1970年万博でソフトクリームが流行
NISSEIといえば、1951年に日本企業として初めてソフトクリームを紹介したパイオニアとして知られる、ソフトクリームの総合メーカー。
2025年の大阪・関西万博では、大阪市が運営する「大阪ヘルスケアパビリオン」の「ミライの食と文化」内に「NISSEI Mouthful Creations」を出店して話題を集めている。大阪ヘルスケアパビリオンは、テーマを「REBORN―『人』は生まれ変われる・新たな一歩を踏み出す」とし、ヘルスケアや都市生活の未来像を提示する場。「NISSEI Mouthful Creations」では、未来に繋がる「フードバリアフリー」を提案。国や宗教、アレルギーなど、さまざまな理由で食に制限のある人々が、そのバリアを感じることなく食を楽しめるようになるための食づくりを目的としている。
実はNISSEIは、1970年の大阪万博でも人気を博していた。経営企画部広報担当の渡邉桜さんはこう振り返る。
「1970年の大阪万博は、当社にとって成長・拡大に繋がるエポックメイキングなイベントとなりました。1951年にソフトクリーム事業を開始した時は、原料もフリーザー(製造機)も輸入でしたが、その後20年で、ソフトクリームミックス、コーン、フリーザーなど全てを国産化し、衛生面でも改善を進めました。そして万全を期したところで万博に出店。『太陽の塔』の真下に直営店を出したほか、万博会場内に200台のフリーザーが設置されたことが功を奏して、会場内ではソフトクリームの食べ歩きが大流行し、日本の皆さんにソフトクリームを広める機会となりました」。
そうした歴史があるからこそ、今回の万博参画にかける思いもひとしおだ。「昨年、当社では本格的にブランディングを開始し、『事業を通して“笑顔あふれる幸せづくり”に貢献していく』という理念を定義しました。55年ぶりに大阪で行われている今回の万博では、その考えに基づき、フードバリアフリーというテーマで、乳・卵フリーのソフトクリームを提案し、ご好評をいただいています」(渡邉さん)。
「大阪ヘルスケアパビリオン」にて出店中のブース。ソフトクリームを思わせるようなデザインになっている。ブース奥にはフリーザー(製造機)を設置しており、ボタンを押せば自動でソフトクリームを製造してくれる。
1970年の大阪万博の際に出店したブース。同社は国産フリーザーの開発などを経て少しずつソフトクリームの認知度を伸ばしていたが、70年の出店を機に大流行。太陽の塔の近くなどに設置した直営店は連日賑わった。
ホログラム演出も加えた自動フリーザー
今回発売された乳・卵フリーというソフトクリームは、バニラ、ストロベリー、抹茶、アールグレイ、エスプレッソの5種類。そのうち3種類は、米粉のコーンを自分で置くだけで完成する「自動盛り付けマシン」でも提供している。
「将来、少子高齢化で省人化される未来も想像し、コーンを置いてボタンを押せば盛り付けまでが箱の中で完結するシンプルな設計にしました。お子さまやご年配の方、言語が違う方など、あらゆる方々に簡単にご利用いただけます。さらに、わくわく感や未来感は必要不可欠と考え、当社のキャラクターであるニックン&セイチャンの3Dホログラムが、盛り付けの様子を演出するプログラムを採用しました。世界各地から集まってきた方々や、子どもたちにとってソフトクリームにまつわる良い思い出を残したいと考えてのことです」。
ニックン&セイチャンは、約70年にわたりソフトクリームのそばにいる同社のキャラクター。マシンのコンテンツは2023年7月頃から検討を始め、キャラクターの3Dホログラムを採用することになった。ニックン&セイチャンの3D化は今回が初めて。動きをつけてもかわいらしさを維持することなどを検討し、1年がかりでホログラムコンテンツを完成させたという。
フリーザーのホログラム演出。フレーバーを選択すると同社キャラクターのニックン&セイチャンが登場し、わくわくする演出でソフトクリームができ上がる。
時代に合ったフード事業を展開
食を扱う事業である以上、アレルギー対応をはじめとしたフードバリアフリーへの挑戦は避けて通れないもの。
「万博には世界中からお客さまがいらっしゃるので、宗教や思想を超えて、皆で同じものを食べて笑顔になれることを目指しました。一方、検討を進める中で、アレルギーがあると本人だけでなく、家族や友人も一緒にソフトクリームを楽しめないことに気付きました。国内唯一の総合ソフトクリームメーカーとして、家族や友人とともに味わう喜びを感じていただく、その先の笑顔を創造したいという思いから乳・卵フリーのソフトクリームの開発に取り組みました」。
ブースでの反応は想定以上。アレルギーのある人からは「生まれて初めてソフトクリームを食べた」「諦めていた夢が実現して、こんなにおいしかったのかと泣きそうになった」といった声も。さらにアレルギーを持たない人からは「乳・卵フリーと聞かなければわからないくらいおいしくて驚いた」といった反響もあった。
「乳・卵フリーのソフトクリームの一般販売は未定ですが、これからも時代の需要に合った商品開発に取り組んでいきます。社会情勢が刻々と変わる時代ですが、企業価値そのものの向上も目指し、ソフトクリームを巻いて手渡す販売店の店員さんから、それを受け取るお子さまへ、といったように笑顔が連鎖するような世界づくりに、ささやかでも尽力していきたい。既存のソフトクリーム事業に磨きをかけつつ、新たな事業にも挑戦し、ブランドを育てていきたいと考えています」(渡邉さん)。

お問い合わせ

日世株式会社







