自治体による観光キャンペーンや地元企業による産品のプロモーションなど、「地域」の案件に特化して企画立案から制作、実施までの進め方を紹介する書籍『地域の課題を解決するクリエイティブディレクション術』が1月に発売されました。発刊を記念し、千葉県流山市のマーケティング課長、河尻和佳子さんと著者でクリエイティブディレクターの田中淳一さんが地域の課題解決の方法について話し合いました。
流山市が「母になるなら、流山市。」をキャッチフレーズに都内で広告展開を開始したのが2010年度のこと。10年超にわたって取り組み、メディアに注目されるとともに移住促進で成果を上げています。対談ではコンセプトの重要性や、パートナーとの仕事の進め方に話が広がりました。
流山市が「母になるなら、流山市。」をキャッチフレーズに都内で広告展開を開始したのが2010年度のこと。10年超にわたって取り組み、メディアに注目されるとともに移住促進で成果を上げています。対談ではコンセプトの重要性や、パートナーとの仕事の進め方に話が広がりました。
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社会課題の解決に結びついたコンセプトが必要
田中
:「母になるなら、流山市。」の広告が出て十数年が経ちます。最近もテレビ番組で紹介されていますが、そのイメージが定着し、成果を出し続けていると感じます。河尻さんは、その理由をどのようにお考えですか。
河尻
:プロモーションは、実態が伴わなければ長く続けられません。「母になるなら、流山市。」は、子育て世帯にターゲットを絞ったメッセージですが、同時に子育て担当部署が保育園などの新・増設などの環境整備を進め、コミュニティ創出の場づくりもしてきました。10年以上経って、今も評価をいただいているとすれば、広告と実態が伴っていくよう流山市全体で頑張って取り組んできたからかな、と思います。

河尻和佳子
流山市役所 総合政策部マーケティング課 課長
大学卒業後、東京電力に入社し14年間、営業、マーケティング等を担当。流山市に移住したことをきっかけに任期付職員公募に応募し、前例のない自治体マーケティングの道に入る。首都圏を中心に話題となった「母になるなら、流山市。」広告展開や、母の自己実現を応援する「そのママでいこうproject」、年間16万人を集客する「森のマルシェ」の企画・運営などを手掛ける。
田中さんの著書『地域の課題を解決するクリエイティブディレクション術』を読んで、共感するところばかりでした。冒頭に書かれているコンセプトの重要性はそのひとつです。
「母になるなら」「父になるなら」は子育てだけでなく、親である自分自身がどう自分らしく生きるかというテーマに向き合う覚悟を持って出しました。今思えば、これも紛れもなくコンセプトだったと感じます。「母だから、父だから」という役割と自己実現のはざまで悩む人が少なからずいるという課題に選択肢や多様な事例があるかもしれないと発信を試みたとも言えます。
