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視聴率に「態度変容」という“質”を掛け合わせテレビCMの価値可視化と出稿最適化を目指す

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テレビの価値をより正しく示すことを目指し、2020年3月に視聴率調査を新仕様に刷新、視聴習慣・環境の変化に対応した指標の提供を実現したビデオリサーチ。新しい視聴率調査で視聴の「量」に関するデータを蓄積する環境が整いつつある。
テレビ局とスポンサーである広告主に価値を提供するために、視聴の「質」にも着目し、サービス化を目指す同社の展望とは。

ビデオリサーチ
ソリューション事業局 マーケティングソリューション部 エキスパート
吉田 正寛 氏

主にメーカー等の広報・宣伝担当部署から、広告会社や媒体社営業担当部署をクライアントに、広告活動のプランニングや広告効果測定をコンサルティング、メディアの広告役割の観点から、次期広報・宣伝施策を第三者の立場でサポート。

 

視聴の「質」に着目し出稿の最適化を目指す

広告・メディアを取り巻く環境が変化する中で、「広告主企業の個人情報規制に関しての課題感は切実になってきている」とビデオリサーチ ソリューション事業局 マーケティングソリューション部 吉田正寛氏は話す。個人情報の活用について規制が進む昨今、デジタル広告の強みでもあったターゲティングなどの個人を最適化する手法は再考を余儀なくされている状況だ。

2020年3月にリニューアルされた視聴率調査では全地区で世帯だけではなく個人も調査可能となり、属性別で大きく括っていた視聴者をより精緻に分析することが可能となった。

一方、広告効果の観点ではリーチだけが効果ではない。「広告の効果は認知とその後の態度変容によって評価されます。視聴率は高いほど認知を取りやすいですが、態度変容に寄与しているかどうかを測る指標はまだありません。この点に着目し、視聴の“質”を『態度変容』ととらえて計測し、提供する研究を進めています」(吉田氏)。

「リーチ」と「態度変容」 かけ合わせで出稿枠を決める

同社は視聴率データに加え態度変容を可視化するため、関連会社「Resolving LAB(リゾルビングラボ)」が整備する視聴ログデータを活用。視聴率を教師データに視聴ログを個人に分離し、生活者データの意識属性をひもづけることで、該当する枠を視聴していた個人の意識が分析できるフレームを整備している。

このフレームで、ある情報系番組で3回分のF1層の視聴者を分析すると、CM接触で期待される態度変容の違いを、ふたつの観点であぶりだすことができた【図表1】。

図表1 態度変容を最適化に活用する分析アプローチ

左表:ビデオリサーチ視聴率/中央表:ResolvingLAB視聴ログ
いずれも2020年10月(9/28~11/1)関東地区 F1

ひとつは、商品やサービスの理解しやすさ、もうひとつがCMの内容がSNSなどへ書き込まれるか、というもの。視聴率自体は各回ともに大きく変わりはなかったが、番組の内容によって期待される態度変容に差が見られたという。

吉田氏はこの結果から「番組内容がCMによる態度変容に影響を与える、同じ番組でも内容により視聴者が入れ替わることで変化が起きることがデータで示された」と分析する。

さらに番組ではなく、時間帯別で見た場合でも同じF1層の視聴が多い時間であっても行動に差が出るという結果もある。吉田氏は「検証データの精度は高いと考えています。検証前に放送を確認し、予想した結果に近いものが出た。これはまさに広告主が今まで経験や勘で培ってきた肌感にも合います。しかも単なるデータフュージョンではなくて、視聴の実態に基づいているので説得力も高いのです」と話す。

こうした検証内容から、リーチと態度変容をかけ合わせて出稿枠を決めるという考えは広告主にも大きな反響があるという。

ビッグデータを活用しクリエイティブの最適化も視野に

リーチと態度変容を組み合わせることにより出稿枠を考えることで、さらに効果を発揮できるのは、小ロットで出稿するケースだ。現在、注目度が高まっているSAS(スマート・アド・セールス)を活用することで、より効果的な時間帯に、CMを流すことが可能となる。

吉田氏は「SASのように小ロットから広告枠を買える仕組みは立ち上がっていますが、買う側のリテラシーはまだ整っていない状態です。しかし、これから経験と知見を重ねなくとも、既存のデータを使えばある程度可視化できる時代。材料は揃っているのです」と話す。

また、同様のフレームを活用することで広告主が出稿する際のKPIがひとつに定まらない場合でも、複数の条件で効果が高い枠を検討することが可能となる。消費者の態度変容のファネルも一律ではなく、ファネルの各ステージによって有効なメディアは異なる。こうして条件が複雑化すると出稿戦略を立てることが難しくなるが、認知と態度変容を組み合わせた分析フレームで多角的に検証することにより、より高い精度で効果の高い枠を見つけることができるのだ。

「消費者の価値観や嗜好が多様化するなかでKPIの設定も難しくなっています。リーチだけでは、投資効果の判断指標としては不安が残る。私たちの分析フレームはそうした広告主の課題感にフィットする考え方になっていると思います」。

現在はこの最先端の分析フレームのサービスパッケージ化を目指してさらなる研究が進められている。24時間365日蓄積されている各枠の態度変容と視聴率をまとめ、広告主の要望に合わせた形で提供できることが理想だという。

さらに、今後はデータの活用をさらに一歩進め、テレビCMのクリエイティブについても最適化のサポートも視野に入れているという。放送枠を認知や態度変容で評価するように、クリエイティブの相性を検証することもひとつの方法。「データを蓄積していけば、より精度の高い予測も可能になる」と吉田氏は展望を語った。



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