2531年、日本の名字は「佐藤」だけになる?「夫婦同姓」日本固有の課題をどう世界に伝えるか

2025年の海外アワードで、日本勢は何を示したのか。特に大きな話題を呼んだ「#2531佐藤さん問題」について、企画の背景や応募時の工夫などを聞いた(本記事は『ブレーン』2025年9月号「世界のクリエイティブ AIの先に問われる信頼とリアリティ」特集からの転載記事です)。

「夫婦同姓」を男女の共通課題に昇華

2025年、世界の広告賞で評価された「#2531佐藤さん問題」。一般社団法人「あすには」が提起する、選択的夫婦別姓の問題を“未来に苗字が絶滅する”という視点で捉え直した企画だ。

カンヌライオンズの応募時に提出したケースボード。

カンヌライオンズの応募時に提出したケースボード。「全員が佐藤さんになってしまった世界」がひと目で伝わるビジュアルをメインに置き、説明部分は特に背景の部分を厚くしている。

中心メンバーであるクリエイティブディレクターの石塚啓さんは、企画の元になった原体験をこう話す。「僕には子どもはいないのですが、少し前に唯一の兄弟である兄が結婚して娘が生まれたんです。その時、このままだと石塚という苗字はゆくゆく途絶えるんだな……と感じて。それが選択的夫婦別姓の是非が問われている社会状況と重なり、この問題をより広く知ってもらうきっかけをつくりたいと思いました」。

夫婦別姓についての議論は長年続いているものの、社会的な関心は未だ薄く、特に男性側の当事者意識が薄いと言われている。それならば「苗字が絶滅する」という未来を提示することで、性別を問わず、問題を“自分ごと”として感じてもらえると考えた。石塚さんは東北大学の教授とともにシミュレーションを行い、現状のまま夫婦同姓制度が続けば2531年には日本の苗字が「佐藤」だけになるというデータを導き出した。そのうえで、選択的夫婦別姓の法制化を目指す「あすには」に、プロジェクトに主体として取り組まないかと話を持ちかけた。

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