サービスの未来像を共に描き歩める存在へ TISがマーケティングソリューションを刷新した理由

TISは同社のマーケティングソリューション群の統一ブランド「MARKETING CANVAS(マーケティングキャンバス)」を6月にリニューアルした。その狙いを聞くと、「従来の受発注型の進め方への危機感」や「PoC型の共創アプローチの必要性」、「再定義」といった言葉が並ぶ。購買行動の多様化や生活者接点の拡大、さらに生成AIの台頭により、マーケティングの「定石」が急速に揺らぐ中、顧客企業との共創によって解を探していくプロセスが欠かせないと同社は考えている。
 
システム開発やデータ管理などに強みを持つ同社が、あえてこうしたアプローチを強調するのはなぜか。詳しく聞いた。

アパレル大手での経験から見えた課題

「ITの困りごとに応えるだけでは、もはや十分ではない」

そう語るのは、TISデジタルイノベーション事業部 兼 エンタープライズサービス事業部 副事業部長の渡辺啓之氏だ。渡辺氏は前職のアパレル大手でEC事業部門や情報システム部門を管掌し、店舗とECの双方に顧客データを持ちながらもそれを活かしきれていない現場に直面した。部門ごとに意思決定が分断され、統合的な施策の推進が困難であったという。「事業会社で感じた危機感が、今の視点の出発点になっている」と振り返る。

写真 人物 TIS デジタルイノベーション事業部 副事業部長 兼 エンタープライズサービス事業部 副事業部長 渡辺啓之 氏

TIS デジタルイノベーション事業本部 デジタルイノベーション事業部 副事業部長 兼 エンタープライズサービス事業部 副事業部長 渡辺啓之 氏

そこから導かれたのは、顧客が本当に目指すべき未来から逆算して仕組みを設計するという発想だ。LTV(ライフタイムバリュー)や収益性の向上、消費者に楽しい体験を届けられるかなど、お客様と将来に渡ってどう向き合って行きたいを起点に未来像を描き、そこに向かうために今推進すべき施策を選び取る。

このほどリニューアルされた「MARKETING CANVAS」は、この考え方を実装するための枠組みとして再定義した。単なるツール群ではなく、顧客企業とともに未来像を描き、伴走しながら事業成長を支援するための仕組みへと進化している。渡辺氏は「SIerが要件対応だけを担う時代はすでに終わっている」と強調する。

課題は「システムだけではなく、運営にある」

「MARKETING CANVAS」の再定義には、システムを導入しただけで成果が出るわけではないという前提がある。最大の壁は運営面にあり、どれほど高度な基盤を整えても、活用の考え方や方法が組織に浸透しなければ効果は得られない。デジタルイノベーション事業部 兼 エンタープライズサービス事業部 エキスパートの山本豪氏は「ROI(費用対効果)を高めるには、データ中心の経営を前提に業務プロセスを再設計することが欠かせない」と語る。

写真 人物 山本豪 氏

TIS デジタルイノベーション事業本部 デジタルイノベーション事業部 DIコンサルティング&プログラム企画部 兼 エンタープライズサービス事業部 エキスパート 山本豪 氏

成果を出すためには、企業都合ではなく顧客起点への発想転換が欠かせない。これまでのように「売りたい商品」や「達成すべき売上目標」から施策を設計するのではなく、顧客一人ひとりがどんな状況でサービスに触れ、何を期待しているのかを出発点に据えることが重要。これらの発想は、アパレルやエンタメのように多品種・多接点でニーズが細分化しやすい業界だけでなく、金融や不動産、飲食といった分野でも求められる。

イメージ「MARKETING CANVAS」はデジタルマーケティング領域のあらゆるソリューションを束ねる統一ブランド

「MARKETING CANVAS」はデジタルマーケティング領域のあらゆるソリューションを束ねる統一ブランド

その実現を阻むのが、部門ごとの分断だ。IT部門とマーケティング部門などの各部門のサイロ化によって、データが分断されていれば、分析・活用の効果は半減してしまう。まずは、「データ中心の経営」を切り口に、データが組織の枠を超えて活用できるよう「壁」を取り崩していくことが大事だ。

また、求められるのは、過去のデータを振り返るだけの検証型ではなく、アルゴリズムを用いて将来の行動を予測し、個客ごとのアプローチを実現する、予測型マーケティングへの移行である。さらに山本氏は「パーソナライズ(顧客ごとに最適化した情報やサービス提供)を全顧客に対して実現できる基盤が不可欠」と指摘する。

購買履歴や会員情報など分散したデータや、これまで活用しきれなかった生産や在庫、顧客行動の記録データなどを統合・分析し、自動的に個々の顧客に最適化した体験を提供可能にする仕組みこそが、次世代のマーケティングを支える前提条件になるとの考えだ。

机上の空論にとどめない鍵は「現場の実感」

仮に、目指すべきデータの利活用方法などが分かっていたとしても、いきなり大規模にシステムを導入して成果を出すのは難しい。なぜならば、解決すべき課題は、システム面以上に、組織・人材・業務などと多岐に渡るからである。そこでTISでは、「PoC(Proof of Concept=概念実証)」からの取り組みを推奨している。

TISでは、このPoCを単なる技術確認にとどめるのではなく、組織・人材・業務など、データ利活用が成果を生むために何を改革すべきかの課題を可視化し、関係者を巻き込むプロセスと位置づける。渡辺氏は「PoCは通過点であり入口」と語り、将来の変革へつなげる起点とする。

また、PoCを通じて、スモールながらも実績・成果を可視化できるため、現場運用者や、壁の向こう側にいる他組織、あるいは経営層も含めて、巻き込んでいくためのツールにできることも大きい。結果、数字よりも「これなら使える」「これなら運用できる」と現場が実感できることが重要で、その感覚は、組織全体がこれを推進すべきという納得感につなげていくことができる。

欲しい人に、欲しいデータを、欲しいときに届ける

PoCで得られた気づきを実装へとつなぐには、膨張するデータを扱う基盤が不可欠だ。「欲しい人に、欲しいデータを、欲しいときに届ける仕組みが重要」と話すのは、デジタルイノベーション事業部 DIコンサルティング&プログラム企画部エキスパートの秋野隆氏。購買履歴や会員情報、来店データなどが複雑に絡み、既存の仕組みでは限界に達している。

写真 人物 秋野隆 氏

TIS デジタルイノベーション事業本部 デジタルイノベーション事業部 DIコンサルティング&プログラム企画部 エキスパート 秋野隆 氏

そこでTISが推奨する基盤のひとつがDatabricks(データブリックス)である。Databricksはオープンソース「Apache Spark」を起源とするクラウド型データ分析基盤で、膨大なデータを高速に統合・処理できる。秋野氏は「高機能でありながらコストを抑えやすく、AIやLLM(大規模言語モデル)への対応スピードも速い」と評価する。短期的には小規模に導入しやすく、長期的には拡張性も確保できるため、変化の速いマーケティング領域に適している。

マーケティング実務ではセグメントを抽出し、施策を即検証することでPDCAを短縮する。さらに将来的には、Databricks上で生成AIを活用し、人間では思いつかない仮説を提示できる可能性もある。秋野氏は「生成AIが示す仮説も、実際の業務データと結びつけて検証してこそ、現場に役立つ知見になる」と強調する。

自走力と共創力、新たなパートナー像への進化

データ基盤を整えた先に問われるのは、その成果をどう経営判断につなげるかである。渡辺氏は「企業が進む方向性を描く作業は、システム導入以上に難しい」と指摘する。だからこそTISは単なるSIerではなく、「マーケティングのあるべき姿を提示する存在」として、意思形成の裏側を支える立場を目指している。

秋野氏も「導入で終わりではなく、検証と改善を伴走することが前提」と語る。自社だけで業務を回せる自走力と、パートナーと未来を描く共創力。この両輪がそろって初めて、市場の変化を乗り越えられるという。

最終的にTISが目指すのは、共創を常態化し「未来を描くパートナー」として選ばれることだ。単なる導入支援ではなく、長期的な成長戦略をともに切り拓く存在でありたいとしている。

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お問い合わせ

TIS株式会社 デジタルイノベーションマーケティング部

URL: https://www.tis.jp/branding/MC/
Mail:canvas@ml.tis.co.jp


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