ラジオCMの収録が、全仕事の中で一番楽しい
嶋:前任のラジオCM部門の澤本嘉光審査委員長が、「ラジオCMは若者が挑戦できる場」「挑戦している若手を応援したい」という意図で2年前に作ったのが「アンダー29」という賞です。受賞した皆さんが今、どんな仕事をしているかなど、話を聞けたらと思っています。まずは自己紹介をお願いします。
関:電通の関俊洋です。入社6年目になりました。コピーライターもしていますけど、どちらかというとCMプランナーといったほうが当てはまるかもしれません。CMの仕事が多くて、特にラジオCMは去年25本くらいつくりました。
武田:うわ、いいな~。
三宅:25本もひとりで、回してるんですか?
関:はい。ラジオだけは最後までやりたいし、手放さないようにがんばっています。10年ほど経験すると、「ラジオは若手に譲ろう」みたいな雰囲気がありますけど、一番技術が必要とされるものだと、今の段階では思っているわけですよ。ラジオは絵でごまかせないし。だから、せっかく培ったものを止めることなく、ずっと取り組んでいたいと思っています。
武田:私にとってラジオは、ずっと東京ガスさんとワコールさんに育ててもらっている感覚が強いです。ただ、去年いろいろ仕事に入りすぎてしまったので、仕事をぐっと減らしてしまって、今ラジオの仕事がなくなっているんです。やりたいとは思っているんですけど。
三宅:私は入社6年目ですが、最初の3年間は別の部署にいたのでクリエイティブ歴は約2年です。ずっと異動したくて、一般の公募広告賞をきっかけにようやく異動できました。テレビCMをまだ担当したことがなくて、ラジオCMもこの受賞作が、初めての仕事だったんです。
嶋:初めてつくったCMが「アンダー29」を獲ったんだ。それは、ラッキーだったね。
三宅:本当に助かったな、という感じです。普段はあまりラジオの仕事がないので、これをきっかけに増やしていけたらなと思います。
嶋:それぞれの作品に関して、工夫したところやポイントは何かありますか?
武田:「カーネギーホールへの道」はどこから考えたんですか?調べるところから?
※関さん2015年入賞作品:パイオニア販売「カーネギーホールへの道」 音源&スクリプト
関:よく覚えてないんだよな…。その時の状況としては、これで賞を獲らないと飛ばされるんじゃないかという恐迫観念がすごくて、獲るためのネタはないかなと探していました。クライアントの担当者がラジオCMをつくったことのない方で、これはラジオのおもしろさを知ってもらうチャンスだと。以前、カンヌ受賞作とACC受賞作を20年分さらった時に、おもしろいと思ったラジオCMをピックアップしておいたんですね。それをクライアントに聴いてもらったら、「こういうの、つくりたいです」と言ってもらえて。
嶋:テレビCMは、けっこう大掛かりなプレゼンになるけれど、ラジオだと若手に任せてもらって仕事を進めるケースも多いよね。
関:「最後の一行でしか言いたいことが言えてないけど、大丈夫ですか?」と聞かれましたけど、メンターも連れて行って「大丈夫です!」と口説き落としました。
嶋:これ、すごくよくできているよね。ラジオは、最初にシーンを想像させたら勝ちなんですよ。「おじいさんがいました」ってセリフを言ったら、ラジオを聴いている人はそれぞれ老人を頭に思い浮かべるじゃない。それさえできちゃえば、後はCMがどんどん別のシーンに連れていける。だから、このCMの場合「女性が男に道を尋ねた」というのを頭の中で想像すれば、あとは最後まで連れていけるんです。そして最後に商品の話をするというのは、すごく効果的だよね、実は。
関:あと大事にしたのは「間(ま)」ですかね。「男は答えた。努力あるのみですよ」の後に長い間を取りたいなと。原稿に「間」って書いて5、6行改行して。それくらいですかね。でも僕もこれがつくりはじめて2、3作品目で、まだやり方がわからなくて。もっとこうすればおもしろかったのに、と思います。
嶋:武田さんの作品のポイントは?
武田:私もラジオCMがすごく好きで、ACC受賞作をものすごく聴いたりして。
嶋:じゃあ、過去の受賞作もそうとう聴き込んだんだね。
関:僕もそうとう聴いてます。
嶋:いいねぇ~! やっぱり、過去の名作にヒントが溢れてるよね。
武田:本当におもしろいんですよね。自分はネタを積んでいって、おもしろいのをつくるというのが苦手で、だからこの「10人10色」は初めてそれに挑戦した作品なんです。つくっている時は難しくて、つらかった。それにデスクで、電話で「この“おっぱい”は~」と連呼して周りから「武田は何の仕事をしてるんだ」と。
※武田さん2015年入賞作品:ワコール「10人10色」 音源&スクリプト
嶋:(笑)電話でずっと、おっぱいおっぱい言ってる。へんなヤツだよね。
武田:こんなにも「おっぱい」を連呼していいとOKがでるまで、5年くらいかかっているんです。最初は「バスト」「胸」くらいで、おっぱいはNG。先輩たちが何年もかけてつくってきてくれたワコールさんとの関係性の中で、今年は「おっぱいあり!」となったところに乗っかれました。こういう信頼関係は、ラジオが少人数でつくるものだからこそ、個人的なつながりを感じながら企業との信頼関係を築ける仕事だと思います。
嶋:ラジオCMは得意先も含めてスモールユニットで作業を進められるから意思統一が明確になるし、得意先とも一体感がでるでしょ。
武田:楽しいです、人となりがわかる方と仕事した方が。ラジオCMの収録をしている時が、全仕事の中で一番楽しいです。
関:僕もスタジオが一番楽しいですよ。全責任が自分にある感じ。テレビCMはどうしても監督の意向が大きいんですが、ラジオは「そこはこうしたい」と強く言っても大丈夫な空気がある。あと上がいないし。
武田:キャッキャしちゃうほど楽しいですね。間
「「広告」から「クリエイティビティ」へ【ACCプレミアムトーク】」バックナンバー
- 「広告のフロンティア拡張は今」 小杉幸一さん×ラフォーレ原宿「LAFORET HARAJUKU GRAND BAZAR 2017 SUMMER」チーム座談会 — 2018ACC賞ブランデッド・コミュニケーション部門 Dカテ(デザイン)シルバー受賞作品(2019/7/04)
- ACC賞審査委員長対談 多田琢氏(フィルム部門)×菅野薫氏(ブランデッド・コミュニケーション部門)(2019/6/26)
- 「広告のフロンティア拡張は今」 保持壮太郎さん×マクドナルド「ヘーホンホヘホハイ」チーム座談会 -2018 ACC賞ブランデッド・コミュニケーション部門 Bカテ(プロモーション/アクティベーション) ブロンズ受賞作品(2019/6/25)
- ACCメディアクリエイティブ部門 箭内道彦審査委員長×村本美知さん×大澤あつみさん 座談会『メディアのチャレンジ、それはメディア×アイデアの総力戦!』(2019/6/19)
- 「広告のフロンティア拡張は今」中村勇吾さん×三菱自動車工業「雲海出現NAVI」チーム座談会 - 2018ACC賞ブランデッド・コミュニケーション部門 Aカテ(デジタル・エクスペリエンス)シルバー受賞作品(2019/6/17)
- 「広告のフロンティア拡張は今」 橋田和明さん×原野守弘さん対談。 -2018 ACC賞ブランデッド・コミュニケーション部門 Cカテ(PR) シルバー受賞作品:GODIVA「日本は、義理チョコをやめよう。」-(2019/6/14)
- 辺境の異種格闘技。ACC賞「ブランデッド・コミュニケーション部門 」審査委員座談会<Part2>(2018/6/12)
- なぜACC賞にデザインのカテゴリーをつくったのか。 「ブランデッド・コミュニケーション」部門 審査委員座談会Part1(2018/6/06)
新着CM
-
クリエイティブ
BOVAグランプリに「Let’s ギューリッシュ」 短尺・縦型増加で...
-
AD
宣伝会議
【広報部対象】旭化成のグローバル社内イベント成功事例を紹介
-
クリエイティブ
世の中を変えようと挑戦する起業家をヒーローに――2023ACC賞審査委員長が語る
-
クリエイティブ
「これでいいのか?」これからの広告(東畑幸多)コピー年鑑2023より
-
AD
マーケティング
新規顧客を獲得するためには――飲食業とWeb広告業、それぞれの事例を紹介
-
コラム
語り出すと止まらない!櫻坂46の魅力(遠山大輔)【後編】
-
販売促進
ファンタジー好きに訴求するグミ カンロ、空想の果実をイメージした新商品
-
販売促進
横須賀市、メタバースで観光誘致 AIアバターの実証も開始
-
AD
特集
OOHと生活者の交差点を考える