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SNSの「話題」から読み解く最新トレンド Vol.6 東京五輪はSNSでどう語られたのか? オリパラ全体編

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【前回】「SNSの「話題」から読み解く最新トレンド Vol.5 東京五輪はSNSでどう語られたのか? 開会式編(後編)」はこちら


桜美林大学准教授/マーケティング・コンサルタント
西山 守

商品、映画、広告キャンペーンなど、さまざまな領域で生まれるヒット。その背景には、SNSや多種多様なメディアから情報が拡がり、話題が伝搬していくことでブーム化していく、近年はそんな現象が見られるようになっています。こうした話題になった事例を分析、そのしくみを解説した書籍『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』の著者である西山守さんが、最近話題になった事象について読み解きます。

これまで二回にわたって、東京五輪の開会式がSNSでどう語られていたかについて分析してきました。

SNSの「話題」から読み解く最新トレンド Vol.5 東京五輪はSNSでどう語られたのか? 開会式編(前編)

SNSの「話題」から読み解く最新トレンド Vol.5 東京五輪はSNSでどう語られたのか? 開会式編(後編)

今回は、パラリンピックも含めて、開会前から閉幕後まで、東京2020がSNSでどのように話題になっていたのかを総括してみたいと思います。

下図は、東京五輪・パラリンピックに関するTwitter上の話題量の推移のグラフです。

東京2020オリンピック・パラリンピックに関するTwitterの話題量推移(※)
(2021年7月1日~2021年9月8日)
BuzzSpreader Powered by クチコミ@係長のデータから推計
出所/著者
※五輪, オリンピック,パラリンピック,オリパラ, Tokyo2020などのワードを含むツイートの数

 
オリンピック、パラリンピックともに、開会式が最も盛り上がっており、次いで閉会式が盛り上がっています。

パラリンピックの開閉会式は、オリンピックと比べても評判が良く、SNS上でもかなりポジティブな声が目立っていたのですが、話題量としては、オリンピック開閉会式の5分の1程度に留まっています。

開催期間中の1日あたりの平均話題量を見ても、オリンピックが194万件、パラリンピックが32万件となっており、約6倍の開きがあります。

YouTubeで公開されている東京オリンピック2020開会式のダイジェスト映像「#Tokyo2020 Opening Ceremony Highlights」
YouTubeで公開されている東京パラリンピック2020のダイジェスト映像「Tokyo 2020’s Most Emotional Moments」

パラリンピックのテレビでの生中継はNHKが中心で、民放ではあまり放映されていませんでしたし、オリンピックと比べると報道も少なかったため、やむを得ないところはあります。

しかしながら、実際に競技を視聴した人は、SNSではオリンピックにも勝るとも劣らないポジティブな投稿していました。

さて、話題を変えて、五輪開催前から開催後に至る流れを見てみたいと思います。

7月8日に100万件を超える投稿がありますが、こちらは緊急事態宣言が発出されたことに伴い、開催を危ぶむ声が寄せられたことによります。

そこから徐々に話題が沈静化しますが、開会式の5日前から再び100万件を超え、再び盛り上がりを見せています。ただし、その内容はネガティブなものが大半です。

7月19日にトヨタ自動車が五輪CMの放映を見送るという報道が、7月20日に開会式の作曲担当の小山田圭吾氏の辞任、7月22日に開閉会式の演出を担当する小林賢太郎氏が解任されるという報道が出ており、開会式当日まで、SNS上には五輪開催を懸念する声で占められていました。

論調に変化の兆しが見られたのが、ブルーインパルスが東京の上空を飛んだ、開会式当日の昼過ぎからでした。

ただ、この時点では、まだネガティブな声も多々見られます。完全に論調が変わったと言えるのは、開会式以降です。

スポンサー企業に関して見ると、アサヒビールが開会式当日、翌日に投稿したフォロー&RTの告知は、それぞれ2.6万RT、2.2万RTを集めていました。

開幕以降は、日本人選手のメダルラッシュも後押しして、競技やアスリートに関する話題、特に応援の声が急増しました。批判的な声も依然としてあったのは事実ですが、ポジティブな声にかき消されていきました。

パラリンピックの開催期間中も、競技やアスリートに関しては、数は少ないながらも、オリンピックに負けないポジティブな投稿が見られました。

しかしながら、8月下旬になり「弁当13万食が廃棄された」、「マスクなど医療資源500万円分廃棄された」といった報道が出てくると、批判的な論調が目立ち始めます。9月に入って、菅首相の退陣報道が加わり、五輪に関する論調は政治的な様相を帯びていきました。

閉幕後は、感動の余韻に浸る声、無事開催できたことを喜ぶ声はありながらも、予算の赤字の問題、期間中の新型コロナの感染拡大の話題も再燃し、ポジティブな話題とネガティブな話題が混在している状況になっています。

ただし、現在では話題量は1日数万件程度に落ち着いており、開催直前、開催期間中の盛り上がりはもはや見られません。

東京五輪開催の総括は、これから、しっかりやっていかなければならないことではありますが、すでにSNS上では東京五輪は「過去の出来事」になりつつあります。

東京五輪の話題を追いかけてみると、改めてSNSの論調の変化の速さを実感させられます。

西山守(にしやま・まもる)
マーケティングコンサルタント/桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

1998年3月、東京大学大学院理学系研究科修士課程修了(物理学専攻)、同年4月電通総研入社。2016年12月電通を退社、2017年5月西山コミュニケーション研究所代表。2021年4月に桜美林大学 ビジネスマネジメント学群 准教授就任(主に、広告・マーケティングを教える)。

電通総研においては、主に、情報メディア関連、地域開発関連のリサーチ、コンサルティング業務に従事。電通では、主にマーケティングメソッド、ツールの開発やソーシャルメディアマーケティング、特にソーシャルリスニングの業務に従事。ソーシャルメディア、戦略PR等を活用した、リスクマネジメント、レピュテーションマネジメントに多数の実績あり。大手企業のソーシャルリスニング、およびマーケティング支援業務、官公庁や大手メディア等のリスクモニタリング、リスクコンサルティング実績もあり。

独立後は、電通グループを中心に、ソーシャルリスニングやSNSマーケティングをはじめとするコンサルティング業務や人材育成を行う。

これまでの著書(共著含む)に、『情報メディア白書』(ダイヤモンド社)の企画・編集・執筆、『クロスイッチ -電通式クロスメディアコミュニケーションのつくりかた-』(ダイヤモンド社)の企画・執筆、『リッスンファースト!』(翔泳社)の翻訳出版を監修、『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(フィギュール彩)の執筆(共著)。