参院選から見る各党の広報戦略 「短期的問題」訴求で縦型・ショート動画が主流に

若年有権者の取り込みに期待

参院選の投票日に向けて、各党は激しい論戦を繰り広げている。生活に直結する物価高などの課題により、政治への関心は例年より高まっていると見られ、期日前投票も3年前の選挙と比べて増加している。各党はSNSを活用し、動画などを駆使して実績や施策を訴求。中には物語性を持たせたショートドラマ形式の動画も見られるなど、さまざまな工夫が際立っている。こうしたクリエイティブの狙いや傾向について、中央大学国際経営学部の飯田朝子教授に話を聞いた。

7月20日の投票日に向けて熱戦を繰り広げる

飯田教授によると、これまでの選挙戦では、マスメディアを用いて理念や方針を伝える広報が中心であった。しかし、SNSの普及により、セグメント化されたターゲットを狙うことが可能になり、政党が改革や成果を直接的にアピールできるようになった。

5年前までは「多様性」「平和」「夫婦別姓」「少子化」など、長期的な「生き方」に関する政策が多く訴えられていた。しかし、参院選2025では、目の前にある短期的な「問題解決」が争点に移っているという。

自由民主党「日本を動かす 暮らしを豊かに」

実際、YouTubeでは、自民党が物価高対策を中心に訴求する「日本を動かす 暮らしを豊かに」、国民民主党が103万円の壁の引き上げや178万円への引き上げを訴える「手取りを増やす夏。」、立憲民主党が市民の不安の声を拾い上げる構成の「政治は、あなたの声から。」など、喫緊の課題に対する動画が目立つ。

国民民主党「手取りを増やす夏。」

さらに、縦型動画や寸劇の投稿など、従来政治に無関心だった層とのコミュニケーションを試みる動きもあり、飯田教授は「これらは若年有権者の取り込みに大きな力を持つ」と予測している。

例えば、日本維新の会は7月13日にXで「ショートドラマ」形式の縦型動画を投稿。代表の吉村洋文氏が自ら出演し、スマホに届いた社会保険料の天引き通知に不満を述べ、最後に「制度を変えられるのはあなたの1票」と訴える内容だ。

日本維新の会

日本共産党も7月14日に学費値下げを訴える縦型動画を投稿。国会質問の様子に加え、歌とアニメーションを組み合わせ、短尺の中でテンポよく問題を提示している。また、自民党は今年6月に誕生した自民党広報キャラクター「じみたん」が登場する動画を多数投稿。物価やガソリン価格対策などを温かいタッチのアニメーションで訴えている。

日本共産党

自由民主党

こうした動きについて、飯田教授は「短期的問題の存在を顕在化するうえで、SNS投稿や動画が大きな役割を果たしているのは間違いない」と指摘。特に、消費税、社会保険料、大学の学費といった具体的な金額を画面で示し、候補者や党首の主張を文字で表示する戦略は効果的だとしている。

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