テラスニチレイの内観
55年ぶりの万博参加
冷凍食品をはじめとした加工食品の開発から製造・販売を行うニチレイフーズ。2025年の大阪・関西万博では、“オール冷凍食品レストラン”と銘打った「テラスニチレイ」を出店している。また、小山薫堂さんがプロデューサーを務め、「食を通して、いのちを考える」をテーマとしたシグネチャーパビリオン「EARTH MART」でも、シルバーパートナーとして名を連ねた。今回の万博に参画した理由について、同社のマーケティンググループマネジャー兼テラスニチレイ店長を務める原山高輝さんは、「一言で言うと、未来にレガシーを残していきたいという思いがありました」と語る。
ニチレイフーズ（当時の日本冷蔵）は、1970年の大阪万博でもレストラン「テラス日冷」を出店。ハンバーグやビーフシチューといった冷凍食品を均質に大量調理して迅速に提供することで、冷凍食品の活用手法を確立した。日本における外食オペレーションの先駆けとなり、冷凍食品の発展にも寄与している。
55年ぶりのレストラン出店について、「前回の大阪万博のように、冷凍食品の発展に寄与したと後世で振り返ってもらえたらいいなと。そのため、テラスニチレイでは冷凍食品の未来を見せることがテーマです」と原山さん。レストランは「EARTH TABLE～未来食堂～」という、食の未来を体験できるレストラン棟に設置されている。
1970年の大阪万博に出店した「テラス日冷」。当時も冷凍食品を提供していた
最新技術をレストランとパビリオンで
今回の出店には2つの狙いがある。「私たちは家庭用だけでなく、外食やお惣菜などに向けた業務用の冷凍食品も扱っています。そのおいしさも周知していきたいと考えました。次に、省人化です。最新の炒め調理ロボット『I-Robo2』を活用することで、人手不足という社会課題の解決にも対応しています」（原山さん）。
冷凍炒飯のおいしさの再現性と、人手のかからない自動炒め機による調理の均質性とを掛け合わせることで、安定したおいしさと人手不足への対応を両立した。さらに“オール冷凍食品”で厨房からの食品ロスを極限まで抑える体制も実現している。一方、EARTH MARTでは、展示コンテンツのひとつ「進化する冷凍食」で技術協力。原山さんは、「小山薫堂プロデューサーの『空想のスーパーマーケットを通して“食”の未来を見せる』という考えに共感し、展示協力に至りました」と説明する。
展示では、山形大学・古川英光教授の技術協力により開発された（※1）、さまざまな食材を凍結粉砕してつくられた長期保存ができるパウダーが紹介されている。さらに、そのパウダーをベースにニチレイフーズが技術協力しお米の形に再成形した“再生米”など、新しい価値を持つ未来の食品の可能性も提示。
※1 古川教授は、内閣府ムーンショット型農林水産研究開発事業（管理法人：生研支援センター）にて「低温凍結粉砕含水ゲル粉末による食品の革新的長期保存技術の開発」を進めている。
「当社の主力商品のひとつである炒飯もまだ家庭内では手づくりが圧倒的に多いので、冷凍食品がお役立ちできる幅を広げていけたら。たとえば、今回展示している再生米のベースになったのは、植物性のたんぱく質をベースに米粉などと合わせた“たんぱく米”です。これは当社の独自技術で開発したもので、未来の食のひとつとしても期待できます。また、凍結粉砕によるパウダー化を利用すれば、食品の体積を減らせて輸出もしやすくなるため、冷凍食品を日本だけではなく世界中で活用することもできます」（原山さん）。さらに、テラスニチレイで実現した“冷凍食品×自動調理”という手法を広げていくことも目指している。
テラスニチレイでは、「I-Robo2」で仕上げた「スペシャル炒飯」や「凍ったまま食べられる今川焼」「アセロラMixスムージー」などの冷凍食品を提供。購入の待ち時間も同社と冷凍食品開発のあゆみをまとめた年表や販売商品の詳細を観覧できる
フローズンポジティブな未来へ
「大阪・関西万博での出店の反響は大きい」と原山さん。テラスニチレイへの来場者は、実際に提供メニューを味わうとそのクオリティの高さに驚くことが多いという。「昨今では家庭用冷凍食品のおいしさを認めていただき、いわば生活必需品として浸透してきていますが、今回業務用冷凍食品を提供したことで、冷凍食品への期待がさらに高まった印象があります」。
EARTHMARTの「進化する冷凍食」のコーナーについても、「知的好奇心をくすぐられ、冷凍食品にポジティブなイメージを持つ来場者が多いようです」と話す。テラスニチレイで販売している、たんぱく米を使用した「エブリオンミール炒飯」を目当てに、EARTHMARTとテラスニチレイをはしごする来場者も少なくない。今後同社では、現在、冷凍食品が活用されていない領域にも進出できるよう、商品開発を加速していく予定。「冷凍のポテンシャルを引き出し、冷凍食品の価値を上げたい。今回の万博を機に『冷凍はいいことだ』というフローズンポジティブな世界観が実現できれば嬉しいですね」（原山さん）。
EARTH MARTで協賛する「進化する冷凍食」のコーナー。さまざまな食材を凍結粉砕することでつくられた“再生米”の展示や粉砕されたパウダーの香り体験、同社の冷凍食品のパッケージデザインフローと同様にデザインした“未来の冷凍食品”の展示など、コンテンツは多岐にわたる
（左上から）大阪・関西万博プロジェクトに携わったニチレイフーズの大竹泰さん、安藤啓成さん、田口祐二さん、篠塚啓子さん、原山高輝さん、野崎真一郎さん
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株式会社ニチレイフーズ
