「個人の動機」が「組織の動機」を強くする

前回の

第2回

では、プロジェクトの成功と失敗の予兆を10個ずつご紹介しました。その中でも今回は、「社のミッションの他に、担当者の個人的な動機が共有されている」ことが成功につながるというポイントにフォーカスしたいと思います。個人的な動機──「なぜ自分がこの発注をするのか?」に焦点を当てていきます。

プロジェクトの起点にあるのは「人」

さてみなさん。

「上司に言われたから。社長の一存で始まった取り組みだから。前任者が決めてスタートしていたから」

そういった理由で発注が来て、モチベーションがうまく掴めないままプロジェクトを進めた経験はありませんか。チームが動き出してからも意図が曖昧で、成果に対して納得感が持てなかったというケースは、決して少なくないでしょう。お互いの時間も費用ももったいないだけでなく、不完全なクオリティの成果が社会に提示されると、それがマイナスの効果を生むこともあります。

たとえば、市場に出された商品が売れ残って在庫のロスが発生したり、意図を誤解されたキャンペーンがSNSなどで炎上してブランド毀損につながったり、現場の共感が得られずに関係者のモチベーションが下がり、最悪の場合は社員の離職にまでつながるケースもあります。だからこそ、こうした発注には特に注意が必要です。

企業間のプロジェクトは、「BtoB」、つまり組織対組織の関係として進められますが、あらゆるプロジェクトは個人対個人のコミュニケーションを経て進めていくものです(少なくともAIエージェントが完全に人の代わりを果たすようになるまでは)。

その前提に立てば、「発注」も単なる業務プロセスではなく、個人の判断や動機が伴う行為であり、プロジェクトの成果を高める起点にもなりえます。発注者が自分の意志を持って発信することで、チーム全体の推進力や共感を高めることができます。

ここからは「Why Me」という問いに沿って、プロジェクトデザインの観点から考察していきます。

Why Me (個人の動機)で Why Us(組織の動機) を強くする

発注には、組織としての目的や背景が存在しています。

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「発注美学」―プロジェクトを成功に導く発注スキルの考察と研究
出村光世(Konel・知財図鑑:CEO/プロジェクトデザイナー/知財ハンター)

1985年石川県金沢市生まれ。2011年アクセンチュアに所属時にKonelを創業。東京、金沢、京都、ミラノを拠点とし、デザイン・研究開発・アートの領域を横断するプロジェクトを推進。2020年、新規事業のための知財データベース「知財図鑑」を立ち上げる。プロジェクトデザイナー/知財ハンターとして分野を超えた未来実装を続けている。J-WAVE(TOKYO MORNING RADIO / INNOVATION WORLD)にてコメンテーターを担当。Red Dot/One Show/D&AD/ACCなど国内外での受賞歴多数。2023年 Forbes Japan NEXT 100に選出。著書に、オープンイノベーションのメソッドをまとめた『妄想と具現 未来事業を導くオープンイノベーション術DUAL-CAST』(日経BP)。プロジェクトリーダーのためのポッドキャスト番組「Project Design Room」を配信中。

出村光世(Konel・知財図鑑:CEO/プロジェクトデザイナー/知財ハンター)

1985年石川県金沢市生まれ。2011年アクセンチュアに所属時にKonelを創業。東京、金沢、京都、ミラノを拠点とし、デザイン・研究開発・アートの領域を横断するプロジェクトを推進。2020年、新規事業のための知財データベース「知財図鑑」を立ち上げる。プロジェクトデザイナー/知財ハンターとして分野を超えた未来実装を続けている。J-WAVE(TOKYO MORNING RADIO / INNOVATION WORLD)にてコメンテーターを担当。Red Dot/One Show/D&AD/ACCなど国内外での受賞歴多数。2023年 Forbes Japan NEXT 100に選出。著書に、オープンイノベーションのメソッドをまとめた『妄想と具現 未来事業を導くオープンイノベーション術DUAL-CAST』(日経BP)。プロジェクトリーダーのためのポッドキャスト番組「Project Design Room」を配信中。

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