『Figma』を日経225企業すべてへ…川延カントリーマネージャー パートナー企業との提携も

「Figma」が日本市場で好調だ。日本市場は、年間定期収益(ARR)の伸び率が、各国市場の中でも最も高いという。Webサイトやスマホアプリなどの制作でおなじみのサービスだが、Figma Japanカントリーマネージャーの川延浩彰氏は、「これまでの『Figma』の伸長を支えたコミュニティはもちろんのこと、さらにユーザー数を伸ばすため、パートナー企業を介した導入など、拡大施策の多様化を図りたい」と話す。目標は、「日経平均株価を構成する全企業への導入」だ。

次ページ 「デザインツールという認識を変えなければ」へ続く

「Figma」は2022年1月に日本市場へ進出し、同年7月には製品のローカライズと日本語でのサポートを始めた。進出初期から足元のユーザー増を支えるのが、同社が「Chapter(チャプター)」と呼ぶ、ユーザーコミュニティグループだ。

「Chapter」はデザインに関心を持つすべての人が対象で、デザインのプロやアマ、学生だけでなく、開発者やプロダクトマネージャーなども参加している。互いに教え合ったり、スキルを高めたりするのが目的だ。日本進出当時、国内の「Chapter」は1つでメンバーは約2300人。24年3月時点では、メンバーは10倍以上の約2万5000人に大きく伸び、「Chapter」の数も24に増えた。

写真 人物 Figma Japanカントリーマネージャーの川延浩彰氏
Figma Japanカントリーマネージャーの川延浩彰氏(写真右)と、 Figma共同創業者で、CEOを務めるディラン・フィールド氏(写真左)

直近1年では、Figma Japan社のセールス部門が企業導入を支える。現在、Figma Japanの従業員32人のうち、約半数がセールス担当だ。2023年の秋口にはセールス体制の構築が完了し、ここ1年半ほどはセールス主導でもユーザーを拡大している。月額課金(サブスクリプション)のSaaSビジネスの重要指標のひとつである年間定期収益(ARR)が、北米のほか英仏独といった他国市場に比べて日本が最も高いという実績も、このセールスチームの功績が大きい。Figmaは具体的なARRの数値については明らかにしていない。

川延氏は、「『Figma』はデザインツールという認識を変えなければならない」と話す。アイデア発想のためのツール「FigJam」(22年2月)の開始や、開発者向けの「開発(Dev)モード」(23年6月)といった機能追加からは、デザインの前後の工程をカバーした”プラットフォーム”へ、「Figma」を進化させようという狙いが伺える。

ターゲットは、IT部門や経営などの意思決定層だ。コミュニティ主導でのユーザー拡大は、文字通りの草の根、ボトムアップでの導入となる。ユーザー間のコミュニケーションは定着にも効果が見込める。一方で、企業ユーザーとなると、導入における稟議を通すほかなく、導入におけるビジネス上の効果などを「非ユーザー」に説明するコストがかかる。

「いまや多くの企業が、Webサイトやアプリ、あるいは製品タッチパネルなど、エンドユーザーとの接点を持ち、コミュニケーションの機会がある。そうした企業には開発や改善プロセスの効率化などにおいて、『Figma』が提供できる価値は大きいと考えている」(川延氏)

実際、セールス担当者がクライアント企業向けに、具体的な活用場面を交えながら価値訴求をすることで、導入が進んできた経緯もある。しかし、川延氏は「このまま現状維持では、どこかで成長が鈍化する」とみる。

「目標は日経平均株価を構成する225社すべてに『Figma』が導入されていること。現在は3分の1だが、残り3分の2に広げるには、さらに別の手立てが必要と考えている。それがパートナー企業の設置」(川延氏)

川延氏が構想するのは、「Figma」を使う顧客でもあるパートナーが、自身のクライアントに導入を図ってもらうといった青写真だ。具体的な提携について議論に入っている企業もあるという。パートナーマネージャーは未設置だが、「パートナーからニーズが高まったり、レベニューへの貢献が見えてきたりすれば、戦略上はやるべき」と視野に入っている。

「きっかけづくりでもありがたい。我々がまだ見えていない世界とつながれることを期待している。これまで、ユーザーとの直接取引の一本槍だったので、さまざまな形でのユーザー拡大ができることが理想。ただ、ビジネスライクなパートナーシップではなく、どのようにWin-Win-Winの形をつくるかが鍵。柔軟に対応していきたい」(川延氏)

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