音楽を軸とした物語「アリスと太陽」だ。連載開始早々、反響を呼んでいる同作品を手がけたのが、漫画家 凸ノ高秀さんだ。
遅咲きの漫画家が『週刊少年ジャンプ』で連載
「商業誌デビューは28歳、『週刊少年ジャンプ』で連載が始まったのが33歳と、漫画家としてはかなり遅咲きです」と話すのは、凸ノ高秀さん。大阪芸術大学デザイン学科卒業後、大阪でデザイナーとして働いていた。「デザインを一生の仕事にするつもりはなく、いつかは自分の名前で面白いことを発信していきたいと思っていました」。
凸ノさんが漫画を描き始めたきっかけは、エンタメサイト「オモコロ」での連載だ。コンテンツ公募で自身の作品が入賞し、「オモコロ」での連載が始まった。でも、凸ノさんは悩むことになる。「特にやりたいこともなかったので、毎回何を描いたらいいか、頭を抱えていました」。
その時頭をよぎったのが、小学生の頃、いつもノートに描いていた漫画だ。「今はデジタルで漫画を描くことができる時代、それだったら自分もできるかもしれないと思い、27歳から再び描き始めました」。
こうして凸ノさんは、29歳のときに漫画1本で食べていくべく上京を決意。それから半年後、『少年ジャンプNEXT!』に読み切り作品が掲載されて好評価を得、本誌でのデビューを飾った。
念願は叶ったが、週刊誌での連載は時間との戦いである。また、『少年ジャンプ』は読者のアンケート結果が誌面に反映されることもあり、「『ジャンプ』という、日本で一番熾烈な現場に自分がいることを実感するようになりました」。そんな凸ノさんが大阪芸大時代から、常に心に留めているのが「まだ手は残されている。発想を転換すれば武器になる」ということ。
「ある授業のグループ制作で、僕らは発表日までに完成しませんでした。それでもプレゼンは避けられないので、自分たちはいかに間に合わなくて、申し訳なく思っているか、ということをプレゼンしました。すると先生が面白がって評価してくれたんです。その時からですね、今自分が持っているものを武器にしていくしかないと思い始めたのは」。
現在の『少年ジャンプ』には、凸ノさんの大学の同期、後輩である佐伯俊さんと附田祐斗さんのコンビが『食しょくげき戟のソーマ』を連載している。「2人とも、今でも仲がいいんです。佐伯は卒業後、すぐにデビューしたので、僕はずっと彼らが第一線で活動しているのを見ながら刺激を受けていました。彼らがいなかったら、今の自分はなかった」。
連載開始後、凸ノさんの元には幅広い世代からファンレターが届くようになった。「先日、ある人に言われたんです。少年誌は漫画界の土台。子どもの時に漫画に親しんだ人は大人になっても読み続けるし、漫画はその人の思い出にもなる。そう考えると、やりがいのある仕事だよと。その話を聞いてから少年誌って面白いかもしれない、と意識が変わり始めました」。
連載開始から2カ月、じわじわと人気を集めている「アリスと太陽」。アニメ化される日も、そう遠くはないかもしれない。
下記は、オモコロに掲載された凸ノさんの作品 ©凸ノ高秀
凸ノ高秀(とつの・たかひで)さん
編集協力/大阪芸術大学
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