(本記事の続きは月刊『ブレーン』2022年10月号「滞在の『体験』価値をどう生み出す?クリエイターの提案」特集に掲載しています)。
「アンビエント」な街、京都で
ブライアン・イーノは、1972 年にデビューした英国のロックバンド「ロキシー・ミュージック」のメンバーとして活躍後、プロデューサーとしてデヴィッド・ボウイやコールドプレイなどを手がけた。音楽活動と並行してビジュアル・アートの創作にも力を入れ、音と光が合わさりながら自動生成し続ける「ジェネレーティブ・アート」を提唱。これまで世界中で展覧会を開催しており、今回の展覧会では4 つの「ジェネレーティブ・アート」作品を展示している。
そんなイーノが今、日本の京都で展覧会を実施することになった経緯を、テー・オー・ダブリュー 執行役員/プロデューサーの竹下弘基さんはこう話す。「始まりは、もう1 人の統括プロデューサーでもあるTraffic の代表 中村周市さんが2016 年頃から京都でのイーノのアートイベントを企画し、17 年に京都出身でイーノ好きの私が意気投合したことから。以降一緒に企画・制作に取り組んできました。『AMBIENT KYOTO』はコロナ禍を経て改めてイーノにアプローチをして実現したものです」。
そこで以前から竹下さんが親交のあった盆栽研究家の川﨑仁美さん、CCC アートラボの磯谷香代子さんに声をかけ、4 人のコアメンバーでインスタレーションを中心とした展覧会を提案することになった。
「京都を提案したのは、アンビエントミュージックとの親和性が高いと考えたことも一因です。アンビエントとは『環境の』『周囲の』といった意味合いを持ち、アンビエントミュージックはその場の空気に漂うような音楽を指すと理解していますが、京都にも目に見えないけど漂う京都ならではの何か、がある。ちょうどその頃、会場となる『京都中央信用金庫 旧厚生センター』とのご縁もあり、着々と準備が進んでいきました」(竹下さん)。何度もイーノ側への提案や調整を重ね、無事展覧会の開催が決まったのは21 年11月ごろのことだった。
没入感を高める体験づくり
「ありきたりな日常を手放し、別の世界に身を委ねることで、自分の想像力を自由に発揮することができるのです」⸺本展においてイーノが掲げたのはこんな言葉だった。
