K開発メーカーとの産学協同として進めたもので、機動性のある8Kカメラで撮影している。「よく言われることですが、海の中は宇宙よりも知られていない。潜れば潜るほど、新しい世界や生物に出会えるし、カメラが高精細になればなるほど、見たことがない映像を撮ることができます」。
展示では、実験的な試みも行っている。凸版印刷と協力して、8Kの映像から切り出した画像をオフセット印刷し、アート作品として展示した。「通常の映像からの切り出しだと画質が粗くなってしまいますが、8Kでは細部まで高解像度で印刷されます。今後はタイムラプスで静止画を撮り、繋げて映像をつくるという逆の発想で作品づくりも可能になると思います」。
9月11日には、大阪芸術大学内にある直径16メートルの実験ドームを使った全天映像も公開する。
「これまでは高解像度の映像がなかったので、プラネタリムのように星を映すぐらいのことしかできませんでしたが、8Kの登場によって目の前に実在するかのような空間をつくることが可能になりました」。
この技術が確立すれば、日本に300カ所、世界で3000カ所以上あると言われるプラネタリウム施設の新たな活用法に繋がる可能性もある。
赤木さんは、8Kによる生放送が実現する未来も見据えている。「2019年のラグビー W杯や2020年の東京オリンピックの中継をパブリックビューイングのような感覚で、全国のプラネタリウム施設で8K映像による中継を見ることができたら面白いですよね。その空間演出ができたら、と考えています」。
これが実現すると、あたかもラグビーやオリンピック競技を“現場で見ているような感覚 ”を実感できるという。
大阪芸大在学中に水中撮影を始めた赤木さん。「水面の裏側を撮りたいという思いから独学で、暗中模索しながら撮影していました」。
現在では、水中撮影の第一人者としてNHKをはじめキー局や新聞社とのネットワークも確立している。そんな赤木さんは来年、同大学で水中撮影に特化した日本初のゼミを開始する。静止画、動画を問わず水中撮影を学べる機会は学生たちにとって貴重だ。
「学生には最先端の技術を見せることが大事だと思っているので、水中撮影だけでなく、いろいろな実験に参加させる予定です」。
展示中、すでに放送関係者からの問い合わせも多数寄せられていた8K。技術の進歩とともに、それを扱える人材の育成への期待も寄せられている。
編集協力/大阪芸術大学
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