消費者を中心に置き、失敗を許容できる仕組みの構築を―音部大輔氏が講演

旭化成でDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するデジタル共創本部が2月に開催した社員向け講演会で、クー・マーケティング・カンパニー代表取締役の音部大輔氏が登壇した。講演では、マーケティング活動の全体最適を実現する設計図「パーセプションフロー®・モデル」をメインに、ブランド戦略や組織マネジメントについても話が及んだ。

講演はオンライン配信され、マーケティング部門だけでなくあらゆる部署から約500人が参加し、多くの質問が寄せられた。

ナレッジマネジメントは個人・組織の成長には不可欠

P&Gやダノン、資生堂などでマーケティングに携わる中で、組織の成長について考える機会に恵まれました。「組織が成長する」とは、どのような状態を指すのでしょうか。私は、「昨日できなかったことが明日できるようになる」と定義すると分かりやすいと考えています。

では、できなかったことが、なぜできるようになるのか。

ひとつは、昨日持っていなかった何らかの資源または手段が手に入るから。だから、私たちはそのことが直感的に感じられる新商品や新ジャンルが大好きです。

一方で我が身を振り返ると、経験を知識に変えることで成長してきたことが多いのではないかと思います。鉄棒の逆上がりを例にとると、できるようになったのは昨日より筋肉がついたからではなく、コツをつかんだから。あれほどドラスティックな変化でも、経験を知識に変えることで克服できることは少なくありません。

昨年1年間で何を学びましたか、という問いを発することがあります。1人で売上5億円を達成しました、と仮定します。それは素晴らしいことですが、去年の5億は、今年は役に立ちません。同時に、5億を達成するにあたって学んだことは、今年も来年も使える。その学びをうまくナレッジマネジメントできるようになると、個人としての成長も担保しやすい。組織にとっても、そこに5人メンバーがいるなら5人分の経験値があるはずですが、共有できなければ各自1人分の経験値にとどまります。

ナレッジマネジメントは非常に重要ですが、同時に経験・知識というものは共通言語で伝播していくので、5人がそれぞれ経験したことを共有するためには共通の言語の確立が必要です。「戦略」という言葉も、よく使われる割には意味が明確ではない言葉のひとつです。今日のテーマのひとつである「パーセプションフロー・モデル」についても、形式知化しておくと共有しやすい。それが、書籍

『The Art of Marketing−マーケティングの技法』

を書いた理由です。

消費者の未来の行動変容を示すパーセプションフロー・モデル

パーセプションフロー・モデルは、マーケティング活動の全体設計図です。日用雑貨や飲料、化粧品など、BtoC領域でもBtoB領域でも使われることがあります。なぜかというと人間が意思決定をしているという点で概ね同じだからです。

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