【前回】「写真はますます頭脳的になる!【前編】」はこちら
今回の電通デザイントークは編集者の菅付雅信さんをお招きして、写真をめぐる「いま」を俯瞰します。トークセッションのメンバーは、電通からドリル、そしてPARTYを経て「もり」を設立し、世界の広告賞で審査員を務める原野守弘さんと、写真専門誌「コマーシャル・フォト」編集長の上松清志さん、2016年にカンヌ、NYADC、D&AD、ワンショーと受賞ラッシュし、写真への造詣も深い電通のアートディレクター上西祐理さんです。誰もが写真を撮る時代だからこそ、プロの目線で写真を批評し、写真を真に「見る」とはどういうことなのか語り合います。
ファッション広告の魅力はわからないこと?
菅付:昨年の秋に話題になった、バレンシアガの広告写真にはまったく服が写っておらず、ブランドロゴが小さく入っているだけでした。東京の表参道駅をジャックしていたので、見たことがある人もいるかもしれません。
この広告はマーク・ボスウィックという写真家が、クリエーティブディレクターを兼任して制作しました。なぜファッションブランドのキャンペーンに服が写っていないのか。ボスウィックは「広告から離れた広告をやろうとした。なぜなら広告とは、人をイライラさせるものだからだ」と語っています。
このキャンペーンで、バレンシアガの売り上げは前年の2倍になりました。キャンペーンとして大成功だったわけです。
上西:けんかを売っているような挑戦的な表現は、すごくいいなと思います。こういうテイストを好きな人たちが、バレンシアガの服も好きなのでしょうね。
菅付:僕もバレンシアガの姿勢がすごく伝わるキャンペーンだと思いました。最近の潮流から思うことは、ファッション広告の魅力は「見てすぐにわかるものではない」ということです。もちろん広告としては見てすぐにわかることは重要ですが、一目見ただけではよくわからないことも大事だと思っています。
上松:たしかに、これだけ世の中に写真があふれてくると、広告とわかった時点で見られなくなることが起きています。まさにバレンシアガのキャンペーンのように「何だ、これ?」という謎が多ければ多いほど、人は調べたくなりますよね。
上西:ビジュアルを見て「歩いていたけど止まった」「気になって覚えた」「心が動いた」とか、そういう
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