高速で後まわしを繰り返す―「宣伝会議賞」応援企画・発想ブレイクスルー集【6】


約2カ月間にわたる「宣伝会議賞」の応募期間も半分が過ぎ、ふと手が止まる瞬間が増えていませんか。そんなときこそ、新たなひらめきへとつながる視点が必要です。「宣伝会議賞」の審査員7人に、アイデアを前に進めるための方法を聞きました。第6回は、一般部門審査員を務める小堀友樹さんです。

avatar

小堀友樹氏

電通

父、数学教師。母、国語教師。姉2人小学校教師という職員室みたいな家庭で育つ。大学で彫刻を勉強していたので、広告をつくるお仕事に就いています。インターネットと物語が好きです。

Q1. アイデアが出ないとき、最初に頭の中で何をしますか?

アイデアが出ない時の画期的な解決策があります。「高速後まわし」です。人間の集中力には限界がありますよね。私の集中力は金魚くらいですので、アイデアが出ないと感じた瞬間に後まわしにしています。そして別の案件のアイデアを考えはじめます。もちろんそちらのアイデアも出ませんので、すかさず後まわしにします。これらを高速で繰り返しましょう。

すると、すべて後回しとも言えるし、進行中でもある、という不思議な状態に突入します。宣伝会議賞は課題が本当にたくさんですので、後まわししまくるのをおすすめします。

Q2. 視点を変えたいときに使う“発想フレーム”や“型”があれば教えてください。

「あの人なら、どんなふうに言うだろう?」と考えてみるのはどうでしょうか。

著名なコピーライターのふりをして書いてみるのもいいのですが、自分のまわりにいる誰かのつもりになって、言葉を探してみるのもおすすめです。

宣伝会議賞に応募する方は広告が好きであることが多いと思いますので、まったく広告に興味のない実家の母が、その商品を見かけてポツリとつぶやくとしたら……みたいな感じでいろんな人を憑依させてみると楽しいですよ。

Q3:アイデアを刺激する“インプット”として頼りにしているものは?

ここでお伝えしたいのは「好きな人の好きなものは、好き」でございます。

私は『デイリーポータルZ』というサイトでライターをやっていた経緯から、ライターの方々をたくさんフォローしています。その方々が「おもしろい」と紹介していた書籍は、自分の守備範囲外であっても、読んでみると、こんな本が世の中にあるのか!と思うものばかりで毎回ホクホクになります。

最近出会えて良かったなと思った本でいいますと、『金を払うから素手で殴らせてくれないか?(木下古栗)』『あいたくて ききたくて 旅に出る(小野和子)』は生きている間に読めて良かったです。広告とか関係なく、「この人の目利きは絶対の絶対に信頼できる!」人をたくさんフォローしておくのは人生が最高になるのでおすすめでございます。

息子の顔をトーマスに換装した時の画像(最近3Dプリンターに夢中です)(小堀氏)

息子の顔をトーマスに換装した時の画像(最近3Dプリンターに夢中です)(小堀氏)

Q4:頭を切り替えるために、物理的な“環境”で工夫していることは?

A4のコピー用紙にざざーっと書き殴った後に、まずWordで文字起こしして、それをパワーポイントに転記したりしています。

何の意味があるんやという気もするのですが、手書き→タイピング→パワポレイアウトを経るうちに、「どこがよかったんや」とか「ちょっといいかも」みたいな客観的な視点が組み込める気がしています。

でも、これが正解だとはとても思えないので、正解を教えてほしいです。

Q5:気持ちが落ち込んだとき、どうやって立て直しますか?

機嫌よくいることはめちゃめちゃ大事ですよね。私は普段、機嫌よくいるためにどうしたらいいのかにお仕事パワーの8割くらいを注いでいます(具体例で言いますと、「こんにちは」くらいの頻度で「天才じゃん」と言います)。

Q6:これまでに“スランプを抜けた瞬間”のエピソードがあれば教えてください。

斎藤環の本を読んでいた時のことです。内容が難しくて(私には)よくわからないし、言葉そのものが直接的なテーマなわけでもなかったのですが、言葉の仕組みについて、なんとなくボヤ〜っと理解できた気がして、その時は目の前が開けた感覚がありました。そのときに感じたことは、大きく3つあります。

・言葉は単独で存在するのではなく、他の多くの言葉との関係性の中で意味を持つ。
・その関係性はシナプスのように有機的で、距離や強弱がある。
・人間は、見えない言葉同士の関係性の総和によって現実を認識している。

これはあくまで個人の妄想なのですが、文章に含まれる単語を「数値ベクトル」に変換し、その意味を把握していく自然言語処理の手法「Word2vec」が似たような思想であることを教えてもらった時にはむちゃくちゃ興奮しました。

Q7:応募者の皆さんにメッセージをお願いします。

キャッチコピーは世の中を動かすためのプロンプトかもしれませんね。たった1行で世の中が変わってしまうような名作に出会えるのを楽しみにしております!

第63回「宣伝会議賞」特設サイトはこちら

advertimes_endmark
※※※※※


この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ