デジタルの力を駆使した、現代におけるマーケティング設計とは?

宣伝会議主催の「マーケティングサミットリージョナル2025」が7月に大阪で開かれ、コーセープロビジョン株式会社 ダイレクトビジネス室 課長EC統括の塩谷悠氏は顧客視点で取り組むデジタル時代のブランド創りを、C Channelの石野泰裕氏は売上直結のリアル投稿戦略についてそれぞれ紹介した。

顧客体験の再設計がLTV最大化の鍵に

コーセープロビジョンは、コーセーの子会社として化粧品の通信販売事業などを展開するBtoC領域の中核企業である。2021年にLTV(顧客生涯価値)の最大化を目指し、顧客情報を統合管理できる「KOSÉ ID」の運用を開始。購買情報や行動履歴などを一元化するシステムとして導入されたが、初期段階では、データは蓄積される一方で、十分に活用されていないという課題を抱えていた。

写真 人物 塩谷悠氏

LTV最大化を図るため、2024年以降、「KOSÉ ID」の分析・活用フェーズへと本格的に移行。究極の高ロイヤルティ企業を掲げるなかで、ID数の拡大とLTVの向上が売上成長に直結すると見据えたと塩谷氏は語る。その中核には、マーケティング4Pのひとつ「Place(タッチポイント)」の再設計がある。そこで、顧客がブランドと出会い、体験を重ねていくあらゆる接点を見直し、新たなブランド体験を創出する取り組みを始動した。

写真 人物 塩谷悠氏

DECORTÉが挑むデジタルシフトへの取り組み

塩谷氏は、取り組んでいる事案として、コーセーのハイプレステージブランド「DECORTÉ」を挙げた。DECORTÉは長年にわたり、百貨店や化粧品専門店を中心とした店舗にて販売を行ってきたハイプレステージブランドである。カウンセリング販売を通して、顧客育成を図ってきたブランドだからこそ、店頭レベルの接客をどのようにデジタル上で実現するか考え抜いた。

この取り組みは、「顧客戦略」「顧客把握」「顧客接点」の三軸から進められている。まず顧客戦略では、店舗の強みを活かしながら、デジタルで顧客を段階的に育成するロードマップを設計。新規顧客からロイヤルカスタマーまでセグメント別に購買傾向を可視化し、ステータスに応じた情報設計である顧客育成シナリオを策定した。これにより、各タッチポイントで「誰に・何を・いつ訴求すべきか」が明確になり、コミュニケーションの一貫性が保たれるようになった。

写真 人物 塩谷悠氏

次に顧客把握では、オンラインとオフラインのデータを統合し、行動・嗜好・ニーズを多角的に分析。個別行動を深掘りすることで、ターゲット像の解像度を高め、施策立案のヒントを得た。最後に顧客接点の再構築として、タッチポイントを統合管理するシステムを導入。テクノロジーパートナーとの協業でデジタル基盤を整備すると同時に、ブランド理解を深める社内研修や、データ分析に基づく勉強会を開催。店舗と連携したパーソナライズド体験を生み出す運用体制を確立させた。

塩谷氏は、「ブランドや商品、サービスが変われば、提供すべき顧客体験も変化する。ブランドごとの世界観を保ちながら、デジタルを駆使した最適な体験を届けていきたい」と締めくくった。

韓国ブランドの勝ちパターンとは

続いて登壇したのは、C Channelの石野氏。C Channelは美容に特化したインフルエンサーマーケティング支援を展開している。石野氏は冒頭で、「なぜ韓国ブランドばかり売れているのか?」と問いかけ、その要因のひとつに、「リアルに見える口コミ」の存在があると語った。

写真 人物 石野泰裕氏

たとえば、韓国ブランド「Anua(アヌア)」が2024年に展開したプロモーションでは、わずか半年で1291件のUGC(ユーザー投稿)を創出し、レビューは3万件超。販売好調の背景には、「あくまで生活者目線で、本音で語られているように見える投稿」の巧妙な設計があるという。石野氏は、「今のユーザーは、PR投稿やステマには非常に敏感。だからこそ、本音に見える演出が重要になる」と説明し、消費者が本音だと感じる情報設計に注力していった。

購買の決め手は飾らない本音の伝え方

石野氏は、ユーザーが信じたくなる本音を生み出すために、認知から購入までの4段階のストーリーを設計した。まずは「認知」フェーズ。美容賢者と呼ばれる信頼感あるインフルエンサーを起用し、SNSでの商品タイアップ投稿を展開。説得力のある分かりやすい商品紹介によって、第一印象を築いていく。続いて「興味関心」。この段階では、マイクロインフルエンサーを通じてギフティングを実施。ユーザーにとって身近な存在であるインフルエンサーの感想が、商品に対する親近感を高め、話題化へとつながるのだ。

写真 人物 石野泰裕氏

さらに「比較・検討」フェーズでは、美容系インフルエンサーをイベントに招待。実際に使用した体験をもとに発信されるリアルな声は、信頼あるレビューとして機能し、フォロワーが真剣に検討し始める。そして最終段階が「購入誘導」。このフェーズではTikTokクリエイターの力で、ユーザー目線から飾らない言葉で使用した感想が語られることで、最後の一押しとなる。

写真 人物 石野泰裕氏

ラフだけど本音に見える伝え方こそ購買意欲を引き出す決め手になると石野氏は強調した。実際に、TikTokの動画投稿やLIVE配信を見て、その場で購入することを可能にしたTikTokショップの運営によって、C Channelは成果を飛躍的に伸ばしている。誰をどう起用し、どう動かすか、そしてユーザーにどう伝えるのか。インフルエンサーとの共創が、これからのマーケティング戦略における手法であるとして締めくくった。

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お問い合わせ

C Channel株式会社

MAIL:t.ishino@cchan.tv
URL: https://www.corp.cchan.tv/


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